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chapter14 新たな仲間達
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しおりを挟むアンディ・ビームスの製粉工場はすべて
自給自足の形で運営されていた
工場は巨大な天井の低い長いブリキ小屋で
その大きさは甲子園ほどあり
ビームスが小麦製粉に人生を費やしてきた
ほどある
ビームスは明らかに製粉業で成功していた
そこで竜馬は力持ち自慢の猛者達にまじって
小麦を製粉し袋詰めをして閉じ
それをリフトに乗せてトラックに積む作業に
精を出していた
働くことは竜馬にとって
勉強をすることと同じだった
友達もいない竜馬はここが好きだった
キツイ肉体労働は厳しい訓練になるし
時給30ドルはとても魅力的だった
そして何より・・・・
ここにはジャスティンのことを知っている人が
多かったのが居心地がよかった
「お~い!竜馬!
社長がお呼びだぞ! 」
「は~い!! 」
ガタガタゴトゴトとうるさい工場の中
竜馬が上半身裸で玉汗を流しながら
30キロはあるパンパンに詰まった粉袋を
粉袋の扱いならお手のものとばかりに
リフトのパレットに放り投げ
入口に向かって歩いて行った
大きなくしゃみを二回して
入口に備え付けてあるティッシュで鼻をかむ
ここへきてから鼻炎が治らない
鼻をムズムズする粉っぽい空気
もうもうと立ち込めるモヤはきっと小麦粉のせいだ
事務所の手前の階段に傘のように開く
プラスチックの洗濯物干しから
自分の白いTシャツをとり
引き締まった体にそれを着た
洗いざらしの木綿のシャツの匂いをかぐ
この間サイズアップして買ったのに
もう二の腕がキツイ・・・・
胸もTシャツが張り付いている
竜馬はこれからは伸縮性がある
生地しか買えないなと思っていた
入口で水を撒いている専務としばらく立ち話をする
すると工場で飼っている
ヨボヨボの犬が竜馬と仲良くしたくて
尻尾を振って寄って来た
「君はマックスより愛想がいいな 」
犬の頭を撫でてやりながら
今度何か貢物を持ってくるよと約束をして別れた
事務所に続く階段をのぼる竜馬を
犬はじっと目で追った
「よお!竜馬!入れよ! 」
アンディ・ビームスの顔は長年の厳しい労働に
耐えてきたことを物語り
皺と孤独感に人柄の良さと寛大さをにじませていた
目は穏やかに澄み
近づくにつれ
背が高くて長年小麦粉をかち上げてきた
いかつい体が彼の底力を漂わせていた
ビームスの目の前には5個の段ボールいっぱいに
積み立てのオレンジが溢れんばかりに
入っていた
「オレンジ! 」
「今年も隣のオレンジ農園からもらったんだ
好きなだけ持って帰れ!」
竜馬は嬉々として紙袋いっぱいに
オレンジを入れだした
ビームスは目を細めて年輪のあらわれた微笑を浮かべた
「しっかしお前
逞しくなったなぁ~
ここへやって来た当時はもやしのように
ヒョロヒョロだったのに」
「そう? 」
竜馬は二の腕に力こぶを作って見せた
「お前今どこに住んでるんだ?」
「大学の近くの貸し倉庫だよ
広いし家賃がすごく安いんだ 」
「まぁ・・住めば都というものな
若いうちは苦労をしたほうがいいんだ
俺は苦学生の見方だ 」
ビームスはたばこのヤニが染みついた
歯を見せながら大笑いをした
そしてビームスがシカゴに来たばかりの頃の
苦労話を竜馬は楽しく聞いた
「ジャスティンは・・・
その後会ったか?」
少し気づかわし気にビームスが聞いてきた
竜馬ははにかんで首を振った
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