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新作 リメイク版
プロローグ
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風が気持ち良く、景色も良い。今までの私は、どうしてこんなにも身近な幸福を見つけられなかったのだろう。
上を見れば、空に広がる広大な海。その海を全力で進む鳥たち。今ならその子達が、何と言いたいのかちゃんとわかるよ。今日はどこへ向かって飛ぶの?と問いかけてみると、必ず返事が返ってくる。
でもどうして?なぜあなたは私を止めようとするの?私も一緒に空を飛びたい。この不自由な世界から、みんなと一緒に飛び立ちたい。そんな小さな願いすらも、この世界は叶えてくれないの?
だって一歩踏み出してみて?風が私を応援している。今にでもこの空に飛び立てそうだよ。……なぁに?下を見てみて?下を見て何があるっていうのさ。汚れた人間達が何か大きな声で叫んでる。聞こえる声は、もうやめるんだ。とか、まだ間に合うから引き返せ。とか……。
ねぇ、どうして?どうしてみんな、私の事を応援してくれないの?
私はこんなにも幸せなのに……どうして……
私は、空を飛ぶんだ。この世界から、飛び立つんだ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私は、暗い世界で生きてきた。暗闇に閉ざされた、真っ暗な世界。小さな頃に家族に見捨てられ、周りの人からつけられた名前が、「嫌われ者」。
私はいつもこの名前に考えさせられる。私は何も悪い事はしていない。親の名を汚す様な事もしなかったはず、なのに、どうして私は、嫌われ者になったのか……。
「それはもう随分と前に解決させただろう。それに、お前の名前は嫌われ者なんかじゃない。葵だ。本当の嫌われ者は私だ。お前じゃない。安心しな」
「いえ、解決なんてしていません。あの時もあれからも、いつもさとりが全て自分のせいだと言って終わらせます。私に葵という名前をつけてくれた事は感謝していますが、だからといって、嫌われ者の名を、全てさとりになすりつけるわけにはいきません。」
彼女はさとり。私が小さな頃から私につきまとっている、心を読むことができる妖怪です。本来は覚妖怪というべきですが、彼女は幼くして親に見捨てられた私を見守ってくれて、親というよりも、姉の様な存在です。少し話し方に男性っぽいクセがありますが、彼女は昔からこんな口調です。彼女は私に、嫌われ者以外の名前をつけてくれて、その名前で呼んでくれる唯一の家族です。さっきの様に、私が頭で考えていると、突然さとりが心を読んで口を出してくることがありますが、どうやら心を読むのにも少し力を使うらしく、時々全く心を読まない状況で見当違いのことばかり言う時があります。
「おい。見当違いとはなんだ」
「やはり見えてますか。しばらく人と会わない生活をしていますから、どうしても独り言や考え事が増えてしまうのですよ」
「それとこれとは関係ないだろう。私は、あんまりいつも葵が心を読まれていると気持ち悪いだろうと思って、たまに能力を使わない時があるだけだ。もし、それが見当違いというなら今度から容赦しないからな」
「いえ、感謝していますよ。そんな無愛想でも、ちゃんと気遣ってくれているんですね。」
どうやら一言多かったみたいです。さとりが珍しく、やれやれと頭を抱えています。それにしても、先ほどから何か、パトカーの音などで外が騒がしいです。何か事件でもあったのでしょうか。
「どうする葵。少し遠いが、どこかで心が叫んでる。私にはそれが聞こえる。救うも救わぬも葵の自由だが、このまま放っておくのは少し心が痛むな。」
覚妖怪のさとりには心が読めます。そして、遠く離れた心の声を聞くことができるそうです。さとりの読める「心」はその心の持ち主の発する音や振動。あらゆる物から発せられるそうです。さとりが何を感じたにせよ、誰かの心が助けを求めているということには違いがありません。さて、その心を救いに行きましょうか。
「おうっ!ってなわけで位置は伝えるから足は頼んだ!」
「了解です。それでは急いで行きましょう」
さとりはあくまでも妖怪。妖怪としてのその姿で人前に出たら、普通の人なら驚くどころでは済まないでしょう。そういった理由もあり、さとりは普段、私の眼帯で隠した左目の中で暮らしています。実はさっきの様に実体化してその場にいるという時のほうが珍しかったりもします。
私の体は、妖怪を身に宿すことに特化しています。実を言うと、私が親に見捨てられた原因も、この体質によるもので、この体質こそ私が「嫌われ者」と呼ばれるゆえんなのです。
上を見れば、空に広がる広大な海。その海を全力で進む鳥たち。今ならその子達が、何と言いたいのかちゃんとわかるよ。今日はどこへ向かって飛ぶの?と問いかけてみると、必ず返事が返ってくる。
でもどうして?なぜあなたは私を止めようとするの?私も一緒に空を飛びたい。この不自由な世界から、みんなと一緒に飛び立ちたい。そんな小さな願いすらも、この世界は叶えてくれないの?
だって一歩踏み出してみて?風が私を応援している。今にでもこの空に飛び立てそうだよ。……なぁに?下を見てみて?下を見て何があるっていうのさ。汚れた人間達が何か大きな声で叫んでる。聞こえる声は、もうやめるんだ。とか、まだ間に合うから引き返せ。とか……。
ねぇ、どうして?どうしてみんな、私の事を応援してくれないの?
私はこんなにも幸せなのに……どうして……
私は、空を飛ぶんだ。この世界から、飛び立つんだ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私は、暗い世界で生きてきた。暗闇に閉ざされた、真っ暗な世界。小さな頃に家族に見捨てられ、周りの人からつけられた名前が、「嫌われ者」。
私はいつもこの名前に考えさせられる。私は何も悪い事はしていない。親の名を汚す様な事もしなかったはず、なのに、どうして私は、嫌われ者になったのか……。
「それはもう随分と前に解決させただろう。それに、お前の名前は嫌われ者なんかじゃない。葵だ。本当の嫌われ者は私だ。お前じゃない。安心しな」
「いえ、解決なんてしていません。あの時もあれからも、いつもさとりが全て自分のせいだと言って終わらせます。私に葵という名前をつけてくれた事は感謝していますが、だからといって、嫌われ者の名を、全てさとりになすりつけるわけにはいきません。」
彼女はさとり。私が小さな頃から私につきまとっている、心を読むことができる妖怪です。本来は覚妖怪というべきですが、彼女は幼くして親に見捨てられた私を見守ってくれて、親というよりも、姉の様な存在です。少し話し方に男性っぽいクセがありますが、彼女は昔からこんな口調です。彼女は私に、嫌われ者以外の名前をつけてくれて、その名前で呼んでくれる唯一の家族です。さっきの様に、私が頭で考えていると、突然さとりが心を読んで口を出してくることがありますが、どうやら心を読むのにも少し力を使うらしく、時々全く心を読まない状況で見当違いのことばかり言う時があります。
「おい。見当違いとはなんだ」
「やはり見えてますか。しばらく人と会わない生活をしていますから、どうしても独り言や考え事が増えてしまうのですよ」
「それとこれとは関係ないだろう。私は、あんまりいつも葵が心を読まれていると気持ち悪いだろうと思って、たまに能力を使わない時があるだけだ。もし、それが見当違いというなら今度から容赦しないからな」
「いえ、感謝していますよ。そんな無愛想でも、ちゃんと気遣ってくれているんですね。」
どうやら一言多かったみたいです。さとりが珍しく、やれやれと頭を抱えています。それにしても、先ほどから何か、パトカーの音などで外が騒がしいです。何か事件でもあったのでしょうか。
「どうする葵。少し遠いが、どこかで心が叫んでる。私にはそれが聞こえる。救うも救わぬも葵の自由だが、このまま放っておくのは少し心が痛むな。」
覚妖怪のさとりには心が読めます。そして、遠く離れた心の声を聞くことができるそうです。さとりの読める「心」はその心の持ち主の発する音や振動。あらゆる物から発せられるそうです。さとりが何を感じたにせよ、誰かの心が助けを求めているということには違いがありません。さて、その心を救いに行きましょうか。
「おうっ!ってなわけで位置は伝えるから足は頼んだ!」
「了解です。それでは急いで行きましょう」
さとりはあくまでも妖怪。妖怪としてのその姿で人前に出たら、普通の人なら驚くどころでは済まないでしょう。そういった理由もあり、さとりは普段、私の眼帯で隠した左目の中で暮らしています。実はさっきの様に実体化してその場にいるという時のほうが珍しかったりもします。
私の体は、妖怪を身に宿すことに特化しています。実を言うと、私が親に見捨てられた原因も、この体質によるもので、この体質こそ私が「嫌われ者」と呼ばれるゆえんなのです。
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