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1-14 この世界でも夕焼けは綺麗だね
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四季王に旅に出ますとお城を飛び出して数時間。空も暗くなって夕暮れ時を迎えていた。私たちは、結局串焼き屋のお父さんの身内がやっているという武具屋さんが閉店するまでの間の数時間、ひたすら店を見て回っているだけだった。
それでも、自分達の知らない世界の商店街で、いままでゲームの中でしか見たことの無い格好をした人達の中を歩くのはたのしい経験になった
数時間の間歩いていても、例の兵士さんが言っていたお店を見つけることは出来ず、時間的にもそろそろ武具屋の方に戻ることにしました
「さすがに店の名前も知らずに、王国で1番店が多い場所で探すのは無理があったな」
「そうだね…。串焼き屋のお父さんについてくる時でも、結構な距離あったから無計画に1つのお店を探すのは無茶だったかも」
異世界に来ても、私たちの他愛ない会話は変わらない。普段学校では、みんなのリーダーみたいにさせてもらってる私だけど、レイの前だと何故かバカっぽくなったり、突然変なことで語りだしたりする時がある。それでもレイは私の話に付き合ってくれる。幼なじみってだけじゃなくて、本当に感謝してるよ。レイ。
「なぁクレハ。」
突然レイが足を止めて私を呼んだ。返事をしながらレイの方を見ると、綺麗にオレンジ色に染った空を見ていた。
「この世界でも夕焼けは綺麗だな。」
「うん。そうだね。懐かしいなぁ」
私にとっても、レイにとっても。夕焼け空は特別な存在。それはどんな世界に来ても変わらない物。お城にいる間は外を見る機会が少なかったから、空や太陽も見ていなかったけど、こうやって改めて見てみると、この世界の太陽もとても暖かい。でも、夕暮れ時はほんの一瞬だけ。早く武具屋に戻らないと、暗くなって雰囲気の変わった街で迷子になるかも。
「さっレイ。早くお父さんの所に戻ろう!」
「そうだな。久しぶりに走って競走でもするか?」
「よーし!手加減はしないからねー!」
「じゃあ~初め!」
レイはそう言いながら、既に私の2メートルほど先にいた。うん。フライングで反則!こらまてー!
武具屋に着く頃には既に空は暗くなっていて、当然私もレイも息は上がっていた。走ってくる時に見えた店の行列も今ではもう少なくなっていて、そろそろ閉店時間であることを察せられた。
ちなみに、私たちを最初にここまで案内してくれた串焼き屋のお父さんは、お店の裏口付近で美味しそうな香りをさせながら、屋台でまた商売をしていた。
「た、ただ今戻りました…はぁ…ア゙ア゙ア゙」
「だ、大丈夫かね弟さんや…。お姉さんもそんなに慌ててどうしたんだい」
レイは戻ってきた挨拶をお父さんにした後にすぐにとんでもない声で唸っていた。当然それを見たお父さんは何事かと心配してくれましたけど……
「あの私たち別に姉弟じゃないです…!」
「おぉ、そうだったのか!そ、それはすまない。仲がいいものでてっきり姉弟だと」
「いや大丈夫です。俺たち幼なじみなんで小さい時もよく姉弟って言われてたんで慣れてますんで」
走ってきた理由を説明したら大きな声で笑われた。他にもいろいろと見つけた店の質問をしたりしていると、次第に息も元に戻ってきた。
「そういえば、お店の方はどうですか?並んでる人はもういなさそうでしたけど」
「あぁ。今いる客で最後らしい。終わったらこっちに来るように言ってあるから、のんびり待っているといいよ。おっと、そういえば自己紹介が遅れたね。俺はダイン・ウッドだ。ダインと読んでくれ。」
そういえば、また名前を聞くのを忘れるところだったよ…。あぶないあぶない。私たちは人の名前を聞くのを忘れる癖があるかもだし、ちゃんと最初に名乗るようにしなきゃ。
「俺はレイだ。コバヤシ・レイ。聞きなれない名前かも知れないが、レイの方が名前で、コバヤシというのは家族共通の名前。少しややこしいかもしれないが、レイで覚えてくれれば大丈夫だ」
「私はクレハです。コヒナタ・クレハです。レイと同じように変わったタイプの名前なのは、理解しています。レイと同じようにクレハで呼んでもらえれば大丈夫です。」
私たちの名前に少し困惑している様子が見えるけど、名前を偽る訳にはいかないし、もしもの時はお城で作ってもらったライセンスを私が見せながら説明したらいいのかも。レイのライセンス見せながらだと、複数持ちってことで変な問題起きちゃうかもだし。
「ほう。名前があとからくるタイプなのか…。まぁ変に追求はしないでおくよ。まぁ、もう暫くはそこで座って待っててくれ。俺はまた屋台の片付けでもしてくるよ」
ダインさんが裏口から出ていくのを見送ったあと、改めて部屋を観察してみると、全体的に家が木材で出来ていることが確認できた。とは言っても、全てが木材ではないらしく、所々に石材らしき装飾が見える。さすがにお城のように宙に浮く炎はないみたい。光源が気になって天井を見てみると、ガラス瓶のような容器の中で不規則に動く小さな光の塊を発見した。
ふとレイに声をかけようと思ってレイに視線を送ったけど、レイはまた自分の手をみていて、まさに心ここに在らず。
レイったらさっきから何考えてるのかな…
それでも、自分達の知らない世界の商店街で、いままでゲームの中でしか見たことの無い格好をした人達の中を歩くのはたのしい経験になった
数時間の間歩いていても、例の兵士さんが言っていたお店を見つけることは出来ず、時間的にもそろそろ武具屋の方に戻ることにしました
「さすがに店の名前も知らずに、王国で1番店が多い場所で探すのは無理があったな」
「そうだね…。串焼き屋のお父さんについてくる時でも、結構な距離あったから無計画に1つのお店を探すのは無茶だったかも」
異世界に来ても、私たちの他愛ない会話は変わらない。普段学校では、みんなのリーダーみたいにさせてもらってる私だけど、レイの前だと何故かバカっぽくなったり、突然変なことで語りだしたりする時がある。それでもレイは私の話に付き合ってくれる。幼なじみってだけじゃなくて、本当に感謝してるよ。レイ。
「なぁクレハ。」
突然レイが足を止めて私を呼んだ。返事をしながらレイの方を見ると、綺麗にオレンジ色に染った空を見ていた。
「この世界でも夕焼けは綺麗だな。」
「うん。そうだね。懐かしいなぁ」
私にとっても、レイにとっても。夕焼け空は特別な存在。それはどんな世界に来ても変わらない物。お城にいる間は外を見る機会が少なかったから、空や太陽も見ていなかったけど、こうやって改めて見てみると、この世界の太陽もとても暖かい。でも、夕暮れ時はほんの一瞬だけ。早く武具屋に戻らないと、暗くなって雰囲気の変わった街で迷子になるかも。
「さっレイ。早くお父さんの所に戻ろう!」
「そうだな。久しぶりに走って競走でもするか?」
「よーし!手加減はしないからねー!」
「じゃあ~初め!」
レイはそう言いながら、既に私の2メートルほど先にいた。うん。フライングで反則!こらまてー!
武具屋に着く頃には既に空は暗くなっていて、当然私もレイも息は上がっていた。走ってくる時に見えた店の行列も今ではもう少なくなっていて、そろそろ閉店時間であることを察せられた。
ちなみに、私たちを最初にここまで案内してくれた串焼き屋のお父さんは、お店の裏口付近で美味しそうな香りをさせながら、屋台でまた商売をしていた。
「た、ただ今戻りました…はぁ…ア゙ア゙ア゙」
「だ、大丈夫かね弟さんや…。お姉さんもそんなに慌ててどうしたんだい」
レイは戻ってきた挨拶をお父さんにした後にすぐにとんでもない声で唸っていた。当然それを見たお父さんは何事かと心配してくれましたけど……
「あの私たち別に姉弟じゃないです…!」
「おぉ、そうだったのか!そ、それはすまない。仲がいいものでてっきり姉弟だと」
「いや大丈夫です。俺たち幼なじみなんで小さい時もよく姉弟って言われてたんで慣れてますんで」
走ってきた理由を説明したら大きな声で笑われた。他にもいろいろと見つけた店の質問をしたりしていると、次第に息も元に戻ってきた。
「そういえば、お店の方はどうですか?並んでる人はもういなさそうでしたけど」
「あぁ。今いる客で最後らしい。終わったらこっちに来るように言ってあるから、のんびり待っているといいよ。おっと、そういえば自己紹介が遅れたね。俺はダイン・ウッドだ。ダインと読んでくれ。」
そういえば、また名前を聞くのを忘れるところだったよ…。あぶないあぶない。私たちは人の名前を聞くのを忘れる癖があるかもだし、ちゃんと最初に名乗るようにしなきゃ。
「俺はレイだ。コバヤシ・レイ。聞きなれない名前かも知れないが、レイの方が名前で、コバヤシというのは家族共通の名前。少しややこしいかもしれないが、レイで覚えてくれれば大丈夫だ」
「私はクレハです。コヒナタ・クレハです。レイと同じように変わったタイプの名前なのは、理解しています。レイと同じようにクレハで呼んでもらえれば大丈夫です。」
私たちの名前に少し困惑している様子が見えるけど、名前を偽る訳にはいかないし、もしもの時はお城で作ってもらったライセンスを私が見せながら説明したらいいのかも。レイのライセンス見せながらだと、複数持ちってことで変な問題起きちゃうかもだし。
「ほう。名前があとからくるタイプなのか…。まぁ変に追求はしないでおくよ。まぁ、もう暫くはそこで座って待っててくれ。俺はまた屋台の片付けでもしてくるよ」
ダインさんが裏口から出ていくのを見送ったあと、改めて部屋を観察してみると、全体的に家が木材で出来ていることが確認できた。とは言っても、全てが木材ではないらしく、所々に石材らしき装飾が見える。さすがにお城のように宙に浮く炎はないみたい。光源が気になって天井を見てみると、ガラス瓶のような容器の中で不規則に動く小さな光の塊を発見した。
ふとレイに声をかけようと思ってレイに視線を送ったけど、レイはまた自分の手をみていて、まさに心ここに在らず。
レイったらさっきから何考えてるのかな…
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