【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ

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第一部

8.解呪~一つ目の呪い~

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「やあ、お待たせ」
 月がまた高く昇った頃、ハーディは窓から現れた。

「続きって、何をするのよ」
 大して変わらないだろうけど、今日はナイトウェアの上に厚手のカーディガンを羽織った。

「いいね、その顔。嫌いじゃない」
 ハーディは、わたしが座る寝台に腰掛ける。

「ところで、君はキスが初めてだったみたいだったけど、他のことはどれぐらいやったことがあるの?」
「他のことって……何にもないわよ」
 呪いのことがなかったとしても、元々王女は貞操が重んじられるから、婚前交渉などありえない。純潔を守り抜くのが仕事だと言ってもいい。

「じゃあ、誰かに教わったことは?」
「その、夫となる人が全て教えてくださる的なことは習ったわ」

 一応子供騙しみたいな閨教育は受けた。貞淑な妻は楚々として夫の導きに身を委ねればよいらしい。
 淫夢はそれなりの回数見たけれど、わたしは覗き見ているだけで実際には何も体験したことはないのだ。

「なるほど」

 ハーディが顔を近づけてくる。またキスされるのかと思って咄嗟に顔を背けたら、顎に手を置かれて、強制的に見つめ合うことになる。

 この目も魔術の一つなのかしら。だからこんなに、顔が熱くなるんだろうか。

「どうする? ここから先、呪いを解こうと思ったらおれとキスより先のことをしないといけなくなるけど、君にできる?」
 紡がれた言葉は苦笑交じりに聞こえて、「どうせ君なんかにできないだろう」と言われている気がした。

 わたしはずっと、呪いを解きたかった。普通の、普通の王女になりたかった。
「ばかにしないで。わたしは呪いを解きたいの。続きでもなんでもやればいいわ」

 わたしは出来得る限りの力でハーディを睨みつけた。
 青は輝きを増して応える。

「そう」
 流れるようにカーディガンを奪われる。ハーディはわたしを寝台に押し倒した。

「……ひゃっ」
「昨日も言ったけど、呪いを解くにはおれの魔力を君の体に取り込んで、探る必要がある」

 足首まであるナイトウェアの裾を、ハーディが捲り上げた。わたしの体を覆うものは簡素な下穿きだけ。ハーディがそれを少し下げると、わたしの下腹部に刻まれた呪いが露わになった。

 長い指が三重になった一番外側の呪いをなぞる。動きに合わせてぼんやりと、呪いが青く光り始める。

「魔力は呪いに近いところから取り込むのが、一番効率がいい」
 にやりと、ハーディが笑う。その微笑みは一段と美しい。

「それじゃあ、続きを始めようか」
 するりと、声を上げる間もなく、下穿きが取り去られる。

 上がった口元からちろりと長い舌が覗く。温かな吐息が誰にも見せたことのない場所を掠めた。

「……なっ…!!」

 足の間に銀色の頭がある。柔らかい銀髪が内股を撫でていって、それだけでもざわりと鳥肌が立つ。
 淫夢の中でも、こんなことをしているのは見なかった。
 この間よりも遥かに強い、小さな虫が体を這いまわるような不快感が全身を駆け巡った。背骨をゆっくりと、蛞蝓でも這っている気がする。

 指先が、足先が冷えきってくのに、ハーディの舌だけがひどく熱くて、湿っていて。秘所の溝を何度も何度も上下に往復する。

「……っ………ぁ……っ」

 だって、呪いに近いところから魔力を取り込むって言った。
 だから、だから、こんな不浄の場所を彼は舐めているのだ。それ以外に意味はない。必死でそう思い込もうとした。

 目を強く瞑った。こうすれば何をされているか見なくて済む。

 時折彼の舌が触れると、より一層強く虫が這うところがある。変な声が漏れないように、わたしは手の甲を口に当てた。

「……ぃ…………くっ…」

 それに気づいたのか、まるでキャンディでも舐めているように、執拗にそこばかり彼は舐め始めた。
 ぴちゃりぴちゃりとした水音が次第に大きくなる。

「ああ、感じはしないけど濡れてはくるんだね」

 そこで話さないでほしい。
 舌がずるりと内側に入り込んでくる。秘所の入り口を抜き差しして、ねっとりと撫ぜる。水音がさらに大きくなって、ハーディの啜り上げる音がする。
 呼吸が浅く、速くなっていく。空気を求めてはくはくと喘ぐしかない。

「大丈夫、もう、これで、お終いだ」

 敏感な尖りに軽く歯を立てて、挟むようにして、一層強くハーディが食んだ。


 その瞬間、世界が反転したような気さえした。

「あっあっ、あああああぁっ」

 呪いが解ける。直感でそう分かった。


 パリンッ。


 どこかで何かが割れるような音がする。
 うすぼんやりとした青い光が体中を包む。不快感が消え去ると同時に、体が浮かびあがるような感じがして怖い。冷えた足先まで沸騰したように熱い血が流れて、ぴんと足首が反り返った。

 大きく空を掻いたわたしの手をハーディが掴んだ。そのまますっぽりと、腕の中にしまい込まれる。

「いい子だ。上手にできたね」

 耳元で甘やかな声が言う。頭の後ろに回された手が髪を撫でる。それにさえも、腹の底がきゅっと絞られように跳ねた。
 もしかして、呪いを解かないほうがよかったんじゃないかしら。

 震えが止まらない体をハーディに預けて、わたしはそう思った。
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