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魔獣の巣窟
第九夜
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「このキノコ、見たことない。食べられる?」そう尋ねると、ねこちゃんは答える。
「ぎゅーん」
「食べられないのか。ざんねん。」
気づけば、ここ魔獣の巣窟に来てから、もう一年が過ぎていた。どうしてそれが分かるかって?
それは、この場所に来てから曖昧な時間感覚を少しでも補うため、毎日、木の枝を使って岩壁に正の字を刻んでいたから。そして、その正の字が73個を超えた。
この世界では前世と同じ暦の数え方なのか分からない。でも、日々の暮らしの中で少しでも安心感を得たくて、こうして時間を数えていた。最初はただの暇つぶしだったけど…。
「よし、このくらいでいいかな」
今朝も、いつものようにねこちゃんと共に森を探索していた。見知らぬ植物や薬草を見つける度にねこちゃんに食べられるかどうかを尋ねるのが日課になっている。
そして、そのたびに「ギャンギャン」や「ぎゅーん」と答えるねこちゃんの声を聞くと、少し笑っていた。俺の言葉ほんとうにわかってる?って疑いたくなっちゃう。
俺は木の枝と葉っぱで作ったカゴに、食べられるキノコや木の実などをいっぱいに詰め込んだ。初めは、泉のある場所から岩壁を越えることをあまりしなかったが、最近では毎日のように岩壁を越え、魔獣たちが住む場所で探索をしたり、遊んだり、そのままみんなと寝たりしている。たまに縄張り争いに巻き込まれたり、仲裁したりすることもある。
今では、ほとんどの魔獣が友達だ。貴崎栄一《前世》では友達がいなかったから、こうして仲間がいるのは嬉しい。俺は俯きながらほんの少し微笑んだ。
ここでの暮らしにも大分慣れてきたと思う。けれど、最近少し心配事がある。
それは、
「グォォォォォォォーーーッ!」
「アオォォォォーン!」
「ガオォォォォォン!
突然、魔獣の咆哮が大気を震わせ、木々の葉がざわめく中、緊張感が一気に高まった。俺はその恐ろしい音の大きさに足を止め、両手で耳を塞いだ。心臓が早鐘のように打ち、背筋には冷たい汗が伝っていく。
ねこちゃんは耳を立て、音のする方向をじっと見つめている。そして、近くにいたカラスに向かって吠え、会話を交わし始めた。
「また、人間?」
「ギャンギャン」
「そっか」
ねこちゃんは俺のそばに近寄り、虎バージョンに変わり、俺の首襟をを噛んで泉へと連れ戻そうとする。
「まって、カゴが!」
俺は急いでカゴを拾い上げ、ねこちゃんに股がり急ぎ、泉へと向かった。その道中、魔獣たちの咆哮が空を切り裂いていた。
岩壁を越えて泉にたどり着いたが、俺はみんなが心配だった。
「みんな、だいじょうぶかな…」
俺は心配でたまらず、ねこちゃんを見ながらぽつりと呟いた。
最近、人間たちが頻繁に魔獣の巣窟に入り込み、魔獣狩りを行っていることが俺の心を悩ませていた。
物語の中では、魔獣の巣窟に入る人間なんていなかったはずだ。それほどまでに危険で恐ろしい場所なのに、どうして人間たちはわざわざこの場所に足を踏み入れるのだろう。
ベアルが生まれてから、魔獣たちの活動が激しくなって街を襲うようになった。
人間たちが魔獣狩りをしているのは、その復讐のためなのかもしれない。
大切な人を殺されて怒っている気持ちは、もしかしたら俺と同じなのかもしれない。
前に一度、そんな魔獣狩りをしている人間たちを止めに行こうとしたことがあった。
その時、ねこちゃんが行くのを必死で止めた。でも、友達が傷つけられるのが嫌で、ねこちゃんの制止を振り切って走り出そうとした。その瞬間、ねこちゃんの目が鋭く光り、耳をぴんと立てて、威圧感を俺に放ってきた。 低くうなる声が響き渡り、俺は少し怖くなり、その場で固まってしまった。
瞬く間に、ねこちゃんが虎バージョンになって、まるで親猫が子猫をくわえて運ぶみたいに俺の襟首を噛んで、そのまま無理やり泉まで連れ戻されてしまった。
ねこちゃんは本当に俺を心配してくれていたみたいで、泉に着いてからもなかなか俺を離してくれなかった。やっと離してもらえたと思ったら、その後もずっと牙を出してながら俺に向かって吠え続けた。
最後は、「ごめんね」ってしゅんとなって謝ったら、顔を舐めてくれて、仲直りできた。
以来、どこかで魔獣狩りが始まり、逃げることを躊躇っていたり、もたついていると必ず俺を咥えて運ぶようになってしまった。
本当は人間たちと話をして、魔獣狩りを辞めさせたい。
その代わり、俺も魔獣たちに街を襲うことを辞めるよう魔獣に言う。
そんな話をしたいんだけど、ねこちゃんがそれを絶対に許さない。俺を心配してくれているのは本当に嬉しいけど、どうにかしてこの現状を変えたい。
「はぁ…」
友達が殺されてしまうのはもう見たくないのに。
でも、俺が人間たちと直接話すのはかなり危険な行為でもある。俺の容姿を見たら、みんな怖がって、話なんて聞いてくれない。それに、黒髪黒目の子供が魔獣の巣窟で魔獣と仲良く暮らしているなんてことが国王の耳にでも入れば…。
もしかして、それを分かっているから、ねこちゃんはあんなに必死で止めてくれているのかな?
「さすがに、そこまで分かってないか…」
でももし、どこかでばったり人間たちと遭遇してもいいよに対策を練らないと。
「ぎゅーん」
「食べられないのか。ざんねん。」
気づけば、ここ魔獣の巣窟に来てから、もう一年が過ぎていた。どうしてそれが分かるかって?
それは、この場所に来てから曖昧な時間感覚を少しでも補うため、毎日、木の枝を使って岩壁に正の字を刻んでいたから。そして、その正の字が73個を超えた。
この世界では前世と同じ暦の数え方なのか分からない。でも、日々の暮らしの中で少しでも安心感を得たくて、こうして時間を数えていた。最初はただの暇つぶしだったけど…。
「よし、このくらいでいいかな」
今朝も、いつものようにねこちゃんと共に森を探索していた。見知らぬ植物や薬草を見つける度にねこちゃんに食べられるかどうかを尋ねるのが日課になっている。
そして、そのたびに「ギャンギャン」や「ぎゅーん」と答えるねこちゃんの声を聞くと、少し笑っていた。俺の言葉ほんとうにわかってる?って疑いたくなっちゃう。
俺は木の枝と葉っぱで作ったカゴに、食べられるキノコや木の実などをいっぱいに詰め込んだ。初めは、泉のある場所から岩壁を越えることをあまりしなかったが、最近では毎日のように岩壁を越え、魔獣たちが住む場所で探索をしたり、遊んだり、そのままみんなと寝たりしている。たまに縄張り争いに巻き込まれたり、仲裁したりすることもある。
今では、ほとんどの魔獣が友達だ。貴崎栄一《前世》では友達がいなかったから、こうして仲間がいるのは嬉しい。俺は俯きながらほんの少し微笑んだ。
ここでの暮らしにも大分慣れてきたと思う。けれど、最近少し心配事がある。
それは、
「グォォォォォォォーーーッ!」
「アオォォォォーン!」
「ガオォォォォォン!
突然、魔獣の咆哮が大気を震わせ、木々の葉がざわめく中、緊張感が一気に高まった。俺はその恐ろしい音の大きさに足を止め、両手で耳を塞いだ。心臓が早鐘のように打ち、背筋には冷たい汗が伝っていく。
ねこちゃんは耳を立て、音のする方向をじっと見つめている。そして、近くにいたカラスに向かって吠え、会話を交わし始めた。
「また、人間?」
「ギャンギャン」
「そっか」
ねこちゃんは俺のそばに近寄り、虎バージョンに変わり、俺の首襟をを噛んで泉へと連れ戻そうとする。
「まって、カゴが!」
俺は急いでカゴを拾い上げ、ねこちゃんに股がり急ぎ、泉へと向かった。その道中、魔獣たちの咆哮が空を切り裂いていた。
岩壁を越えて泉にたどり着いたが、俺はみんなが心配だった。
「みんな、だいじょうぶかな…」
俺は心配でたまらず、ねこちゃんを見ながらぽつりと呟いた。
最近、人間たちが頻繁に魔獣の巣窟に入り込み、魔獣狩りを行っていることが俺の心を悩ませていた。
物語の中では、魔獣の巣窟に入る人間なんていなかったはずだ。それほどまでに危険で恐ろしい場所なのに、どうして人間たちはわざわざこの場所に足を踏み入れるのだろう。
ベアルが生まれてから、魔獣たちの活動が激しくなって街を襲うようになった。
人間たちが魔獣狩りをしているのは、その復讐のためなのかもしれない。
大切な人を殺されて怒っている気持ちは、もしかしたら俺と同じなのかもしれない。
前に一度、そんな魔獣狩りをしている人間たちを止めに行こうとしたことがあった。
その時、ねこちゃんが行くのを必死で止めた。でも、友達が傷つけられるのが嫌で、ねこちゃんの制止を振り切って走り出そうとした。その瞬間、ねこちゃんの目が鋭く光り、耳をぴんと立てて、威圧感を俺に放ってきた。 低くうなる声が響き渡り、俺は少し怖くなり、その場で固まってしまった。
瞬く間に、ねこちゃんが虎バージョンになって、まるで親猫が子猫をくわえて運ぶみたいに俺の襟首を噛んで、そのまま無理やり泉まで連れ戻されてしまった。
ねこちゃんは本当に俺を心配してくれていたみたいで、泉に着いてからもなかなか俺を離してくれなかった。やっと離してもらえたと思ったら、その後もずっと牙を出してながら俺に向かって吠え続けた。
最後は、「ごめんね」ってしゅんとなって謝ったら、顔を舐めてくれて、仲直りできた。
以来、どこかで魔獣狩りが始まり、逃げることを躊躇っていたり、もたついていると必ず俺を咥えて運ぶようになってしまった。
本当は人間たちと話をして、魔獣狩りを辞めさせたい。
その代わり、俺も魔獣たちに街を襲うことを辞めるよう魔獣に言う。
そんな話をしたいんだけど、ねこちゃんがそれを絶対に許さない。俺を心配してくれているのは本当に嬉しいけど、どうにかしてこの現状を変えたい。
「はぁ…」
友達が殺されてしまうのはもう見たくないのに。
でも、俺が人間たちと直接話すのはかなり危険な行為でもある。俺の容姿を見たら、みんな怖がって、話なんて聞いてくれない。それに、黒髪黒目の子供が魔獣の巣窟で魔獣と仲良く暮らしているなんてことが国王の耳にでも入れば…。
もしかして、それを分かっているから、ねこちゃんはあんなに必死で止めてくれているのかな?
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でももし、どこかでばったり人間たちと遭遇してもいいよに対策を練らないと。
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