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魔獣の巣窟
第四夜
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「いくよ、ねこちゃん、とってこーい!」俺は晴天の下、木の棒を投げ、ねこちゃん――ホワイトタイガーに似た3本の尻尾を持つあの魔獣の子――と遊んでいる。
「ギャンギャン!」
「よしよし、ねこちゃん、えらい。」俺は魔獣の子の頭を撫でた。
どうして「ねこちゃん」と呼んでいるかというと、ここに来てから早くも2週間が過ぎた。たぶん、そのくらい。その間、ずっと俺のそばにいてくれている。「まじゅうのこ」と呼ぶのは少し長いので、名前を考えた。初めはホワイトタイガーに似ている白くてモサモサの毛から「しろくま」と呼んでみたが、「グゥゥゥ」と唸られてしまった。どうやらお気に召さなかったようだ。「うーん、どうしようかな」と考えていると、そういえばホワイトタイガーって猫科だったよね、と思い出した。「ねこちゃん!」と大きな声で呼んでみたら、嬉しそうにくるくる回っていたので、「ねこちゃん」に決めた。「この、くるくる回る姿は犬みたいなんだよな……」まぁ、いいか。
そんなこんなで魔獣の巣窟に来て2週間、俺はまだなんとか生き延びている。
「ねこちゃん、おひるごはんたべよう。」俺はねこちゃんに話しかける。
ここでの食糧は、洞窟の中に生えるきのこや木々から採れるナッツ類、小さなベリーや野イチゴだ。意外と食べ物が豊富である。おまけに、泉のようなものもあって、飲んでも平気だった。先にねこちゃんが飲んで見せてくれた。俺もその泉の水を飲んでみると、とても元気になった。
この場所を知ったのは、魔獣に食べられそうになったあの日だった。魔獣たちが俺をこの場所に案内してくれたのだ。岩壁に囲まれていて、外からは見えない。太陽の光が差し込み、豊かな自然が広がっている。
不思議な場所だ。俺一人では絶対にたどり着けなかった。道中、たくさんの強そうな魔獣たちに遭遇した。普通の冒険者なら食べられていただろう。ここにたどり着いたときのあの感動は今でも忘れられない。魔獣の巣窟にこんな精霊が住んでいそうな場所があるなんて。こういうのを何て言うんだっけ、秘境?それともオアシス?
俺はふと思った。物語の終焉の支配者も、ここで仲良くなった魔獣と共に暮らしていたのかな。
一人でいることは不安で、とてつもなく恐ろしかったと思う。そんな時、いつも一緒にいてくれた魔獣が殺されてしまったらどうなるのか。俺も今、ねこちゃんを誰かに殺されたらどうなるだろう。そんなことを考えただけで、怒り狂いそうだ。
俺もこのままいけば終焉の支配者になるのか?
俺は、不安になりねこちゃんを抱きしめた。すると、上からキラキラした果実が降ってきて、拾い上げる。
この場所には一本の大きな木がある。空高くそびえる巨大な木だ。大人数十人が手を繋いでやっと囲めるくらいの太さで、その木になる果実は宝石のように美しかった。たくさん生っていて、たまに自然と落ちてくる。それを一口食べてみたら、元気が出た。以来、落ちてきた果実を食べ続けている。
「きょうのおひるごはん、このかじつと、ほかにはなにたべよう…」
朝はベリーを食べたから、お昼はナッツを食べようかな。俺はさっそく収穫をはじめた。すると、ねこちゃんはピョーンとどこかに行ってしまった。たぶん、狩りをしに行った。
ねこちゃんには特技がある。普段は俺の膝の上に収まるぐらいの大きさなのに、狩りをするときはなんと体が大きくなるのだ。高さは2メートルくらいで、体長は4メートルくらい。初めて見たとき、驚いて腰を抜かした。「ほんとうにまじゅうだったんだね」体が大きくなっても愛くるしさは変わらなかった。
ちなみに、この大きくなる姿を虎バージョン、小さい姿を猫バージョンと呼び分けている。
「よし、これくらいでいいかな。」俺はナッツを獲り終え、木の影に腰掛けた。
収穫したナッツを口に運ぶ。なんとか、生き延びているが、少し困ったことがある。
それは、ねこちゃんが狩りから帰ってくると、白いふさふさの毛が所々赤くなっていることだ。特に口の周りは赤く、滴っている。それを見るのが少し怖い。泉で一生懸命洗い流すが、なかなか落ちない。おまけに俺も、真っ赤になる。
俺がナッツを食べ終えたころ、ねこちゃんが狩りから帰ってきた。俺は、ねこちゃんに目を見張る。
なんと、今日は口にウサギに似た魔獣を咥えて帰ってきたのだ。その魔獣を俺の前に差し出した。
「ぼ、ぼくはまじゅうをたべないよ」俺は自然の摂理すぎる光景に目を逸らしたがら答える。
「ぎゅーん」いつもとは違う鳴き声が聞こえ、視線を戻す。すると、ねこちゃんが虎バージョンの姿で耳が大きく垂れ下がっていた。本当にしょんぼりして見えて、俺は慌てて
「あっ、あっ、やっぱりたべてみようかな」と言った。
何事も挑戦だよね…。自分にそう言い聞かせて食べてみることにした。さすがに生で食べるのはきついしな。ライターやマッチがあればいいんだけど、あるわけないし。
「そうだ、ひおこしをやってみよう」そう言ってねこちゃんに向き直ると、ねこちゃんは首を傾げていた。
まずは、柔らかい木の板と硬い木を見つけよう。火口用の乾燥した草も必要だ。俺は岩壁を超えて歩き回った。すぐに目当てのものは見つかり、火起こしに取り掛かった。しかし、なかなかうまくいかない。だんだんと手に血が滲んできた。
「やっぱり、しょしんしゃじゃできないよね」こういうのは練習が必要だし。
「ごめんね、ねこちゃん。せっかく取ってきてくれたのに」俺はねこちゃんの頭を撫でながら謝る。ねこちゃんはまた首を傾げた。
「やいて、たべようとおもったんだ。」そう続けると、ねこちゃんはウサギに似た魔獣の前に行き、虎バージョンになり口から火を吐いた。魔獣は一瞬で毛がなくなり丸焼きになった。
「おぉ~」この姿なら俺も見られるし、食べられそう。
「はじめからねこちゃんにおねがいしておけばよかったんだ」やっぱりねこちゃんって魔獣なんだね。
俺は、またねこちゃんの頭を撫で、二人で仲良く魔獣を食べた。
味の方はというと、正直に言えば微妙だった。味付けは一切なしで、素材そのものの味を楽しむ料理だった。健康には良さそうだが、もう少し工夫が欲しいところだ。
「しおがほしい」そう呟き、またねこちゃんは首を傾げて
「ギャン」と一言吠えた。
「ギャンギャン!」
「よしよし、ねこちゃん、えらい。」俺は魔獣の子の頭を撫でた。
どうして「ねこちゃん」と呼んでいるかというと、ここに来てから早くも2週間が過ぎた。たぶん、そのくらい。その間、ずっと俺のそばにいてくれている。「まじゅうのこ」と呼ぶのは少し長いので、名前を考えた。初めはホワイトタイガーに似ている白くてモサモサの毛から「しろくま」と呼んでみたが、「グゥゥゥ」と唸られてしまった。どうやらお気に召さなかったようだ。「うーん、どうしようかな」と考えていると、そういえばホワイトタイガーって猫科だったよね、と思い出した。「ねこちゃん!」と大きな声で呼んでみたら、嬉しそうにくるくる回っていたので、「ねこちゃん」に決めた。「この、くるくる回る姿は犬みたいなんだよな……」まぁ、いいか。
そんなこんなで魔獣の巣窟に来て2週間、俺はまだなんとか生き延びている。
「ねこちゃん、おひるごはんたべよう。」俺はねこちゃんに話しかける。
ここでの食糧は、洞窟の中に生えるきのこや木々から採れるナッツ類、小さなベリーや野イチゴだ。意外と食べ物が豊富である。おまけに、泉のようなものもあって、飲んでも平気だった。先にねこちゃんが飲んで見せてくれた。俺もその泉の水を飲んでみると、とても元気になった。
この場所を知ったのは、魔獣に食べられそうになったあの日だった。魔獣たちが俺をこの場所に案内してくれたのだ。岩壁に囲まれていて、外からは見えない。太陽の光が差し込み、豊かな自然が広がっている。
不思議な場所だ。俺一人では絶対にたどり着けなかった。道中、たくさんの強そうな魔獣たちに遭遇した。普通の冒険者なら食べられていただろう。ここにたどり着いたときのあの感動は今でも忘れられない。魔獣の巣窟にこんな精霊が住んでいそうな場所があるなんて。こういうのを何て言うんだっけ、秘境?それともオアシス?
俺はふと思った。物語の終焉の支配者も、ここで仲良くなった魔獣と共に暮らしていたのかな。
一人でいることは不安で、とてつもなく恐ろしかったと思う。そんな時、いつも一緒にいてくれた魔獣が殺されてしまったらどうなるのか。俺も今、ねこちゃんを誰かに殺されたらどうなるだろう。そんなことを考えただけで、怒り狂いそうだ。
俺もこのままいけば終焉の支配者になるのか?
俺は、不安になりねこちゃんを抱きしめた。すると、上からキラキラした果実が降ってきて、拾い上げる。
この場所には一本の大きな木がある。空高くそびえる巨大な木だ。大人数十人が手を繋いでやっと囲めるくらいの太さで、その木になる果実は宝石のように美しかった。たくさん生っていて、たまに自然と落ちてくる。それを一口食べてみたら、元気が出た。以来、落ちてきた果実を食べ続けている。
「きょうのおひるごはん、このかじつと、ほかにはなにたべよう…」
朝はベリーを食べたから、お昼はナッツを食べようかな。俺はさっそく収穫をはじめた。すると、ねこちゃんはピョーンとどこかに行ってしまった。たぶん、狩りをしに行った。
ねこちゃんには特技がある。普段は俺の膝の上に収まるぐらいの大きさなのに、狩りをするときはなんと体が大きくなるのだ。高さは2メートルくらいで、体長は4メートルくらい。初めて見たとき、驚いて腰を抜かした。「ほんとうにまじゅうだったんだね」体が大きくなっても愛くるしさは変わらなかった。
ちなみに、この大きくなる姿を虎バージョン、小さい姿を猫バージョンと呼び分けている。
「よし、これくらいでいいかな。」俺はナッツを獲り終え、木の影に腰掛けた。
収穫したナッツを口に運ぶ。なんとか、生き延びているが、少し困ったことがある。
それは、ねこちゃんが狩りから帰ってくると、白いふさふさの毛が所々赤くなっていることだ。特に口の周りは赤く、滴っている。それを見るのが少し怖い。泉で一生懸命洗い流すが、なかなか落ちない。おまけに俺も、真っ赤になる。
俺がナッツを食べ終えたころ、ねこちゃんが狩りから帰ってきた。俺は、ねこちゃんに目を見張る。
なんと、今日は口にウサギに似た魔獣を咥えて帰ってきたのだ。その魔獣を俺の前に差し出した。
「ぼ、ぼくはまじゅうをたべないよ」俺は自然の摂理すぎる光景に目を逸らしたがら答える。
「ぎゅーん」いつもとは違う鳴き声が聞こえ、視線を戻す。すると、ねこちゃんが虎バージョンの姿で耳が大きく垂れ下がっていた。本当にしょんぼりして見えて、俺は慌てて
「あっ、あっ、やっぱりたべてみようかな」と言った。
何事も挑戦だよね…。自分にそう言い聞かせて食べてみることにした。さすがに生で食べるのはきついしな。ライターやマッチがあればいいんだけど、あるわけないし。
「そうだ、ひおこしをやってみよう」そう言ってねこちゃんに向き直ると、ねこちゃんは首を傾げていた。
まずは、柔らかい木の板と硬い木を見つけよう。火口用の乾燥した草も必要だ。俺は岩壁を超えて歩き回った。すぐに目当てのものは見つかり、火起こしに取り掛かった。しかし、なかなかうまくいかない。だんだんと手に血が滲んできた。
「やっぱり、しょしんしゃじゃできないよね」こういうのは練習が必要だし。
「ごめんね、ねこちゃん。せっかく取ってきてくれたのに」俺はねこちゃんの頭を撫でながら謝る。ねこちゃんはまた首を傾げた。
「やいて、たべようとおもったんだ。」そう続けると、ねこちゃんはウサギに似た魔獣の前に行き、虎バージョンになり口から火を吐いた。魔獣は一瞬で毛がなくなり丸焼きになった。
「おぉ~」この姿なら俺も見られるし、食べられそう。
「はじめからねこちゃんにおねがいしておけばよかったんだ」やっぱりねこちゃんって魔獣なんだね。
俺は、またねこちゃんの頭を撫で、二人で仲良く魔獣を食べた。
味の方はというと、正直に言えば微妙だった。味付けは一切なしで、素材そのものの味を楽しむ料理だった。健康には良さそうだが、もう少し工夫が欲しいところだ。
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「ギャン」と一言吠えた。
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