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chapter19 Baby Don't Cry
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しおりを挟むガーデンは色とりどりの薔薇が溢れあちこちに
ギリシャの銅像が建てられており
まさに天国の様だった
この薔薇園は胴元のチャックが自らが手入れしており
今のチャックの姿は大きな麦わら帽子を被って
その下のタキシードとは不釣り合いだったが
チャックはこの庭の薔薇を愛していて
よくオープン前にはここで
ガーデンの手入れをしていた
様々な種類の薔薇が水を浴び夕日を受けて
キラキラ輝いて揺れている
竜馬はチャックが好きだった
彼は立派なビジネスマンでルビーに竜馬が
部屋に連れ込まれて危うく襲われそうに
なったことを謝ってくれたし
今後二度とこういうことが起きないように
私が君を守ると言ってくれたのだ
チャックがホースの水を止めて
竜馬の方にやってきた
麦わら帽子のつばで顔が陰になり
その口元しか見えなかったけど
チャックの語り口調は穏やかだった
「君にはどうやら本当の事を話しておかないと
いけないようだね・・・・
実は教授と言う輩は公務員で給料が少ないんだよ・・・
それはわかるかね?」
竜馬はコクンと頷いた
「実際にこのカジノでは毎晩大金が動いている
そんな金を動かすのは
公務員ではなく事業家の皆さんなんだ
私たちはそんな裕福層の顧客を相手にしている 」
「わかった!
先生達は焼きもちを焼いているんだね!」
竜馬は優秀な生徒のようにチャックに応えた
「その通り!
実際に教授達がこのカジノで遊んでいるのを
見たことだないだろう?
彼らの給料では到底ここでは遊べない
自分の判断基準でしかものを考えられないんだよ
そしてその判断基準から外れるものは
みんな悪としか見なさないんだ 」
チャックが首元に掛けている
タオルで顔を拭う
「私達が日々相手にしているお客様は
教授達より遥かにセレブリティな裕福層なんだよ
一般庶民はそんな人達のことが分からないんだ
ここはキチンとした合法な遊技場だよ
その証拠に君も国が定めた10時までしか
労働をしていないはずだ」
「そうだよね!
それをまったくマフィアだなんて
どうかしているよ 」
アハハハハハと竜馬は笑った
「マフィアなんか今時いるわけないよ!」
チャックも一緒にワハハハハと笑った
「・・・・ちなみに・・・・
その教授の名前を教えてくれるかい?」
一瞬チャックの声が冷たく聞こえた気がしたが
竜馬はまったく気にしなかった
「数学のジャック・クランストン教授だよ!
一年と二年を教えている
生活指導の担当だよ 」
「そうかい・・・・・」
「さぁ・・・午前中に
イタリアから本場のティラミスが届いたはずだ
沢山注文したから
従業員の分もあるよ
働く前に厨房に行って食べさせてもらいなさい」
「わ~い!ティラミス!」
竜馬がピョンッとベンチから飛び降り
出口からガーデンにいるチャックに手を振った
竜馬はこの落ち着いた物腰の胴元が益々好きになった
チャックも去って行く竜馬に手を振ったが
最後まで帽子のつばの陰に隠れて
彼の表情は読めなかった
それから一週間後
ジャック・クランストン教授は
「体調不良のため長期療養」を理由に
学校へは来なくなった
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