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chapter15 スーパーシャイボーイPart2
33
しおりを挟むジェニは豊をエレベーターまで送ることにした
竜馬が目を覚ましたらすぐに
教えてくれと言って
数時間ぶりに膝を伸ばした
「明日また明美を連れて来るよ
それと・・・
これは竜馬が目を覚ましてからなんだが
耳は・・・片方は大丈夫そうなんだが
もう片方は・・・・
いずれも専門医に聴覚障害が
恒久的なものかどうか見てもらう必要があって――」
「わかってる」
ジェニはエレベーターのボタンを押しながら
豊にそれ以上言うなとじっと見つめた
「・・・竜馬さんとは・・・・
知り合って間もないけど・・
私は運命の相手だと思っている・・・」
ガバッと豊がジェニに詰め寄って
顔を歪めた
「お前!本当に覚えていないのか?」
ピシャリと兄が憤りを感じて妹に言った
「何よ!」
ジェニもムッとして豊を見た
「なんてことだ!妹がこれほどアホだとは!
竜馬に申し訳なくなる!
竜馬からお前が自然と思い出すまで口止めされていたが
お前はあれほど懐いて結婚するって
泣き喚いていたのに!
いなくなって熱を出すほど悲しんでいたのに!
なんでそんなにきれいさっぱり忘れていられるんだ!
俺はすぐわかったぞ! 」
ハッ!と言いながら豊が両手を天にあげた
「だから何のことよ!!」
ジェニが意味がわからないことで豊に
アホ呼ばわりされるのには
我慢ならないと言い返した
「竜馬は(大きいお兄ちゃん)じゃないか!!
アホッ!! とっとと思い出せ!」
「大きいお兄ちゃんって誰のことよっっ!!!」
「忘れたとは言わさないぞ!
母さんが亡くなったあのひと夏!
俺達は竜馬と一緒に暮らしたじゃないか!」
あっ!!!
ジェニはハッとした
あっ!あっ!あっ!
蘇る記憶
ジェニの心臓がひどく早鐘を打ち
肺の中の空気が全部押し出されてしまう
感覚に襲われた
あの幼い頃の夏のひととき
一緒に暮らした男性にジェニは恋焦がれていた
いつまでも彼に家にいてほしかった
インフルエンザでジェニが高熱に臥せっている時に
いなくなってしまった彼
そのショックでジェニは再び寝込んでしまった
あの夏・・・・
ジェニは愛しい人を二人いっぺんに失った
一人は癌で息をひきとった母親
そしてもう一人は・・・・・
「なんてこと・・・・・」
ジェニはまったく抑揚のない声で言った
耳の奥でハチがブンブンと飛び交うような音がする
豊はジェニをじっと見つめている
目に涙をため溢れる感情を抑えるように
顎を震わせている
ジェニは自分に言い聞かせるように呟いた
「竜馬さんが・・・・(大きいお兄ちゃん)・・・」
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