引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末

藤原ライラ

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本編

16.氷の向こう ※

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 いつの間にか増やされた指は執拗に、押し拡げるように動く。時折ざらりとした場所を掠めると、痺れのような疼きが走る。

 腰に押し当てられる彼の怒張ももう十分に張り詰めている。鷲掴みにされた胸の尖りを弾かれると、その度に体の奥が蠢く。ぬちゃりと重たい水音がどこから響いてくるのかももうわからない。

「いいか」
「……っ…ぁ……ふあっ」

 欲を孕んだ声が許しを乞うてくる。嬌声をひっきりなしに上げるリリアーナは、ただ頷くことしかできなかった。

 蕩け切った蜜口に切っ先が宛がわれる。じれったくなるような速度で、それはリリアーナの裡を蹂躙していく。強張るこめかみに、口づけが降りてくる。

「っく」
 奥歯を噛みしめてシルヴィオが呻く。彫像のように整った顔が上気している。

「あの、」
 いつものように、「殿下」と呼ぼうとしたところで気づく。リリアーナが名前を呼ばれて嬉しいのなら、彼も同じであってほしかった。

「シルヴィオ、さま」

 見開かれた青と見つめ合う。額に玉のような汗が浮いて銀髪が貼り付いて、それでも彼は美しかった。滲んだ壮絶な色気にくらくらするほどに。

 けれどどんなに美しくとも、この人は男の人なのだ。
 そして、リリアーナを女として望んでいるのだ。

「やさしく、しなくて、いいです」

 シルヴィオの喉がごくりと動いたのがわかった。ずくりと胎の中で圧迫感が増す。
 一番奥、誰も知らない場所に彼が欲しかった。

「もっと……ああああっ」
 力強い突きがリリアーナの最奥を侵す。痛みの中に確かに快楽が混じって、リリアーナは一際高い声を上げた。

「君が、好きだ。リリィ」
 火照った体を壊れるくらいに抱きすくめられる。

「こんな気持ちになったのは、はじめてなんだ」

 譫言のように紡がれる言葉は、飾り気がないがゆえに何よりも真実を伝えてくる。律動の激しさはそのまま彼の心の中のよう。抑圧を超えて噴き出す狂熱のままに突き上げられて、翻弄されるがままになる。

 氷の向こうにずっとあったもの。彼が隠していたもの。
 それが一番愛おしい。

 指を絡めて手を繋ぐ。汗ばんだところから混じり合って境界線が曖昧になるみたいだ。体の全てで、彼を感じている。きゅうきゅうと絡みついて、剛直を締め付けてしまう。その度に、シルヴィオが快楽を隠し切れない吐息を漏らす。

「わたしも、です」
 いつの間にか、その腰に足を絡めていた。繰り返される抽挿に背が弓なりに反っていく。首筋に噛みつくがごとく口づけられて、目の前が真っ白に明滅した。放り出された浮遊感に震える体を、シルヴィオがかき抱く。

「もう、離さない」

 最奥で膨らんだシルヴィオの楔が弾けて、熱い迸りが広がっていった。

 離さないでいて。
 そう思った言葉は声にならなかったけれど、ぎゅっと抱き着いたこの腕をきっと彼はわかってくれるだろう。
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