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chapter16 LAST STAGE 竜馬
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しおりを挟む「竜馬・・・・
お父さんとお母さんに事故が起きた」
生きている限り
この言葉は決して忘れないだろうと竜馬は思った
父の弟の茂雄おじさんが竜馬のクラブ活動中の
学校にいきなり乗り込んで来たのは
夏の暑い日の事だった
竜馬18歳・・・・・・
高校三年の夏休み・・・・
アメリカはイリノイ州を代表する
イリノイ大学で唯一の経済学専攻の
ホームステイ枠に竜馬が合格した時
父はとても喜んでくれた
そして母も海外で視野を広げるのはとても
良い事で今後の父の仕事にも
役に立つだろうと言った
竜馬の父の経営する「株式会社松下貴金属」の
職種の「地金屋」という貴金属売買の仕事は
主に宝飾品や資産としての
貴金属商品を取り扱っており
世界的に見ても需要と
供給のバランスが激しい業界で
「金」を安く買って高く売ることに
竜馬の父は生まれながらの目利き能力に
天賦の才を持っており
「松下貴金属」は父一代で
日本のその業界に名を馳せるほどになっていた
しかし貴金属業界は相場を読む
ギャンブル的側面があるため
その読みを外すと大きな損失を生む
竜馬の父の経営する「松下貴金属」は
竜馬が大学入学を控えた夏には
その赤字をもう埋めることは出来ないまでの
負債を抱えていた
そんな松下家が苦しい頃の
父と母の突然の交通事故の知らせだった
「お前の父さんが母さんを横に乗せて
運転して家にもどる途中で
高速道路のカーブを曲がり切れずに
横の車線のトラックに突っ込んだんだ――
はっきりとしたことはわからないが
お前の父さんは相当スピードを出してたらしい・・・
酷い怪我だ・・・
それで二人とも今手術を受けている 」
「手術」と聞いて竜馬の顔から血の気が引いた
「でも・・・・助かるんでしょう?」
竜馬は助手席から茂雄おじさんを見た
病院まで二人の間に沈黙が続いた
やがて茂雄おじさんが口を開いた
「・・・・深刻な状況なんだ・・・
何かしなければと思うが・・・
今はお前にも私にも出来ることは
何もないと言われて・・・」
その瞬間竜馬の体に衝撃が走った
おじさんが泣いていた
病院までの道のりの40分・・・・
駐車場について正面玄関までなんとか歩いた・・・
そのすべての記憶が曖昧だった
病院のスタッフが―
二分後にはそのスタッフの顔も分からなくなっていた
外科手術の関係者だけが入れる
待合室へと案内された
そこに駆け込むと
知らないおじさんがいた
そのおじさんが目に涙を溜めて竜馬に言った
「竜馬君だね・・・・・
僕は君のお父さんの友人で神崎一郎だ・・・・」
そしてこう呟いた
「とても残念だ・・・・・ 」
竜馬は一歩後ずさった
「嘘だ!」
その後ろから茂雄おじさんが
目にハンカチを当てていた
「二人とも・・・・
間に合わなかった・・・・ 」
竜馬が振り向くと母の妹の久美子おばさん(文也の母)が部屋の隅に立っていた
涙が頬を伝っている
「誰か嘘だと言って・・・・ 」
ノックの音がして
青い手術着姿の医師が入って来た
「お邪魔をして申し訳ございません・・・
お二人のお顔をご覧になりたい方は・・・
どうぞ・・・ 」
おばさんは涙を拭って竜馬の背中を支えた
「さぁ・・・竜ちゃん・・・・
お父さんとお母さんにお別れを・・・ 」
お別れって何だ?
茂雄おじさんが言った
「お前達だけで行ってくれ・・・
私は・・・とても・・・・ 」
声が次第に小さくなり
おじさんは片手で顔を撫でて大きく息を吸いこんだ
何が起こってるんだ?
竜馬は半ば強引に
二人が寝ている霊安室に連れて行かれた
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