パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

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召喚される者、召喚した者

ポンコツですか?

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「お待ちしておりました! ロイド様」

 光沢を放つ銀甲冑に身を包んだ兵士に迎えられ、王宮の門をくぐり抜けた。
 それにしても、いつ来ても王宮内は爛々と輝きを放ち、老いぼれた眼には煩わしく感じる。
 
 現王はとにかく派手が好きな子供だ。歳は三十の半ばをすぎたらしいが、ロイドから言わせれば、若造である。
 ずらりと立ち並ぶ兵士を横目に、樫の杖を強く握りしめた。

 王からの緊急の招集。どうやら、他の街のギルドマスターや有力貴族なども招集を受けているらしい。ギルドマスターが招集されるということは、十中八九魔物に関する内容であろうが、今回は極秘での招集らしく、伝令にも詳細は記載されていなかった。

 王宮に直接呼ばれるということは、相当な内容であろう。しかし、ありていに言ってしまえば、検討もつかない。

「ロイド様、この先、陛下の御前となります」

 高さ二メートル強はあるのではないかと思われる大きな扉が、ギギィ……ガコンッという音を立てて開く。
 扉の先から伝わってくる空気が、妙にひりついていることを肌で感じる。
 
 広い直線上の間の両脇にずらりと並ぶ執事と兵士。大きなレッドカーペットが敷かれ、視線を自然に左右に少しだけ揺らすと、やはり目が痛いほどきらびやかな装飾の数々が、陛下の間を彩っていた。

 直線、二十メートルほど前方、数段の段差の上に置かれた玉座に腰掛けるは、現在の人間界の王として君臨するディディバルト十二世である。
 段差の前に片膝を付き、首を垂れている人間が十人ほどいる。いずれも、顔のしれた面々であった。各地に点在するギルドの長、そして国の有力貴族らである。

「おぉ、よくぞ来てくださった。龍殺しの御仁よ。そなたで最後だ」

 ディディバルト十二世は、両手を肩の位置まで広げながら立ち上がった。

 ロイドは軽く頭を下げ、前に出る。段差手前で片膝を付く。

「お久しぶりでございます、陛下。此度の招集を受け、参上致しました」

 心の中でため息をつく。腐っても元冒険者。こういった場にはいつまで経ってもなれない。

「うむ。ご苦労であったな。……さて、それではさっそくであるが、本題に移らせてもらおう」

 ディディバルト十二世は再び玉座に腰を下ろし、踏ん反り返った。
 舌打ちでもしたいところだが、できるはずもなく、心の中で似合わん髭を伸ばしよって、などと悪態づいておくに止める。

「それでは、ここからは私が説明を――」

 玉座から一段下がったところに立っていた宰相と思しき風格漂う者が、小さな丸眼鏡をくいっと持ち上げて語り出す。

「現状の魔物に関する問題は……もはや語らなくても良いでしょう。先日、各地で戦火を上げた魔軍侵略ですが、あのような事態が今後、さらに増えることを陛下は大層危惧しておられます。王宮の占い師によると、昨今の魔物の異常行動の原因は、魔王に関係しているようです。魔軍侵略では、大変多くの民の血が流れました。現在、我々には戦力が足りません。そこで、陛下は宣言したのです。異世界人を召喚しようと――!」

 明らかに横から伝わってくる面々の空気が鋭く変化した。おそらく、ロイド自身も無意識のうちに気を張り詰めているだろう。
 怒りとも、呆れともいえる思いが込み上げてくる。

 この若造は何を考えているのだろうか。思考が短絡的にもほどがある。
 確かにこの世界において、過去に異界より人間を召喚したという記録はごく少なくであるが、残されている。ロイドの知る限り、二度。

 これまで召喚された異世界人は合計で九人。一度目が四人。二度目が五人。その全員が、この世界における人間よりも優れた身体能力を持ち、独自の魔法なども使用できるらしい。とはいっても、最後に召喚された異世界人でさえ、百年以上前の話であるため、ロイドが耳にした言い伝えのすべてが真意であるとは限らない。

 しかし、実際に今、人間がこうして安全な領土を得て、繁栄を重ねられているのはひとえに、過去の異世界人が魔物との熾烈な争いによって勝ち取った栄華だといわれている。

「お、お待ちください!」

 数歩横で顔を上げて、片膝立ちのまま異を唱えた者がいた。有力貴族のラディア侯爵だ。
 王の前であろうと、薄くなった頭皮を隠す丸帽子をひたむきに取らないことで有名な貴族だ。挙句、王の意志に反論を述べるなど、もはやただの馬鹿としか言いようがない。

「過去に存在した異世界人の中には、我らを裏切り、魔族側についた者も存在しました。このような決断は早計ではないかと……」

 ラディアの言うことはもっともである。ロイドも全くの同意見ではあるが、そのような反論がこのわがままな若造に通るはずもなく――

「大丈夫である。此度、召喚する異世界人には、その場で勇者の称号を授けよう」

 もはや、悪態をつく気にもなれないほどに物事を軽く考えているディディバルト十二世の発言に、これまで沈黙を貫いていたがさすがにざわつき始めた。

 勇者の称号を授けるとか、そういう問題ではないのだ。そもそも、人が人を召喚するという行為自体が、倫理に反する。もっというならば、踏み込んではいけない禁忌だ。

 しかし、どこまでも浅はかで救いようのない馬鹿だろうと、この世界の人間のトップに君臨する者だ。そのようなものに盾つけるラディアを、ほんの少しだけ称賛する。

 そもそも、同意など求めていないのだ。私たちは異世界人を召喚するから、お前たちはそのことを把握しておけ、というだけのために呼ばれたのである。

「し、しかし――」

 ラディアは未だに異を唱えようと、彼なりに言葉を選んでいるようだ。しかし、宰相がそれを遮るように淡々と説明を続けた。

「既に儀式に必要な素材は、この場にそろっています。もちろん、召喚を行う印持ちの者も……」

 印持ち。勇者の印のことであろう。膨大な魔力を持ち、召喚魔法が使える冒険者などロイドは一人しか知らない。
 執事がディディバルト十二世に視線を向ける。ディディバルト十二世は、もちろんというように大きく頷いた。

「それでは、今から一時間後に儀式を執り行います」

 ラディアも諦めたようで、ディディバルト十二世に聞こえぬよう、小さくため息を吐いた。
 異世界人の召喚。圧倒的に戦力の足りないこの世界に降り立つ救世主となるか、それとも仇を成す存在となるか、ロイドには予想がつくはずもない。しかし、胸のざわめきがどうにも止まらないのであった。
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