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chapter12 愛が止まらない
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しおりを挟む「佐々木さんが5時には正面玄関を閉めるって!」
「みんなも電車の遅延速報とか見て
早めに仕事を切り上げ帰ってね 」
ジェニはその日の夕方のスケジュールで
得意先の来月からスタートする
ふるさと納税の和菓子動画広告の
オンラインシステムについて
ミーティングをする予定が入っていた
初回の顔合わせなので
まずは情報収集が主な目的でジェニ自身が
その会社に赴むき
今回は商品一つずつの説明を
漠然と聞くものになることだろう
なので真紀に作ってもらった叩きの
商品ブログラムソース・コードをひっさげて
クライアントの要望を一つも漏らさず覚え込む
つもりでミーティングに挑む決意をしていた
その会社が入っているジェニが目指すビルは
淀川近くの古い工場地帯にあるため
大雨の中鈴木を走らせて淀川大橋を渡った
ザァザァ降りしきる雨は
ワイパーをマックスにしても視界が悪く
まだ5時だというのにあたりは真っ暗だった
古い建物が多い事で知られる東淀川の工場地域では
昭和時代に建ったような古い長屋や
空き家が立ち並び
ジェニのクライアントの和菓子屋が入っている
河川敷付近にある煉瓦造りのテナントビルのあたりには
大きな水たまりが沢山出来ていて
道路によっては「通行止め」が出ていた
一瞬ジェニは雨で水はけが悪い道路を見て
打ち合わせを後日にしてもらおうかと思ったが
それをしてしまうと
ドミノ倒しのような他の案件のスケジュールも
大幅に調整しないといけなくなるので
やはり本日強行突破することを決意した
深い水たまりを跳ね上げ鈴木を地下駐車場の
低層階に駐車した時は無事に得意先に
到着出来てホッとした
にもかかわらず車を降りた時には
あたり一面の水たまりで靴がかなり濡れた
パソコンを入れたバッグを胸にしっかり
抱きしめピョンピョン跳ねて
水たまりをよけながら
階段入り口に向かう
エレベータの前でくるりと振り向き
このビルの薄暗い地下駐車場を見渡してみる
この地下の低層階の駐車場には
今はジェニの鈴木君しか停まっていなく
地上階からここに雨がザァザァ
流れて来ているような音がする
水たまりはもう1センチほどまで地面を隠し
ジェニは一瞬このまま水が浸水してくると
帰る頃には鈴木を発進できなくなるのではないかと考えて
慌ててそのゾッとする考えをどこかに押しやった
やっぱり・・・・
地上階のどこかコインパーキングを
使えばよかったかな・・・
とにかく早めにミーティングを終わらせるしかない
とジェニは急いでレトロで
重厚なエレベーターに乗り込んだ
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