パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

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例えどんな理不尽な世界だとしても

やっぱり魔剣士パって変ですか?

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「それではこちらが新しいパーティーカードとなります。再発行には五万ガロかかってしまいますので無くさないようにしてくださいね」

 ハルト含む四人は、その日のうちに冒険者ギルドで新しくパーティー登録をして、その日は解散となった。

 ハルトが家に到着した頃には、既に空は夕暮れを通り越して闇夜に身を包みかけていた。
 それにしても今日は色々なことが起こりすぎた。朝、いつも通り日銭を稼ぐためにパーティーの元へと向かい、突然テトラからパーティーの脱退を懇願され、そしてその日のうちにパーティーを再結成。しかし、その全員が魔剣士というドタバタメンバー。おそらくここ数年で一番を争うほど心労が溜まった日であろう。

「もう、限界。はよ寝たい……」

 相変わらず猫背で首を垂れながら歩く姿は、暗闇に染まりつつある街路だろうと遠くから見ても一目瞭然だろう。
 そして案の定というべきか、流れ的にというべきかハルトの家の前に座り込んでいた巨体が、遠方からトボトボ歩いてくるハルトに気がついて立ち上がる。

「ハルト……」

「なんだ、テトラか。どうしたんだよ、人の家の前に座り込んで」

 昼間の甲冑姿から一変して薄い麻の服を身にまとうテトラは、その巨体を少しばかり申し訳なさそうに縮めている。

「仕方ないことだとしても、ずっと一緒にやって来たお前をパーティーから追放したのは俺だ。その……できる限り進捗を聞いて手助けができないかと思って、質の良いクエストを持って来た」

 テトラの言う質の良いクエストというのは、おそらく比較的簡単な内容で報酬の多いクエストのことであろう。冒険者の数はさほど多くない。とはいえ、みんな稼ぎ、生きるために命をかけて魔物の区域に足を踏み入れるのだ。クエストは日々更新されるが、報酬の多いクエストに関しては各パーティーの早い者勝ちとなる。

 パーティーを再結成して間もないハルトたちにとって、質の良いクエストはありがたい限りだ。

「おぉ、それは助かる。明日の手間が省けたよ。サンキューな」

 ハルトはぶっきらぼうにテトラからクエストの用紙を受け取る。
 テトラのことは嫌いではない。しかし、今日に関してはやはり積極的に話を弾ませる気分にならない。

「それじゃ、今日は疲れてるから」

 結局テトラの顔を一度も見ることなく、ハルトは家のドアを力なく開いた。閉じたドアを寂しげに眺めるテトラの姿だけが、暗闇に包まれていった。


 次の朝、再び昨日の集会所に集合した四人でテトラから受け取ったクエスト用紙を覗き込む。

「リザードマン四頭討伐で四万ガロなんて、すごい質の良いクエストじゃない! ハルト、これどうやって手に入れたの?」

「あぁ、前のパーティーのリーダーがくれたんだ。餞別みたいなもんだよ」

 リザードマンといえば、Eランクの冒険者が討伐するような魔物だ。平均単価は一頭五千ガロ。つまりこのクエストは平均的なクエストに比べて倍の報酬が出るということになる。

「いいなぁ、こんな餞別なんかもらえて。私なんてお払い箱みたいに捨てられたわよ。はい、ばいばーいって感じで」

 クエスト用紙を手に持ち、ピラピラとさせながらマナツはぼやく。

「僕もそんな感じかなぁ。とりあえず魔剣士だからって理由で追放されちゃった」

 本来であれば、パーティーのメンバーが変わるということは滅多に起こらない。というのも、パーティーを再結成すると、クエストを受けられる難易度の基準となるパーティーランクは最低のEランクから再スタートになってしまう。そして、パーティーから一人抜けるたびにパーティーランクは一つ落ちるため、無作為にパーティーを抜けたり、入れ替えを行う行為はご法度とされている。

 しかし、どうやら今回のパーティーメンバー上限の変更に関するメンバー追放で発生したランク降格は、特例で起こらないものとするらしい。しかし、追放されたものに関する処置は従来通り何もない。
 全くもって身勝手な話だ。

「そう言うわけで、このクエストを今日の午後から出発しようと思う。推定日数は三日。みんな、どうかな?」

 マナツとユキオはもちろんといった風に承諾してくれた。モミジも言葉は発さないものの、首を上下に振る。

「それじゃ、一旦解散して正午に街の正門集合にしよ――」
「あれれ? マナツじゃーん」

 ハルトの言葉を遮るようにして、男性にしては少し高めの声がどこからか割り込んでくる。
 声のタイプで安に察することのできる、典型的なおちゃらけ人の気配に、面倒なことが起きそうだとハルトは密かにため息を漏らす。
 

「ゲッ……スミノ!」

 マナツはその男性を見て露骨に嫌悪感をむき出しにする。
 男性は短めの金髪で、首と手首にジャラジャラしたうるさい装飾品を身につけている、いかにもチャラい奴だった。

「パーティー追い出されたマナツがなんでこんなとこにいんの?」

 スミノは卓をぐるりと見渡して、今の状況を察したのか手をぽんとわざとらしく叩く。

「あーなるほど! あぶれもの同士でパーティー組んだのか。よかったよかった。実はマナツのこと心配してたんだよねー。あ、新しいマナツのお仲間さん? こいつ少しうるさいけど仲良くしてあげてねー!」

「心配してないでしょ。ていうか、スミノが一番うるさいし」

 スミノと呼ばれる人物が来てから、マナツは明らかに不機嫌だ。肘を卓について終始スミノをにらみつけている。

「んん? んーあんた、テトラのとこの魔剣士だよね。あれ、そっちの大きな男はセバスのとこの魔剣士だし、そっちのもじもじお嬢ちゃんも確か魔剣士だったような……ぶはっ!」

 スミノは突然吹き出す。どうやら、ハルトたちのパーティーが全員魔剣士であることに気が付いたようで、腹を抱えて笑い転げている。

「ふはは、いーひっひ……The中途半端職の魔剣士パーティーって、あんたたちセンス良すぎ、ブフォッ!」

 拳をプルプルと震わせて今にもスミノに殴りかかりそうなマナツ。それをなだめるようにユキオが苦し紛れに口を開く。

「ゆ、愉快な人だね。元気いいし、うん……」

「そ、そうだな。明るいのはいいことだな」

 一触即発の苦しい場を何とか仕切ろうとするハルトとユキオだが、これまで口を閉ざして来たモミジの一言に場は静まり返った。

「私、この人嫌い……だと思います」

 誰もが思っていたセリフをズバッと言いのけたモミジに、思わず全員目を丸くして言葉を失う。大人しそうに見えて発言にオブラートがないブラックさが垣間見えた瞬間だった。
 しかし、この一瞬の静けさにマナツは声を出して笑いのけ、震わせる拳をしまう。

「本当、男ってクズしかいないね」

 マナツの言う所の男に、ハルトとユキオは自身が入らないことを切に願うのであった。

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