大好きな許嫁の弟と結婚することになりました

藤原ライラ

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十四、仄暗い夜の海

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 強請るように腰を揺らしていたのは、彩恵の方だった。

「ずっと、こうしたかったんです」
 ぐっと腰を掴まれて濡れそぼった蜜口に熱杭が宛がわれる。

「彩恵」

 ああ、やっぱり声が似ている。顔が見えないから余計に、そう感じてしまう。後ろにいるのが尊のような気がしてくる。振り返らなければ、ずっとそう思ったままでいられるのだろうか。

 そのまま容赦なく一思いに貫かれる。ごつん、と最奥にぶち当たった時に感じた。

「っあ、ちがっ……!」

 微かな挿入の痛みと、圧倒的な快感。

 こんなところまで届いたことがない。体の一番奥で、これは違う男だと認識する。
 いつもよりも、ずっと深い。受け入れただけで軽く彩恵は達してしまった。

「ね、兄さんかと思いました?」

 切っ先がごりごりと子宮口をこねる。内臓を掻き混ぜられるほど激しく突き上げられて、ただただ喘ぐ。

「みっともないな」

 ああ、そうだ。
 誰だっていいのか、わたしは。他の男に抱かれても、この体はちゃんと反応する。あまりにも淫乱な我が身を恥じた。何のものか分からない涙が流れていく。

「大丈夫、すぐに僕の形にしてあげる」

 一突きされる度に、内側から体が作り変えられていくような気がする。その恐ろしさに肌が粟立つ。

 これではまるで、獣のようだ。

 けれど、確かにこの体はこれを快楽だと感じている。媚肉は己の意志とは裏腹に肉棒に絡みついて、締め上げ続けている。

「っく」

 奥歯をぐっと噛みしめる気配。飲み込んでいる欲望の証がずくりと膨らんで圧迫感が増していく。執拗にざらつくところを責め立てられれば、絶頂はもうすぐそこにある。

「ねっ……もう、やめてっ……っああん……ぁん」

 彩恵が知っている翔とは、あまりにも遠い。
 華やかな尊とは違って、翔は大人しい子だった。いつも泣き出しそうな目をした、どこか放っておけない子だったのに。

「どうしてっ、なんで」

 あの時、彩恵の手をぎゅっと掴んだ小さな手を、まだ覚えている。覚えているのに。
 わたしはずっと、何を見てきたのだろう。

「どうして、ですか。きっと全部ね、僕のせいなんですよ」

 自嘲するように彼は言う。

 翔から伝った汗だろう。それが、身が軋むほどの抽挿の度に背中に落ちる。ぐちゃぐちゃに交じり合った体液が零れて、敷布に流れ落ちていく。

 どつどつと、奥を抉るように律動が繰り返されて、彩恵は一際高い声を上げて達した。

「っあああ!」

「だから、これからはずっと、」

 荒い息を吐きながら、翔は秘所に限界まで腰を押し付けている。脈打つ楔がはじけて、熱い滾りがこの胎に放たれる。待ちわびたとばかりに、襞は全てを搾り取らんと蠕動する。

「僕のものだ」

「んぁっ」
 精を吐き出し終えた男根がずるりと引き抜かれる。たったそれだけのことに、甘ったるい声が漏れてしまう。

 力の入らない体を僅かに捻って、彼を見た。

 はあはあと苦し気に息をする肩と、汗で張り付いた前髪。その向こうで揺れる黒い瞳は、涙で滲んでしまってよく見えない。体が、瞼が、重い。

 薄れていく意識の中で、どうしてだろう、まるで彼が泣いているように見えた。懸命に持ち上げた手を、伸ばす。

「……ける……ん」

 けれど、この手は届かない。ぱたりと、地に引き寄せられるように腕の力が抜けてしまう。

「ごめんね、兄さんじゃなくて」

 ぽっかりと暗い海が口を開けてこちらを見ている。
 あとはもう、落ちるだけだ。


 彩恵は吸い込まれるように、意識を手放した。
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