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番外編:神様のお茶会

1.白いカーネーション

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 華やかなドーレブールの町外れに、ひっそりと墓地がある。

 ある晴れた日の午後、アネットはシャルルと共にそこを訪れた。結婚式の前にどうしても挨拶をしておきたかったからだ。

 彼の母たるブランシュは、この土の下にいるという。

「元々は僕が育った町の共同墓地に埋められていたのを、父上がここに移したんだ。いつでも会いに行けるように、と」
「そう、なんですか」

 どんな人だったのかなと思う。シャルルは髪の色以外はブランシュに似ているらしい。だとすると、それはそれは美しい人だったのだろう。

 シャルルが花を手向けようとすると、先客があった。
 真っ白なカーネーション。それがそっと手向けられている。

「これは……」

 ブランシュを今も確かに偲んでいる人がいるという、その証左。彼女をこよなく愛したという、シャルルの父はもうこの世にはいない。だとすれば。

「ああ、いつも絶対に先を越されるんだ」

 なんでもシャルルが訪れる時には必ずと言っていいほど、この花が置いてあるのだという。

「誰がこの花を」

 シャルルは紫色の目を細めて空を仰いだ。
「それはな」

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