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chapter10 寂しいジュリエット
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しおりを挟む遠くの方で通天閣の頂上が見える
大きな淀川の川沿いを走りながら
ジェニはよりいっそう彼に身を寄せた
真夏とはいえ夜風がノースリーブの腕を通り抜けて行く
でも風のほとんどは彼が受けている
認めるのは悔しいけど・・・・
バイクに乗るのは最高だ
アドレナリンが騒いでいる
数分後美しい川に大きな三日月が映るのを眺めながら
彼がスピードを落とすと
ジェニはサンバイザーを上げた
「ねぇ!遠回りして!!」
竜馬の耳元で息を弾ませながら叫んだ
バイクのエンジン音ではっきりとわからなかったが
彼が「ハハッ」と笑ったのが
身体の振動で伝わった
次第にジェニはリラックスして
彼の腰に回した腕の力を緩めた
右手が無意識に彼の腹部を撫でてしまい
それに反応した彼の腹筋が硬く引き締まるのを
薄いTシャツ越しに手に感じた
ジェニが彼とベッドを共にすることを
考え始めたのはその瞬間からだった
ジェニは心の中で誰に言う訳でもない
言い訳を始めた
そもそも彼はジェニがこれまで目にした男性の中で
誰よりも逞しく・・・ハンサムで
セクシーだ
そう考えるとジェニの両内太ももで今
彼のお尻を挟んでいることにも意識が行く
ジェニは必死に淫らな妄想を止めようとした
ところが交差点で停止すると
ジェニは竜馬がエンジンをかける時に手を
ハンドルだかクラッチだかなんだか
わからないそれをどんな風に握るかに
目が行ってしまった
まるで愛撫するかのように握っている
彼の力強い手はジェニを持ち上げたり
降ろしたり、ひっくり返したり
壁に押さえつけたりできるだろう
実際に彼に壁に押し付けられて
燃えるようなキスをされた
それにシャワー室での彼の上半身裸・・・
バーベルをかちあげる時の
あの感じているような唸り声・・・・
ビショビショの前髪・・・・
汗だくの彼・・・・
この時点でジェニはクレーンでも使って
引き上げてもらわなければいけないほど
妄想の沼にズブズブにはまり込んで
抜けなくなっていた
家の近所らへんを走っている頃には
ジェニの妄想は佳境に入っていた
真っ白いマトリックスのような世界で
ジェニと竜馬二人だけ
真っ白なシーツに横たわる
一糸まとわぬ竜馬の逞しい体・・・
彼はシャワーから出たばかりで
髪はあのジェニがゾクゾクするような
湿ったボサボサ頭で
綺麗な目がチラチラ覗いている
彼は意味ありげな含み笑いをし
ジェニもそれに官能的な微笑みで答える
その時の自分は処女じゃなく男を惑わす悪女で
ジェニはバスタオルを床に落とし
竜馬の元に向かう・・・・
それ以上の言葉はなく
二人はシーツの海の中で戯れ――
キキ―――――ッ
バイクが停止しエンジンが切られ
思わずジェニはゴンっとヘルメットごと
後ろから彼に頭突きした
そこでハッと沼から出れた
我に返るのに少し時間がかかり
現実に戻って目をパチパチした
ジェニが動かないことに気が付いた竜馬が
自分のヘルメットを脱いで
ジェニのヘルメットもスポっと外した
「大丈夫か?」
心配そうにジェニの顔を覗き込んでいる
ジェニはやっと自分を取り戻した
「う・・・うん・・・・
大丈夫・・・ 」
何とか取り澄ました表情を装って言った
竜馬がジェニをしげしげと見つめる
「顔が赤いぞ?
酔ったのかな?気持ち悪いことないか?
君はシャンパンを飲んでいた 」
ジェニは肩をすくめた
「絶好調よ」
ジェニは赤い顔を竜馬から隠した
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