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十一、葬送と祝言
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葬式と結婚式はよく似ている。
白無垢を着付けられながら、彩恵は思った。同じように白い服を着て、同じように花に囲まれる。参進の儀も葬列も、遠くから見れば変わりない。違うと言えば主役が生きているか死んでいるか、それだけだろう。
この着物を選んだ時、彩恵は人生で一番幸せな気分だった。大好きな人と結婚して、一生を共にするのだと信じ込んでいた。
けれど、転がり落ちるように世界は様相を変えた。
介添えに手を引かれてゆっくりと歩く。長身に、片喰紋の羽織袴はよく映える。
ふと、翔には好いた女などはいなかったのかと思い至った。気持ちはまだ追い付いてこない。けれど、それは隣の彼も同じだろう。いきなり彩恵と結婚させられることになって、戸惑いはないのだろうか。端整な横顔からは何も読み取れなかった。
拝殿に、朗々とした翔の声が響く。
「今日の吉日の吉辰を選び定めて、掛けまくも畏き大前に於いて……」
彼は淀みなく、誓詞を読み上げる。その声を聞きながら思う。
忌明けすぐの挙式は、歓迎されるものではない。
金のために、兄から弟へと夫を挿げ替えた吝嗇な女狐。
巷は、そんな彩恵への非難で溢れている。
列席者の中には、勿論尊もいる。誰に何を言われようと、そんなことはもうどうでもいい。彩恵と家が生きていくためにはこの道しかないだから。
「願わくば、幾久しく御守護下さいますよう、謹んで御願い申し上げます」
尊の目に、今の自分はどう映るのだろう。あんなにも慕っていたのに、あれから彼とは一言も言葉を交わしていない。
祝いの席の全てを他人事のように聞きながら、彩恵は翔と正式に夫婦となった。
白無垢を着付けられながら、彩恵は思った。同じように白い服を着て、同じように花に囲まれる。参進の儀も葬列も、遠くから見れば変わりない。違うと言えば主役が生きているか死んでいるか、それだけだろう。
この着物を選んだ時、彩恵は人生で一番幸せな気分だった。大好きな人と結婚して、一生を共にするのだと信じ込んでいた。
けれど、転がり落ちるように世界は様相を変えた。
介添えに手を引かれてゆっくりと歩く。長身に、片喰紋の羽織袴はよく映える。
ふと、翔には好いた女などはいなかったのかと思い至った。気持ちはまだ追い付いてこない。けれど、それは隣の彼も同じだろう。いきなり彩恵と結婚させられることになって、戸惑いはないのだろうか。端整な横顔からは何も読み取れなかった。
拝殿に、朗々とした翔の声が響く。
「今日の吉日の吉辰を選び定めて、掛けまくも畏き大前に於いて……」
彼は淀みなく、誓詞を読み上げる。その声を聞きながら思う。
忌明けすぐの挙式は、歓迎されるものではない。
金のために、兄から弟へと夫を挿げ替えた吝嗇な女狐。
巷は、そんな彩恵への非難で溢れている。
列席者の中には、勿論尊もいる。誰に何を言われようと、そんなことはもうどうでもいい。彩恵と家が生きていくためにはこの道しかないだから。
「願わくば、幾久しく御守護下さいますよう、謹んで御願い申し上げます」
尊の目に、今の自分はどう映るのだろう。あんなにも慕っていたのに、あれから彼とは一言も言葉を交わしていない。
祝いの席の全てを他人事のように聞きながら、彩恵は翔と正式に夫婦となった。
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