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旧作
帰還
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4人は気付けば葵の部屋にいる。
カイにとっては、初めての妖の世界だったというのに、大変な思い出になってしまっただろう。
葵は妖の世界の公園で何があったのか、さとり達が何に襲われてしまったのかをさとりに詳しく説明をしてもらおうとしているところだ。
「さて、さとり。詳しく説明してもらっても良いですか?」
「あぁ。私たちはあの後、どうやらあの公園に最初からいた不完全な妖怪に襲われたみたいなんだ。
しかし、私たちが見たあの状態ではあんな力を出せるようには見えなかった。なのに、奴は私たちを完全に囲ってしまうほどの霧を出せたんだ。ただ天狗の風は防ぎきれなかったようで、間一髪。逃げ切ったって訳だ。」
カイにはまだ、不完全な妖怪がどういった存在なのか理解ができず、すぐに質問した。
「つまり、僕たちが最初に見たまだ妖怪じゃないのが妖怪になって、悪い妖怪になっちゃったっていう事なの?」
「いえ、それならまだ良い方です。今回のは少しタチが悪いようで、不完全な妖怪のまま暴れているようですね。ですが、私たちが見た状態からでは、いくら不完全な状態で力をうまく操れなかったとしても、元の力があれほど出せるとは思えません。」
「えーっと、どういう事?不完全な妖怪は力をうまく操れないから暴走しちゃうっていう事なのかな?」
「はい。その通りです。我々が呼ぶ不完全な妖怪とは、妖怪になる際に得る力をうまく操る事ができず、暴走してしまうという状態の事を表します。妖怪になる際の力は、徐々に力がつくタイプもあれば、突然大きな力がつくタイプがあります。徐々に力がつくタイプであれば一年もあればしっかりとした妖怪になります。突然力がつくタイプでだとしても、半年以上はかかります。
なので、さとり達を襲ったのはどちらのタイプにせよ、イレギュラーな存在という事です。」
「なるほど……」
「なぁ、もしかしたら過去に起こったこれと同じ事件と関連性があるのか?」
過去に起こったこれ。というのは、今回の様に妖怪になる際に得た力を制御できず、暴走してしまったと思われる事例で、あたり一面が霧に覆われ霧が晴れた頃にはその霧がかかっていた部分だけがボロボロの街になってしまっていたというものだ。
「さぁ。今の状況でそれを判断するのは難しいですね。そういえば、その2人を襲った妖怪はどの様な姿をしていましたか?」
「それがだな……分からないんだ。」
「と言うと?」
「実は、一度、風であたりの霧をすべて吹き飛ばしてみたんだが、その時に敵の姿が全くなかったんだ。でもな?その後すぐに霧が戻ったと思ったら、いきなりとんでもない数の気配を感じたんだ。そしてその後に飛んできたものが……霊弾だ。」
その言葉を聞いた瞬間葵は驚いた。それは当然の事でもあった。霊弾というのは高位の妖怪にしか扱えず力のコントロールがとても難しいものなのだ。
これが何を意味するのかは分かる通り。天狗が感じたとんでもない数の気配の中に高位の妖怪が混ざっているかもしれないという事だった。
「まさか、そんな事があり得るのですか……。となると私たちだけでは手に負えない可能性もありますね。しかし、どうしましょうか。私達に相談する当てなんてありませんし……」
「戦えば良いじゃない」
しばらく間が空いた後、葵の左目が赤く光りだし、そこから声がした。さとりにとってはとても聞き覚えのある声だ。その声を聞くとさとりは警戒をし始めた。声に聞き覚えのないカイと天狗は驚き戸惑っている。
「戦えば良いじゃない。それ以外に方法あるの?」
「うるさい……妖怪。」
「なぁに?聞こえなかったよ?」
「うるさい。下がれよ妖怪。」
「名前を言ってくれなきゃ分からないなぁ~」
「お前は葵じゃない。葵の中の妖怪。ただの妖怪。それがお前の名前だ。」
「ひっどいなぁ~ボクは君たちを助けてあげようと思っているんだよぉ~?」
「嘘だな。何度お前が葵を乗っ取ろうとして葵が苦しんだ事か、忘れるわけがないだろう。」
「でもね?君たちにはボクに頼る以外に方法はないんだよ?だって君たち弱いんだもん。それに、ボクは今、君にかけられたカギのせいで力は使えないんだよ?それなのに、どうしてボクがこうやって喋りに出てこれたのか、わかる?」
「ま、まさか葵か?」
「えぇ、私がさとりの話を聞いていて、どうしようもないなと思った時に1つ思いついたんです。もう1人の私、つまりこの子に頼ってみるのはどうかな、と。」
「バカを言うな!こいつはお前を何度も騙そうとしてきたんだぞ!」
「ですが。今はさとりのおかげでこの子は力を使えません。ただ、どうしたら倒せるのか、方法は知っているはずです。なので、それを聞いてみようかと思っているのですが、どうでしょう……」
「それくらいなら……でも、1つ約束させてくれ。なぁ妖怪もし、お前が葵を操ろうとしたら即、葵の左目を潰してそれを止める。そのくらいの覚悟で私はいる。お前もそのくらいの覚悟を持ってやれ。」
「うんうん。分かったよ~♪ってなわけで!そこのお兄ちゃんもおっちゃんもよろしくね♪」
カイにとっては、初めての妖の世界だったというのに、大変な思い出になってしまっただろう。
葵は妖の世界の公園で何があったのか、さとり達が何に襲われてしまったのかをさとりに詳しく説明をしてもらおうとしているところだ。
「さて、さとり。詳しく説明してもらっても良いですか?」
「あぁ。私たちはあの後、どうやらあの公園に最初からいた不完全な妖怪に襲われたみたいなんだ。
しかし、私たちが見たあの状態ではあんな力を出せるようには見えなかった。なのに、奴は私たちを完全に囲ってしまうほどの霧を出せたんだ。ただ天狗の風は防ぎきれなかったようで、間一髪。逃げ切ったって訳だ。」
カイにはまだ、不完全な妖怪がどういった存在なのか理解ができず、すぐに質問した。
「つまり、僕たちが最初に見たまだ妖怪じゃないのが妖怪になって、悪い妖怪になっちゃったっていう事なの?」
「いえ、それならまだ良い方です。今回のは少しタチが悪いようで、不完全な妖怪のまま暴れているようですね。ですが、私たちが見た状態からでは、いくら不完全な状態で力をうまく操れなかったとしても、元の力があれほど出せるとは思えません。」
「えーっと、どういう事?不完全な妖怪は力をうまく操れないから暴走しちゃうっていう事なのかな?」
「はい。その通りです。我々が呼ぶ不完全な妖怪とは、妖怪になる際に得る力をうまく操る事ができず、暴走してしまうという状態の事を表します。妖怪になる際の力は、徐々に力がつくタイプもあれば、突然大きな力がつくタイプがあります。徐々に力がつくタイプであれば一年もあればしっかりとした妖怪になります。突然力がつくタイプでだとしても、半年以上はかかります。
なので、さとり達を襲ったのはどちらのタイプにせよ、イレギュラーな存在という事です。」
「なるほど……」
「なぁ、もしかしたら過去に起こったこれと同じ事件と関連性があるのか?」
過去に起こったこれ。というのは、今回の様に妖怪になる際に得た力を制御できず、暴走してしまったと思われる事例で、あたり一面が霧に覆われ霧が晴れた頃にはその霧がかかっていた部分だけがボロボロの街になってしまっていたというものだ。
「さぁ。今の状況でそれを判断するのは難しいですね。そういえば、その2人を襲った妖怪はどの様な姿をしていましたか?」
「それがだな……分からないんだ。」
「と言うと?」
「実は、一度、風であたりの霧をすべて吹き飛ばしてみたんだが、その時に敵の姿が全くなかったんだ。でもな?その後すぐに霧が戻ったと思ったら、いきなりとんでもない数の気配を感じたんだ。そしてその後に飛んできたものが……霊弾だ。」
その言葉を聞いた瞬間葵は驚いた。それは当然の事でもあった。霊弾というのは高位の妖怪にしか扱えず力のコントロールがとても難しいものなのだ。
これが何を意味するのかは分かる通り。天狗が感じたとんでもない数の気配の中に高位の妖怪が混ざっているかもしれないという事だった。
「まさか、そんな事があり得るのですか……。となると私たちだけでは手に負えない可能性もありますね。しかし、どうしましょうか。私達に相談する当てなんてありませんし……」
「戦えば良いじゃない」
しばらく間が空いた後、葵の左目が赤く光りだし、そこから声がした。さとりにとってはとても聞き覚えのある声だ。その声を聞くとさとりは警戒をし始めた。声に聞き覚えのないカイと天狗は驚き戸惑っている。
「戦えば良いじゃない。それ以外に方法あるの?」
「うるさい……妖怪。」
「なぁに?聞こえなかったよ?」
「うるさい。下がれよ妖怪。」
「名前を言ってくれなきゃ分からないなぁ~」
「お前は葵じゃない。葵の中の妖怪。ただの妖怪。それがお前の名前だ。」
「ひっどいなぁ~ボクは君たちを助けてあげようと思っているんだよぉ~?」
「嘘だな。何度お前が葵を乗っ取ろうとして葵が苦しんだ事か、忘れるわけがないだろう。」
「でもね?君たちにはボクに頼る以外に方法はないんだよ?だって君たち弱いんだもん。それに、ボクは今、君にかけられたカギのせいで力は使えないんだよ?それなのに、どうしてボクがこうやって喋りに出てこれたのか、わかる?」
「ま、まさか葵か?」
「えぇ、私がさとりの話を聞いていて、どうしようもないなと思った時に1つ思いついたんです。もう1人の私、つまりこの子に頼ってみるのはどうかな、と。」
「バカを言うな!こいつはお前を何度も騙そうとしてきたんだぞ!」
「ですが。今はさとりのおかげでこの子は力を使えません。ただ、どうしたら倒せるのか、方法は知っているはずです。なので、それを聞いてみようかと思っているのですが、どうでしょう……」
「それくらいなら……でも、1つ約束させてくれ。なぁ妖怪もし、お前が葵を操ろうとしたら即、葵の左目を潰してそれを止める。そのくらいの覚悟で私はいる。お前もそのくらいの覚悟を持ってやれ。」
「うんうん。分かったよ~♪ってなわけで!そこのお兄ちゃんもおっちゃんもよろしくね♪」
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―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
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嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
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