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6.快楽の予感
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「すみません、俺、力が強くて。痛かったですか?」
レオンハルトはささやかな谷間からはっと顔を上げる。違う、そうではない。
「……痛くは、ないよ」
電気が走ったかと思う位、体が跳ねた。こういうものだと、作法は知っている。けれど、与えられる刺激に、体は慣れてはいない。
「あの……」
「続けて」
宥めるように頭を撫でたのに、見えない耳がぺたんと垂れた。この犬は何か悲しいことがあるのだろうか。
口元に当てた右手を、掴まれた。そのままシーツに縫い付けられるようにして繋がれる。
「フランツィスカさん」
いつも穏やかなレオンハルトが顔を曇らせる。
「声、聞きたい」
囁かれる低い声。耳元にかかる吐息の熱さに心臓が跳ねた。顔に血が上っていくのを感じる。これが羞恥なのかなんかのか、フランツィスカには分からない。けれど、彼には知られたくなかった。
こんなに近くにいて、隠すことなどできないと分かっているのに。
「聞いてどうするんだい」
だからこれはどちらかと言えば本心ではなくて、ただの虚勢だった。
「わかんないです。でも、聞きたい」
潤んだ瞳が駄々っ子のように言う。子供のようだと思ったところで、子供はこんなことをしない。
「っぁあ」
ざらつく舌は這うように首筋を舐めて、胸元まで続けた。そのまま硬くしこった頂きを口に含む。飴玉でもしゃぶるように転がされたら、もう我慢ができなかった。まだ一度も触れられていない奥がぎゅうと締まる気気がする。
「んあっ……ゃ……だめっ」
抗議の声を上げたところで、レオンハルトはやめてはくれない。身を捩っても快楽からは逃れられなくて、大きな手に揺れる腰を押さえつけられた。
脇腹にまでちゅっと音を立て、雨のように口づけが降ってくる。剥ぎ取るように下穿きを脱がされた。
「よかった、ちゃんと濡れてる」
そうして辿り着いて最も秘めたる場所を、節くれだった指がなぞった。ぬるりと滑ったそれが教えてくれる。目の前の男を受け入れるべくして、自分の内から溢れたものだと。
「ちゃんと悦くしたいんです、俺」
さっきからずっと感じていた、足に当たる欲望の証。もう十分に硬いそれは、フランツィスカの裡に押し入ることなど容易いだろう。けれどまだレオンハルトはそうしない。
代わりにつぷりと、指が一本突き立てられる。
「きっつい」
解すように掻き混ぜるように、ゆっくりと抜き差しされる。その度に蜜が奥から零れてくる。あの大きな手ならこんなところまで届くのかと思った。
「ひゃあっ……ああっ……ぁああ」
けれど、足りない。もっと一番奥が、埋まらない。
そうだ。あれを挿れてもらわなければならない。そうすれば、この空洞は埋まる。欲しい。
強請るように腰が揺らめいて、宙に放り出されるような感覚が迫りくる気がした。大きな背にしがみつくことしかできなくて、体が弓なりに反っていって、それで。
フランツィスカは未知の快楽の予感に、ぎゅっと目を瞑った。
けれど、何も起こらなかった。
恐々目を開けると、捨てられた迷子の子犬がいた。
レオンハルトはささやかな谷間からはっと顔を上げる。違う、そうではない。
「……痛くは、ないよ」
電気が走ったかと思う位、体が跳ねた。こういうものだと、作法は知っている。けれど、与えられる刺激に、体は慣れてはいない。
「あの……」
「続けて」
宥めるように頭を撫でたのに、見えない耳がぺたんと垂れた。この犬は何か悲しいことがあるのだろうか。
口元に当てた右手を、掴まれた。そのままシーツに縫い付けられるようにして繋がれる。
「フランツィスカさん」
いつも穏やかなレオンハルトが顔を曇らせる。
「声、聞きたい」
囁かれる低い声。耳元にかかる吐息の熱さに心臓が跳ねた。顔に血が上っていくのを感じる。これが羞恥なのかなんかのか、フランツィスカには分からない。けれど、彼には知られたくなかった。
こんなに近くにいて、隠すことなどできないと分かっているのに。
「聞いてどうするんだい」
だからこれはどちらかと言えば本心ではなくて、ただの虚勢だった。
「わかんないです。でも、聞きたい」
潤んだ瞳が駄々っ子のように言う。子供のようだと思ったところで、子供はこんなことをしない。
「っぁあ」
ざらつく舌は這うように首筋を舐めて、胸元まで続けた。そのまま硬くしこった頂きを口に含む。飴玉でもしゃぶるように転がされたら、もう我慢ができなかった。まだ一度も触れられていない奥がぎゅうと締まる気気がする。
「んあっ……ゃ……だめっ」
抗議の声を上げたところで、レオンハルトはやめてはくれない。身を捩っても快楽からは逃れられなくて、大きな手に揺れる腰を押さえつけられた。
脇腹にまでちゅっと音を立て、雨のように口づけが降ってくる。剥ぎ取るように下穿きを脱がされた。
「よかった、ちゃんと濡れてる」
そうして辿り着いて最も秘めたる場所を、節くれだった指がなぞった。ぬるりと滑ったそれが教えてくれる。目の前の男を受け入れるべくして、自分の内から溢れたものだと。
「ちゃんと悦くしたいんです、俺」
さっきからずっと感じていた、足に当たる欲望の証。もう十分に硬いそれは、フランツィスカの裡に押し入ることなど容易いだろう。けれどまだレオンハルトはそうしない。
代わりにつぷりと、指が一本突き立てられる。
「きっつい」
解すように掻き混ぜるように、ゆっくりと抜き差しされる。その度に蜜が奥から零れてくる。あの大きな手ならこんなところまで届くのかと思った。
「ひゃあっ……ああっ……ぁああ」
けれど、足りない。もっと一番奥が、埋まらない。
そうだ。あれを挿れてもらわなければならない。そうすれば、この空洞は埋まる。欲しい。
強請るように腰が揺らめいて、宙に放り出されるような感覚が迫りくる気がした。大きな背にしがみつくことしかできなくて、体が弓なりに反っていって、それで。
フランツィスカは未知の快楽の予感に、ぎゅっと目を瞑った。
けれど、何も起こらなかった。
恐々目を開けると、捨てられた迷子の子犬がいた。
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