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chapter19 Baby Don't Cry

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【シカゴ・ナルシソ・カジノ遊技場】 



 
シカゴで指折りのケバケバしく
飾り立てたナルシソホテルは

ヘリコプターの上空から見たらまさにおとぎの国だった

オレンジ色のライトに照らし出された
移植したシェロの木がぐるっと
ホテル内の敷地を囲み


二つのひょうたん型の大きなプールは
夏の繁盛期には
イモ洗い式に人で溢れかえる



このホテルの一番豪華なスイートは半年先まで
予約がいっぱいだったし
連日連夜のカジノも大盛況だった






そのホテル地下一階に
このカジノ主催者の胴元のオフィスがある




このホテルで行われるすべての賭け事の主催者

胴元と呼ばれる
【チャック・コンチネンタル】は
デスクのワインを一口飲み書類仕事に没頭していた




名前からしてアメリカ人ではない彼は
すでに中堅を超えた年だったが

すっきりと痩せていてオールバックにした
シルバーブロンドの髪が
真っ黒の胴元のスーツによく映えていた




決して人情味が厚い顔つきはしていないが
その気になれば愛想が良く
人懐こい性格を演じれるので
この胴元は観光客に人気だった




胴元はワインをもう一口飲み
机に山と積まれた掛け金の台帳を閉じて
次に書類の整理にうつった




まずは10年に一度のホテル外壁の
塗装工事の見積もり書を片づけた後
次に手に取ったのは香水のプンプンした
金の縁の手紙だった 


ペーパーナイフを入れゆっくりと中身を空けた
その手紙の送り主は内容を読まなくても
香りで誰だかわかる



女優・レディ・ルビー・ランドルからだった

先日送ったここ【ナルシソ・カジノ遊技場】での
ディナー・ショーの契約書だった



契約書の他に一枚便せんが同封されていた
そこにはルビーからの直筆で
ぜひにやらせてもらうとキスマークがついていた




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