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chapter7言えなかったさようなら

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あの当時は新藤は彼女を愛していたので
彼女の勧めるままに名古屋の24時間
完全介護式の特別養老施設に
莫大な金を払い父の入居を決めた
 


しかし晴美は父の見舞い行く前日にかぎって
体調が悪くなったり
長旅は無理だと言ったりして
結局新藤一人が何時間もかけて
名古屋に見舞いに行った




せっかくの休日をまる一日運転して
父の見舞いに行くことに新藤自身も
疲れ果て彼自身も次第に
足が遠のくようになった




そして数か月後久しぶりに
父の見舞いに行くともう
父は新藤の顔を覚えておらず
父の記憶は忘却の彼方へ
消え去ってしまっていた






今もそんな事を想うと新藤の胸が重く
のしかかった
出来れば父と会いたくなかった





意外だったが桃子の巧みな運転のおかげで
ほどなく車は病院の駐車場に着いた




ドアを開けた途端刺すような
冷気が襲いかかる今日は特別に冷える
雪が降るかもしれない


BMWの車のエアコンがいかに性能が
よかったか改めてわかった


そしてなじみの病院はエアコンが
よく効いてて暖かだった





新藤はあらかじめ
電話で父の担当医師にメールで
電子カルテを送ってもらい経過を把握した



数日前から風邪を患い
少し微熱があったにも関わらず本人の
たっての希望で入浴したのが悪かった




そこから風邪がぶり返し
父は肺炎にかかってしまった
老人は抵抗力が弱く時には小さな子供より
ひ弱になってしまうまさにタイミングが悪かった












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