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chapter6 あいつは可愛い年下の男の子

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メビウスビルの住居者用
正面エレベーターに乗るためには
大理石の床のブロンズ像が置いてある
ロビーを通り抜けなければいけなかった



金モールの縁取りがついた
ナポレオンジャケットを着たドアマンに
文也が手を上げるとドアマンが
小さく彼にお辞儀した



その後ろを初めてこの住居区間に足を踏み入れた
藤子がキョロキョロしながらついて歩いた


彼女はハッとドアマンと目があった途端
コホンと小さく咳をして背筋を伸ばして

「億ションなど訪問し飽きているわ」

という顔を精いっぱい装った


スライディングドアを抜けて
二人はエレベーターに乗り込んだ



その中もまた豪華で精いっぱいの強がりは
どこへ行ったやら

藤子はキョロキョロ見渡さずには
いられなかった


壁は板張りで床は白と黒の全面大理石タイル
そしてブロンズのフレーム枠の全身
姿鏡が二人を映し出している




「ほ・・・・本当にここに住んでいるのね」



「うん そうだよ 」





エレベーターはスッと物凄いスピードで上昇し
瞬きする間もなく35階に到着した




「最上階のペントハウスは家族向けなんだけど
この階はもう少し小ぶりな
独身者向けのコンドミニアムなんだ 」



文也がそう説明しながら先に歩く
窓のない細い廊下が大きなHの形に延びていて
完全にプライベートが保たれている空間は
気味が悪い程静かだ




ふわりとした薄い色のカーペットが
床に敷かれているので靴音は全くしない



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