パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

文字の大きさ
上 下
4 / 79
例えどんな理不尽な世界だとしても

良いパーティーになりそうなんですが?

しおりを挟む
「ぬぁああああッ!」

 よだれの滴る牙をギラつかせ、脱兎のごとく飛びかかって来るバジリスクをテトラの大きな鋼の盾が受け止める。
 まるで鉄の塊を受け止めたような激しい衝撃に、テトラは思わず体勢を崩す。ふらつくテトラに対して、蛇の尾が迫り来る。猛毒の牙に噛まれれば、体の自由を奪われて次の瞬間には大きなライオンの頭に食い殺されるだろう。
 
 バジリスクの尾が、まさにテトラの首元に牙を突き立てようとしたその瞬間、刃こぼれをした大剣が尾を半ば叩くように斬りつけた。
 
「すまんロイン、助かった」

 大柄なテトラと相反するように小柄な少年ロインは、返事をするのもしんどいようで、肩で息をしながら片手をあげる。
 テトラたちパーティーがバジリスクに遭遇してから三十分が経過していた。

 前線を保つテトラとロインは既に満身創痍。そして後方で魔法を放つアカメとシャンディも魔力の使いすぎで今にも意識を失いそうだった。
 しかし、窮地なのはバジリスクも同じである。全身に斬り跡と数多の魔法を受けた傷が刻まれ、動きも十分鈍っていた。それでも、追い込まれた魔物程怖いものはない。もはやどちらが今まさに瓦解してもおかしくはない状況だった。

「テトラ、ロイン! 離れてください!」

 この戦いにおいてもう既に数え切れないほど聞いた魔法の合図が、後方より放たれる。
 次の瞬間、テトラとロインの間を鋭い稲妻が横切る。もはや避けるだけの気力もないバジリスクは、稲妻を正面から喰らい、その身を焦がした。感電したように体をビクつかせ、小さな声でギャアギャアと鳴き声を漏らす。

「これで終わりだ!」

 アカメが魔法を放った数秒後、遅れてシャンディの魔法が発動する。周り草木が一同に介して、巨大な刃をつくりあげる。
 シャンディが杖を振りかぶると同時に、草の刃は弓矢のように一直線にバジリスクの体を斬り裂いた。

 刃はその強靭な皮膚を抉り、血しぶきを立てる。そして、同時にバジリスクの瞳から光が消えた。
 
 バジリスクが完全に動かなくなったことを確認し、テトラは盛大に息を吐き出した。

「くはぁ……キツかった。お前ら、大丈夫か?」

 その場に崩れ落ちるように座り込み、パーティーの状況を確認する。

「怪我はしてないけど、もう魔力がすっからかん。流石に今回はやばかったね」

 女性らしさのカケラも見えないあぐら座りで、頭にかぶった大きなツバの帽子を取りながらシャンディが根をあげる。

「しかし、なんで中層のこの場所にバジリスクなんかが出たんでしょうか……」

 木にもたれかかって体を支えるアカメが、暗くなりつつある空を仰ぎながら呟いた。

「魔物は活動エリアを変えることは滅多にないですけど、今回が特殊だったのか、それともこの森で何かがおきているのか……。どちらにしてもギルドに報告する必要はありそうですね」

 大剣を地面に突き刺し、先端に柄に顎を乗せながら発するロイン。

 テトラは今一度、自分のすぐそばに横たわり絶命するバジリスクを眺める。ランクCに上がり、初めての適正魔物。しかし、ランクCとして認められたのは五人パーティーだった頃の話であり、ハルトのいない今はまだまだランクCだとは言えない。
 流石に生きた心地がしなかったと内心深々と思った。

「そういえば、ハルトに渡したクエストも確か中層でのクエストだったな。あいつがバジリスクに出会ってなければいいんだけれど……」

 しかし、今は自分たちの身の安全が第一だ。この瞬間にも他の魔物が現れないとは限らない。
 まるで棒のように言うことの効かない両足に喝を入れ、テトラは勢いよく立ち上がった。

         *

「うーん、二頭目……」

 戸惑いと呆れが混ざった覇気のない声を発するハルト。魔法を放った直後で、多少の気怠さが体を襲うが、もちろんそのせいではない。
 眼前には蟷螂のような鋭い鎌を持つCランクの魔物――『エコーイノセント』が丸焦げの状態で横たわっている。

「クエスト目標のリザードマンが見つからないのに、深層部にいるはずのCランクの魔物に二度も出くわすなんて異常中の異常ね」

「でも、今回のこいつも魔法一撃であっさり倒せたね」

 前衛でエコーイノセントの鎌を軽々と受け止めていたマナツとユキオが、討伐証である部位を採取する。

「それよりも、このパーティーの謎の強さの方が異常……だと思います」

「そうだよなぁ。明らかにSランク魔導師の魔法の火力だし、身体能力もやたらと強化されてるっぽい……。一体、何が起きてるんだ?」

 四人はしばし各々唸るが、もちろん結論は出てこない。
 Sランクの魔法職にも匹敵する魔法を放ち、重タンク職業以上のフィジカルを持つ魔剣士など聞いたこともなかった。

「パーティー全員が同様に強化されてるとなると、魔剣士が複数人揃うことで何らかしらの特殊能力が発動する的なやつかな?」

「パーティーの職業構成によっては若干、能力が強化されるという話は聞いたことがある……と思います」

「だとしたら、私たちすごいパーティーになれるんじゃない!? Sランク冒険者も夢じゃないわね!」

 あぶれ者同士で組んだ中途半端職の魔剣士パーティーが、まさかこんな風に化けるなんて誰が想像できただろうか。

 改めて新パーティーの面子を見つめ直す。はしゃぐマナツに、なぜかオロオロするモミジ、そしてそれを微笑ましそうに見つめるユキオ。
 案外、良いパーティーになりそうだなと、ハルトは心の中で口にする。

「よーし、Cランクの魔物二頭も倒したんだ! もうクエストやめて帰ろーぜ、面倒くさい」
 
「「「さんせーい」」……だと思います」

 意気揚々と街に引き返す四人。

 しかし、もちろん街に帰って自分たちが倒しましたといっても、誰にも信じてもらえない残念な魔剣士パーティーであった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜

楠ノ木雫
ファンタジー
 まだ16歳の奥村留衣は、ずっと一人で育ててくれていた祖父を亡くした。親戚も両親もいないため、一人で遺品整理をしていた時に偶然見つけた腕輪。ふとそれを嵌めてみたら、いきなり違う世界に飛ばされてしまった。  目の前に浮かんでいた、よくあるシステムウィンドウというものに書かれていたものは『勇者の孫』。そう、亡くなった祖父はこの世界の勇者だったのだ。  そして、行方不明だと言われていた両親に会う事に。だが、祖父が以前討伐した魔王の心臓を渡すよう要求されたのでドラゴンを召喚して逃げた!  追われつつも、故郷らしい異世界での楽しい(?)セカンドライフが今始まる!  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...