僕と彼女の家族計画~美貌の妹が誘惑してくる件について~

藤原ライラ

文字の大きさ
上 下
2 / 9

2.

しおりを挟む
 ミネットは僕の五つ年下の妹だ。今は魔術師学校に通っている。

 やっと僕の膝から下りてくれた彼女は、今は大人しく向かいの席に座って朝食を食べている。

 普段は学校の寮にいるのだけれど、時々彼女は思いついたように突然の帰宅をする。ミネットは魔法の中でも空間転移魔法が大の得意なのだ。この国でも満足に使える者なんて、そうそういないだろうに。

 つまりミネットは、行動と言動は色々アレなのだが、結構なエリート魔術師の候補だったりする。

「お兄ちゃんの作ってくれたスクランブルエッグが、一番おいしい」
「それは、どうも」

 それにひきかえて僕はといえば、いたって普通の“人間”でしかない。魔法も使えないし、頭が特段いいということもない。まあ、小さい頃からしてきたから掃除洗濯料理と言った家事全般は、少しだけ得意だけれど。

 朝食を食べ終えたら、僕は仕事に向かわなければならない。

「ねえ、お兄ちゃん。魔石掘りなんてもうやめにしようよ。危ないよ」
 ぼさぼさだった金髪をきれいに片方でまとめて三つ編みにしながら、ミネットは言う。なんでも髪をしばっているとうまく魔法が使えないらしい。何をどうしても魔法なんか使えない僕には縁のない話だ。

「うーん。でも割に稼げる仕事だから」

 魔石掘りは危険で過酷な仕事だ。あまりやりたがる人はいない。
 その分だけ給料はいい。何の特別な技能も持たない二十四歳が稼げる額としては破格と言える。

「でも」
 ミネットは眉を下げて心配そうな顔をする。

「大丈夫だよ。ちゃんとお前がくれたお守りも持ってるし。それより、あんまりゆっくりしてると遅刻するぞ」

 僕は、シャツの下に隠して首から提げている守護石を見せる。ミネットの瞳の色と同じ、青色だ。祈りの魔力を込めて結晶化させたもので、なんでも授業の課題で作ったらしい。

「あ、そうだった!」
 バタバタと身支度をする彼女を尻目に、僕も出かける用意をする。

「それじゃあ、また」
「うん、またね。お兄ちゃん」

 家の鍵を閉めて別れの挨拶を手短に済ませたら、二人背を向けて、仕事場と学校へ向かう。
 ふと振り返ったらもう、ミネットの姿はそこにはなかった。きっと彼女は魔法を使ったんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ
恋愛
 ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。  ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。  解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。 「君は、おれに、一体何をくれる?」  呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?  強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。   ※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

英雄騎士様の褒賞になりました

マチバリ
恋愛
ドラゴンを倒した騎士リュートが願ったのは、王女セレンとの一夜だった。 騎士×王女の短いお話です。

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーロットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーロットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーロットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーロットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーロットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーロットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーロットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーロットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーロットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

闘う二人の新婚初夜

宵の月
恋愛
   完結投稿。両片思いの拗らせ夫婦が、無意味に内なる己と闘うお話です。  メインサイトで短編形式で投稿していた作品を、リクエスト分も含めて前編・後編で投稿いたします。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

21時完結
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

処理中です...