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1-6 寝起きは機嫌が悪いのだ!
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「レイ!いい加減に起きなさーい!」
スッパーン!!
普段俺が起こされるときよりもかなり痛めのチョップを喰らった。と、言うことはクレハにスッパーンされて目覚めたのだ!
しかし、これは文句を言わなければなるまい。あまりにも痛すぎる。気のせいか顔全体だけでなく首あたりまでヒリヒリしているような気がする。
「って、クレハ!痛いぞ!」
「起きないのが悪い!って!起きたー!」
「あぁ起きたぞ!お前のかなり痛めのチョップのおかげでって、おい!」
俺がセリフを言い終わる前にクレハが涙目で俺に抱きついてきた。よっぽど心配してくれたのだろう。ちゃんと謝らないといけないかもな
「もうっ!レイったらいきなり倒れるんだもん!わ、私……レイが居なくなっちゃったら嫌だ!こんな訳も分からない世界でだなんてレイがいないと頑張れないもん!」
俺は抱きついたクレハの頭を軽く撫でながら何度も何度も謝った。
ごめんな……ごめんな……。……クレハありがとう。
「ううん。いいの。私レイが心配で何度も何度もチョップしたから……」
「あぁ、そのくらい。って…。なぁクレハ。さっきから顔全体がヒリヒリしている気がするんだが、これは気のせいではなく、クレハが叩きまくったからなのか?」
「う、うん。たくさん叩いた。もう死んじゃうかもってくらい」
「あ~もう。まぁいいか。よし!クレハ、もういい。今回も俺がまた寝坊して、クレハが起こしに来ただけだ。な?だから元気だせ」
「うん。分かった。レイはねぼすけ。私が面倒みなきゃダメ。」
少々複雑な気持ちだがこの状況でツッコミを入れる気にはならない。そういう事にしておこう。しかし、クレハの泣き虫も昔から変わっていない。俺が面倒みないといけないな。そんなことを思っていると、俺たちの横から四季王が話しかけてきた
「レ、レイ殿?大丈夫なのか?」
「えぇ、たぶん大丈夫だと思います。ですが、俺は一体どうして倒れたんですか?」
「恐らく、こいつがレイ殿に幻を見せたのだろう。」
そういうと四季王が後ろを指差して言った。その指の差す方には、休憩の時にお世話になった兵士さんが俺たちをここまで案内してくれた兵士さんを拘束している姿があった。
「その兵士さんは?」
まだすこし声が震えたクレハが聞いた。するとお世話になった兵士さんが答えた
「は、はい!自分が先ほどの部屋の片付けが早く終わったため、すこし休もうと部屋に戻ろうとした途中この部屋の前を歩いたのですが、その時にこの兵士が何やら怪しげな魔法を唱えていたのです。魔法の内容がどうであれ、王宮の中で魔法を使うなど兵士がするべきではないと注意しに行こうと思ったのですがその時、レイ様が部屋で倒れてしまっているのが見えましたので、もしかしたら目の前にいる兵士がレイ様に危害を加えたのではと思い、拘束した次第であります!」
つまり俺はその兵士に幻を見せられていたのだ。
話を聞くとあの幻をずっと見ていたら死んでいた可能性もあったらしい。きっと夢の中で見た3倍狼に喰われて死ぬと言う事だろう。そう考えるとあの時あの場から離れたのは正解だったという事だ。
しかし、夢の中でいくら逃げ回ろうといつかは見つかってやられていただろう。そう考えるとすぐに起こしてくれたクレハに感謝をしなければならない。
「しかし、レイ殿?どうやって生き延びたというのじゃ?こやつから聞く限り一度この魔法をかけられると自力で目が覚める事は無いらしい。それに、その幻の中では身動きが取れなくなり、獣に喰われてしまうらしいのじゃ。そんな呪いの様な魔法からどうやって抜け出したというのじゃ」
「え、とりあえず、でかい狼を見かけて危ないと思ったから音を立てない様にその場を離れたら、それ以降奴らは追ってきませんでした。そして、しばらく歩いているとクレハにスッパーンされて目が覚めたっていう流れだと思います。」
そう言いながら俺がクレハの頭を撫でていると、周りの人が全員黙り込んだ。
「あれ、俺なんか変な事言ったか?」
「ううん。たぶん変な事言ってないと思う。あるとしたら、幻の中では普通、身動き取れなくなるはずなのに普通に動いてた事くらい。」
「あっ」
言われてみれば四季王は、身動きが取れなくなってから獣に喰われるとかなんとか……しかし俺は普通に動いてたし、特に行動に制限があったわけでもなく、少しおかしいが五感もしっかりと働いていたと思う。
「という事はレイ殿は幻の中でも自由に動けた、という事なのか?」
「えぇ。かなり楽に行動できましたね。」
俺が答えると再び辺りに静寂が訪れる。やはり俺は変な事を言っているのだろうか。そう考えていると、拘束されたままの兵士が喋りだした。
「デタラメ言ってんじゃねぇ!俺の幻の中で動けるやつなんているはずないだろうが!」
既に兵士としての面影はもう無くなっている。今はもう兵士ではなく、狂人にも見えてしまう。
しかし何故だろう。あの兵士を見ていると自然と怒りが湧き上がってくる。当然だ。俺を殺しかけた奴なんだ。しかもクレハに心配をかけさせた元凶でもある。
そういう奴には お仕置きが必要だ。
「魔王様にお借りしたこの力!この力に屈しない者など、いるわけが無い!」
俺は奴へのお仕置きの意を込めて本気の殺気を包み隠さず奴へと向けた。
その後、クレハに少し合図をして、2人で同時に立ち上がる。そして2人で手を繋いだまま、兵士の方へと近づく。
「なぁ、じゃあ、なんで俺が今こうやって立っていられるのか説明できるか?」
すると、その兵士は急に何か恐ろしいものでも見るかの様な顔でこっちを見てきた。
「私がレイを起こしたから」
クレハにも俺の怒りが伝わったのか、俺には見せた事もない様な形相で兵士を睨んでいた。
「あぁそうだ。じゃ次だ。俺がなんでこんなにも怒っているか分かるか?」
「レイは私が好き。私もレイが好き。お互い居なくなったら嫌。レイが怒っているのは私に悲しい思いをさせたから。そして、私と会えなくなるかもしれない事をしたから」
「あぁそうだ。加えるならばもう1つ。クレハを泣かせたからだ。」
そう言いながら、俺たちはだんだんと兵士に近づいていく。
歩いている内に俺とクレハの顔は険しくなっているのだろう。兵士の後ろにいる他の人達も俺たちの顔を見て恐怖を浮かべている。
「よし、じゃあ最後だ。なんでクレハが俺を起こせたか分かるか?」
そう言って俺は右手の指で鉄砲を作り、兵士のおでこに指を当てる。
そして俺はクレハに合図を送り2人で意識を集中させる。すると俺の手に青白い電気が集まる。
それを見た兵士は恐怖し声を上げようとするが、恐怖による極度の緊張のせいで声も出ない。
俺たち2人はお互い目を見合わせると再び兵士の方を見て口を開く。
そしてニッコリ笑って答えてやる。
「「慣れだよ」」
その瞬間、兵士の体に電気が走り、兵士は気絶しただろう。長い間拘束してくれていたお世話になった兵士さんにもありがとうと軽く会釈をして、四季王の元へと向かう。
「れ、レイ殿。今のは一体……」
そう言われ2人で目を見合わせるとお互いの恐ろしい顔に驚き同じタイミングで笑い出す。
「ちょっ!レイ、顔こわいよ~」
「クレハこそ、鬼みたいな顔してたぞ~」
スッパーン!
「女の子にそんな事言うんじゃありません! えへへ~♪」
お互いに笑顔が戻った事を確認すると四季王の方へ体を向き直す。
「勝手な事をしてしまってすみません。もしかしたらあの兵士、死んじゃったかもしれません。」
四季王は未だ状況が理解できていない様であたふたしている。
「と、とりあえずそれは良いのだ。レイ殿クレハ殿に危害を加えたとして、永久牢獄か死刑は免れないからな。しかし、今使ったのは魔法……なのか?」
さっき俺の思いつきで使ったのは電気、いや、雷魔法とでも言うべきなのだろうか?正直に言ってしまうと、雷をイメージしながらやっただけで、どうやってさっきの魔法を構成したのかは自分でも分からない。
「すみません。大体が感覚でやったので、どうやって出したのかは説明できませんが、一応、電気とか雷とかをイメージしてやりました。」
「私は静電気とかをイメージしてやったよ?雷だと規模が大きいからもし本当に雷きちゃったら危ないかなって思ったの。」
「なるほど……静電気か。となると冬のイメージか」
するとまた四季王が不思議そうな顔で悩んでいた
「カミナリや、セイデンキ?とは一体どんな物なのだ?」
やはり、通じていなかった。となるとこの世界には雷や電気と言った存在がなさそうだ。
そう考えると今後雷魔法は使える様になった方がお得そうだ。しかし、雷や静電気をどうやって伝えようか……
「あっ!兵士さーん!メモ帳に書いてない?雷とか静電気とか!」
「は、はい!少し探してみます!四季王も少々お待ちください」
なるほど。さすがクレハ。頭の回転が早い様だ。兵士さんは再びメモ帳をめくって言葉を探している。きっと兵士さんにとってあのメモ帳は辞書の様なものだろうな。自分で全て調べているのだろうか。
「あ、ありました!どうぞ四季王。こちらになります。」
自分よりも王を最初に。か、やっぱり真面目な兵士さんだな。
「なるほど……電気というのはレイ殿の世界では当たり前にある存在なのだな。この様なものはこの世界には存在しない。つまり、レイ殿やクレハ殿にしか使えない魔法が見つかったという事じゃ。」
「ところで四季王……」
兵士さんが何やら四季王に聞いていた。途中で1人で寝転がっている兵士を指差した事から察するに兵士についてだろう。まぁそこはこの世界の王様である四季王に決めてもらうのが一番だろう。しばらくして話し終わったのか、すぐに周りの兵士を集めて寝ている兵士を連れて行ってしまった。
「あ、兵士さんに名前聞きそびれちゃったね」
クレハに言われてから思い出したが、名前を聞くのを忘れていた。まぁ、1日に二回も会えたんだ。きっと他の日でも会えるだろう。
「まぁ、次会ったときこそ、落ち着いた状況で名前を聞くことにしよう。しかし、疲れたな。朝から寝てばかりな気がするがかなり疲れた。」
「レイ殿?今日はもう解散とするか?ダンジョン攻略の話はまた今度でも良い。今はレイ殿の体調が最優先だからな」
「では、お言葉に甘えさせてもらってもいいでしょうか。クレハも少し疲れただろう。」
「うん。なんだか寝ちゃいそう」
「そうだレイ殿。クレハ殿。今更聞くのも変だが、一応聞いておく。このままこの世界に滞在するか?」
俺はクレハを泣かせた奴をぶっ飛ばす。俺にとってはそれだけの理由で十分だ。
クレハは、俺を殺しかけた奴にお返しをしてやりたいとでも思っている事だろう。2人でお互いに目で確認しなくても確実に答えは決まっている。
この世界に滞在して、いつか魔王とかいう奴をぶっ飛ばす。
「「はい!これからよろしくお願いします!」」
こうして俺たちの異世界生活が始まった。
俺たちはこれから魔王を倒すための訓練や魔法の練習。戦術の勉強などいろいろな事をしなければならないだろう。しかし、俺とクレハが合わさればどんな事でもすぐ終わる。俺はこの十何年間クレハと一緒にいて身を持って知っている。ただ、俺だけでは何もできない。先程もクレハの力を借りたからこそ使えた魔法だ。
つまり俺はただの無能力者。しかし、クレハと一緒なら最強だ!
スッパーン!!
普段俺が起こされるときよりもかなり痛めのチョップを喰らった。と、言うことはクレハにスッパーンされて目覚めたのだ!
しかし、これは文句を言わなければなるまい。あまりにも痛すぎる。気のせいか顔全体だけでなく首あたりまでヒリヒリしているような気がする。
「って、クレハ!痛いぞ!」
「起きないのが悪い!って!起きたー!」
「あぁ起きたぞ!お前のかなり痛めのチョップのおかげでって、おい!」
俺がセリフを言い終わる前にクレハが涙目で俺に抱きついてきた。よっぽど心配してくれたのだろう。ちゃんと謝らないといけないかもな
「もうっ!レイったらいきなり倒れるんだもん!わ、私……レイが居なくなっちゃったら嫌だ!こんな訳も分からない世界でだなんてレイがいないと頑張れないもん!」
俺は抱きついたクレハの頭を軽く撫でながら何度も何度も謝った。
ごめんな……ごめんな……。……クレハありがとう。
「ううん。いいの。私レイが心配で何度も何度もチョップしたから……」
「あぁ、そのくらい。って…。なぁクレハ。さっきから顔全体がヒリヒリしている気がするんだが、これは気のせいではなく、クレハが叩きまくったからなのか?」
「う、うん。たくさん叩いた。もう死んじゃうかもってくらい」
「あ~もう。まぁいいか。よし!クレハ、もういい。今回も俺がまた寝坊して、クレハが起こしに来ただけだ。な?だから元気だせ」
「うん。分かった。レイはねぼすけ。私が面倒みなきゃダメ。」
少々複雑な気持ちだがこの状況でツッコミを入れる気にはならない。そういう事にしておこう。しかし、クレハの泣き虫も昔から変わっていない。俺が面倒みないといけないな。そんなことを思っていると、俺たちの横から四季王が話しかけてきた
「レ、レイ殿?大丈夫なのか?」
「えぇ、たぶん大丈夫だと思います。ですが、俺は一体どうして倒れたんですか?」
「恐らく、こいつがレイ殿に幻を見せたのだろう。」
そういうと四季王が後ろを指差して言った。その指の差す方には、休憩の時にお世話になった兵士さんが俺たちをここまで案内してくれた兵士さんを拘束している姿があった。
「その兵士さんは?」
まだすこし声が震えたクレハが聞いた。するとお世話になった兵士さんが答えた
「は、はい!自分が先ほどの部屋の片付けが早く終わったため、すこし休もうと部屋に戻ろうとした途中この部屋の前を歩いたのですが、その時にこの兵士が何やら怪しげな魔法を唱えていたのです。魔法の内容がどうであれ、王宮の中で魔法を使うなど兵士がするべきではないと注意しに行こうと思ったのですがその時、レイ様が部屋で倒れてしまっているのが見えましたので、もしかしたら目の前にいる兵士がレイ様に危害を加えたのではと思い、拘束した次第であります!」
つまり俺はその兵士に幻を見せられていたのだ。
話を聞くとあの幻をずっと見ていたら死んでいた可能性もあったらしい。きっと夢の中で見た3倍狼に喰われて死ぬと言う事だろう。そう考えるとあの時あの場から離れたのは正解だったという事だ。
しかし、夢の中でいくら逃げ回ろうといつかは見つかってやられていただろう。そう考えるとすぐに起こしてくれたクレハに感謝をしなければならない。
「しかし、レイ殿?どうやって生き延びたというのじゃ?こやつから聞く限り一度この魔法をかけられると自力で目が覚める事は無いらしい。それに、その幻の中では身動きが取れなくなり、獣に喰われてしまうらしいのじゃ。そんな呪いの様な魔法からどうやって抜け出したというのじゃ」
「え、とりあえず、でかい狼を見かけて危ないと思ったから音を立てない様にその場を離れたら、それ以降奴らは追ってきませんでした。そして、しばらく歩いているとクレハにスッパーンされて目が覚めたっていう流れだと思います。」
そう言いながら俺がクレハの頭を撫でていると、周りの人が全員黙り込んだ。
「あれ、俺なんか変な事言ったか?」
「ううん。たぶん変な事言ってないと思う。あるとしたら、幻の中では普通、身動き取れなくなるはずなのに普通に動いてた事くらい。」
「あっ」
言われてみれば四季王は、身動きが取れなくなってから獣に喰われるとかなんとか……しかし俺は普通に動いてたし、特に行動に制限があったわけでもなく、少しおかしいが五感もしっかりと働いていたと思う。
「という事はレイ殿は幻の中でも自由に動けた、という事なのか?」
「えぇ。かなり楽に行動できましたね。」
俺が答えると再び辺りに静寂が訪れる。やはり俺は変な事を言っているのだろうか。そう考えていると、拘束されたままの兵士が喋りだした。
「デタラメ言ってんじゃねぇ!俺の幻の中で動けるやつなんているはずないだろうが!」
既に兵士としての面影はもう無くなっている。今はもう兵士ではなく、狂人にも見えてしまう。
しかし何故だろう。あの兵士を見ていると自然と怒りが湧き上がってくる。当然だ。俺を殺しかけた奴なんだ。しかもクレハに心配をかけさせた元凶でもある。
そういう奴には お仕置きが必要だ。
「魔王様にお借りしたこの力!この力に屈しない者など、いるわけが無い!」
俺は奴へのお仕置きの意を込めて本気の殺気を包み隠さず奴へと向けた。
その後、クレハに少し合図をして、2人で同時に立ち上がる。そして2人で手を繋いだまま、兵士の方へと近づく。
「なぁ、じゃあ、なんで俺が今こうやって立っていられるのか説明できるか?」
すると、その兵士は急に何か恐ろしいものでも見るかの様な顔でこっちを見てきた。
「私がレイを起こしたから」
クレハにも俺の怒りが伝わったのか、俺には見せた事もない様な形相で兵士を睨んでいた。
「あぁそうだ。じゃ次だ。俺がなんでこんなにも怒っているか分かるか?」
「レイは私が好き。私もレイが好き。お互い居なくなったら嫌。レイが怒っているのは私に悲しい思いをさせたから。そして、私と会えなくなるかもしれない事をしたから」
「あぁそうだ。加えるならばもう1つ。クレハを泣かせたからだ。」
そう言いながら、俺たちはだんだんと兵士に近づいていく。
歩いている内に俺とクレハの顔は険しくなっているのだろう。兵士の後ろにいる他の人達も俺たちの顔を見て恐怖を浮かべている。
「よし、じゃあ最後だ。なんでクレハが俺を起こせたか分かるか?」
そう言って俺は右手の指で鉄砲を作り、兵士のおでこに指を当てる。
そして俺はクレハに合図を送り2人で意識を集中させる。すると俺の手に青白い電気が集まる。
それを見た兵士は恐怖し声を上げようとするが、恐怖による極度の緊張のせいで声も出ない。
俺たち2人はお互い目を見合わせると再び兵士の方を見て口を開く。
そしてニッコリ笑って答えてやる。
「「慣れだよ」」
その瞬間、兵士の体に電気が走り、兵士は気絶しただろう。長い間拘束してくれていたお世話になった兵士さんにもありがとうと軽く会釈をして、四季王の元へと向かう。
「れ、レイ殿。今のは一体……」
そう言われ2人で目を見合わせるとお互いの恐ろしい顔に驚き同じタイミングで笑い出す。
「ちょっ!レイ、顔こわいよ~」
「クレハこそ、鬼みたいな顔してたぞ~」
スッパーン!
「女の子にそんな事言うんじゃありません! えへへ~♪」
お互いに笑顔が戻った事を確認すると四季王の方へ体を向き直す。
「勝手な事をしてしまってすみません。もしかしたらあの兵士、死んじゃったかもしれません。」
四季王は未だ状況が理解できていない様であたふたしている。
「と、とりあえずそれは良いのだ。レイ殿クレハ殿に危害を加えたとして、永久牢獄か死刑は免れないからな。しかし、今使ったのは魔法……なのか?」
さっき俺の思いつきで使ったのは電気、いや、雷魔法とでも言うべきなのだろうか?正直に言ってしまうと、雷をイメージしながらやっただけで、どうやってさっきの魔法を構成したのかは自分でも分からない。
「すみません。大体が感覚でやったので、どうやって出したのかは説明できませんが、一応、電気とか雷とかをイメージしてやりました。」
「私は静電気とかをイメージしてやったよ?雷だと規模が大きいからもし本当に雷きちゃったら危ないかなって思ったの。」
「なるほど……静電気か。となると冬のイメージか」
するとまた四季王が不思議そうな顔で悩んでいた
「カミナリや、セイデンキ?とは一体どんな物なのだ?」
やはり、通じていなかった。となるとこの世界には雷や電気と言った存在がなさそうだ。
そう考えると今後雷魔法は使える様になった方がお得そうだ。しかし、雷や静電気をどうやって伝えようか……
「あっ!兵士さーん!メモ帳に書いてない?雷とか静電気とか!」
「は、はい!少し探してみます!四季王も少々お待ちください」
なるほど。さすがクレハ。頭の回転が早い様だ。兵士さんは再びメモ帳をめくって言葉を探している。きっと兵士さんにとってあのメモ帳は辞書の様なものだろうな。自分で全て調べているのだろうか。
「あ、ありました!どうぞ四季王。こちらになります。」
自分よりも王を最初に。か、やっぱり真面目な兵士さんだな。
「なるほど……電気というのはレイ殿の世界では当たり前にある存在なのだな。この様なものはこの世界には存在しない。つまり、レイ殿やクレハ殿にしか使えない魔法が見つかったという事じゃ。」
「ところで四季王……」
兵士さんが何やら四季王に聞いていた。途中で1人で寝転がっている兵士を指差した事から察するに兵士についてだろう。まぁそこはこの世界の王様である四季王に決めてもらうのが一番だろう。しばらくして話し終わったのか、すぐに周りの兵士を集めて寝ている兵士を連れて行ってしまった。
「あ、兵士さんに名前聞きそびれちゃったね」
クレハに言われてから思い出したが、名前を聞くのを忘れていた。まぁ、1日に二回も会えたんだ。きっと他の日でも会えるだろう。
「まぁ、次会ったときこそ、落ち着いた状況で名前を聞くことにしよう。しかし、疲れたな。朝から寝てばかりな気がするがかなり疲れた。」
「レイ殿?今日はもう解散とするか?ダンジョン攻略の話はまた今度でも良い。今はレイ殿の体調が最優先だからな」
「では、お言葉に甘えさせてもらってもいいでしょうか。クレハも少し疲れただろう。」
「うん。なんだか寝ちゃいそう」
「そうだレイ殿。クレハ殿。今更聞くのも変だが、一応聞いておく。このままこの世界に滞在するか?」
俺はクレハを泣かせた奴をぶっ飛ばす。俺にとってはそれだけの理由で十分だ。
クレハは、俺を殺しかけた奴にお返しをしてやりたいとでも思っている事だろう。2人でお互いに目で確認しなくても確実に答えは決まっている。
この世界に滞在して、いつか魔王とかいう奴をぶっ飛ばす。
「「はい!これからよろしくお願いします!」」
こうして俺たちの異世界生活が始まった。
俺たちはこれから魔王を倒すための訓練や魔法の練習。戦術の勉強などいろいろな事をしなければならないだろう。しかし、俺とクレハが合わさればどんな事でもすぐ終わる。俺はこの十何年間クレハと一緒にいて身を持って知っている。ただ、俺だけでは何もできない。先程もクレハの力を借りたからこそ使えた魔法だ。
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