パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

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召喚される者、召喚した者

違いますよね?

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 モミジは向かいのハルトに悟られないように、小さくため息をついた。

 いつからこんなに憶病になったのだろうか。小さい頃は今とは正反対で、毎日外を無邪気に駆け回るくらい元気の良い子だった気がする。それが、今では打ち解けるまでは敬語は当たり前、仲が深まったとしてもズバズバと物を言うことはできない。
 いつも誰かの後ろを歩くような日々。いつからか、人の視線が気になって前髪を伸ばし始めた。

「ふ、二人とも遅いね……」

「うぇ!? そ、そうだね……」

 びっくりした。ずっと沈黙が続いていたから、思わず変な声が出ちゃった……。絶対に変な奴って思われたよこれ……。

 ハルトに目を向けると、彼も妙にせわしなく視線を泳がせている。
 
 やっぱり、私なんかといたら気まずいよね……。

 わかっている。ハルトはそんなことを考えるような人ではないことくらい、モミジにはわかっている。しかし、どうしてもネガティブな方へ考える癖は治らない。
 
 ふと、窓からのぞく外の景色を見ると、人の波がとめどなく流れている。

 とある日の休日。何故かマナツがハルト、ユキオ、モミジの三人を中央広場に立地する喫茶店へと呼びだした。指定された時間に行くと、先にハルトが一人で到着していて、外で待つのもなんだからということで、中に入った。

 そして着席してから三十分。一向にマナツとユキオは姿を現さない。

 モミジは鈍感ではない。少なくとも自分ではそう思っている。
 うっすら、気が付いていた。

 絶対にわざとハルト君と二人っきりにさせたよね……。何してくれてるのマナツ、ユキオ君……。

 関係ではないと常々言っているはずなのだけど……。そういう関係って、よくわからないけども……。

 最近、ハルトを無意識に目で追っていることが増えた。日常での些細な仕草など、今までは気にしたこともなかったのに、最近ではむしろ優先して目を向けている自分がいる。

 別に恋してるってわけじゃないと思うんだけどなぁ……。いや、そもそも恋とか愛とかよく分からないし……。それに、ハルト君だって私なんかにモテたって、迷惑だよね。大丈夫だよ。恋してないよ。たぶん……。

 ふと、気になってしまった。彼はどのようなタイプの女性が好みなのだろう、と。

 めんどくさがり屋さんだけど、いつもどこか気張っているようなイメージだから――

「甘えたい派……かも」

「えっ? どうしたの、急に……」

「あ、今の声に出てた……?」

 時すでに遅し、というやつなのに思わず口を手で隠した。

「出てたよ。甘えたいだとかなんだとか。……何か考え事?」

「いや、えっと……実は、ハルト君の好みの女性ってどんな人だろう……って思って」

「はい? 俺の好み……?」

 あぁぁぁぁぁ! なんで誤魔化さなかったんだろう。なんか、腕組んで真剣に考えてくれてるし、いまさら撤回しにくい……。

 短い沈黙の後、ハルトは気まずそうに目をそらしながら答えた。

「……お、おとなしくて、俺のことちゃんと見てくれてる人……かな。うわっ、ナニコレすんごい恥ずかしいんだけど」

「おとなしくて、ハルト君をしっかり見ている人……か。……ユキオ君?」

「どうしてそうなるんだよ……。というか、ユキオは男だし」

「あ、そっか……」

 おとなしくてというのは、言い換えるとおしとやかということだろうか。そして、自身をしっかりと見てくれる人。
 想像してみると、確かにそんな人がいるのであれば、割と完璧な人だと思う。ハルト君が好きになりそうなもの納得だ。

 そういえば、ハルト君の元パーティーメンバーのえっと……アカメさんだったっけ? あの人は見るからにおしとやかで、何よりパーティーから外れたハルト君のことをすごく考えていたような。あれ? つまり、結論、やっぱり、そういうことですか……?

 支離滅裂な心の発言に、自分が如何に動揺しているかが伺えてしまい、思わずため息をついた。

「そ、それより! 俺にだけ言わせるのはフェアじゃないぞ。モミジの、その……好みのタイプは?」

「えっ……私? 私は……うーん」

 まさか聞き返されるなんて思ってもいなかった。
 好みの男性……。考えたことがない。色恋の目で男性を見てきた経験がないとは言わないけども、いざ好みって言われると、なんとも回答しにくい。

 スーッと吸い込まれるようにハルトに目が向いた。彼は頬を少しだけ赤く染め、ひたすらに窓の外を眺めている。

 少しやせ型で、いつも眠そうな目。出会ったころは短かった黒髪は、だいぶ伸びている。モミジから見て右頭頂部の髪が、いつもぴょこっとくせ毛のようになっているのがチャームポイントだと思う。
 少し、いやかなり憶病で、きっと彼が一番に逃げ出したいはずなのに、半分押し付けたリーダーをしっかり全うし、仲間のことを優先的に考えて行動する人。仲間の身に危険が迫ると、自分の身を投げ出して助けてしまうお人よし。

 あぁ……わかった。きっと、デッドリーパーの時だ。あの時、彼が身を挺して私を助けてくれたあの日。それから、気が付くと彼を目で追っている。

「……で、どうなんだよ?」

「えっ……?」

「だ、だから好みだってば。……好きなタイプ!」

「知りたい……?」

 ハルトは目をそらして、頷く。

 どうして、そんなに挙動不審なのだろうか。というか、そんなに知りたいの……?
 彼から目が離せない。でも、こっちを向いたら、慌てて目をそらす。なんか、恥ずかしいじゃん……?

 頬が熱くなる。今にも溶けてしまいそうだ。心臓はさっきからずっとバクバクなり続けている。

「好みの男性かぁ……」

「う、うん……」

「……内緒!」

「はぁ!?」

 たぶん、これは恋じゃない……と思う。
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