25 / 30
第二十五話
しおりを挟む
妊娠が判明して数ヶ月経ち、ミナミのお腹はやや膨らんできた。
毎日律儀に挿入してくるフェリックスも、微々たる変化を楽しみにしている。
こんな学校でもきちんとした授業も実習もあって、帰りが遅くなった日、疲れて先に眠っていたら股間をまさぐる感覚で目が覚めた。
寝ぼけ眼で適当に頷くと、大きく片足を上げられ唐突に突っ込んで来ようとしてるではないか。
「ちょ……フェリックス……! 待って、明日の朝にしない!? 」
「俺明日の朝当番で早いから出しとくな。んー、ぽこんとしててすごい可愛い」
子宮の辺りを優しく撫でるが、陰部に当たる竿は全然優しさを感じられない。
フェリックスは性欲は強くない方だと言っていたし、ミナミもそう思うけれども、それでこの状態である。
よっぽど気持ち昂らせてしまったのか、身悶えする大きさだ。
妊孕性があることを認められてからは、ルームメイトであるミナミとの行為以外はやっていないようだし、少し我慢させてしまったのだろうか。
「ミナミのこと考えてたらずっと勃ったまま治まらなくてさ、早く挿れたかったんだ」
先端の滑った部分が軽く触れたかと思うと、ねっとりと腰を動かして控えめに内部へと侵入する。
「あーっ……これこれ……! いい……っ」
フェリックスは我慢していた欲求を少しずつ、少しずつ解消していく。
半分まで進んだところで踏みとどまり、入り口付近を往復する。
「やっと繋がれたから、すぐに出しちゃうのはもったいないと思ってさ。もうちょっと堪能させて」
角度を変えたり、体制を変えたりしながら何度も抜き挿しを繰り返す。
この国での妊娠中における性行為の目的は、精液での栄養補給が目的だ。
それはこの国で生まれ育った彼なら知っていることなのに、なかなか中出しせずにミナミの身体を楽しんでいる。
きっと無意味なことなのに、気にする様子もなく肌を寄せ合うフェリックスのことは、やはり大事にしたいなと、首筋にほんのりにじんだ彼の汗を拭う。
これこそが、子作りを目的としないミナミの求めているセックスのような気がして、彼の広い背中を抱きしめる。
この世界に来たばかりの頃は、こんな世界まっぴらだと思った。
誰も彼も繁殖のことしか考えてなくて、やりたくなくても無理矢理発情させて交わる世界。
逃げ出したくて堪らなかった。
それがいつのまにか、それなりに馴染んでしまった自分がいる。
汗とはどこか違う彼の匂いを味わいたくて、身体をこちら側へ引き寄せる。
「どうした?」
「なんでもないよ、いい匂いだから」
見たこともない髪の色したれっきとした異世界の男の人なのに、ずっとこの温もりに包まれていたいと思うのだ。
高窓からは満天の星空が見える。
流れているかも知れない星の欠片に向かって、ミナミは心の中で祈りを捧げた。
(ずっとフェリックスさんと一緒にいれますように)
やがて荒っぽい息づかいになってようやく果てたのを感じて、彼女は目を閉じた。
早朝、フェリックスが部屋を出る前に、扉を少し開けて誰かと話す声が聞こえたが、眠気が勝ったミナミの耳にはハッキリと入ることはなかった。
夜が明けて間もない薄暗い部屋で、フェリックスは健やかに寝息を立てるミナミの唇にそっと自分のを触れさせた。
そうしていつも通りに部屋を離れた。
ただ大きく違うのは、授業に出るという割には大きな荷物を抱えていたということ。
目が覚めたミナミは、整頓された彼の机の上を見て呆然とした。
紐パンの紐を適当に結び、制服に袖を通して日課の交尾確認を受けてから教室に駆け込んだ。
「フェリックスさん知らない!? 朝起きたらいなくなってて、昨日もちゃんとシたのに、なんか荷物がなくなってて……」
クラスメイトの男は特に焦るでもなく、予習をしながら答えた。
「あぁ、君あの先輩と同室だったんだ。君を希望する男結構多いのに、部屋交換したって聞かなかったもんな。基本は一ヶ月くらいで交換だから、時期的にそろそろローテーションのタイミングなんじゃないか? もしかして嫌なのか? 他の女と接触するのが」
「交換……」
そういえば同室の相手は、より効率的に妊娠に至る為に一定間隔で入れ替わると彼が言っていたことを思い出した。
まぐれでも懐妊させたフェリックスは、再びそのまぐれを期待され、ミナミの元からはいなくなってしまったのだった。
「ミナミちゃんは違和感かもねぇ、君結婚制度が残ってる国から来たんだろ? そうしたらこの国は……って、えっ」
頬に大粒の涙がこぼれていた。
このところフェリックスとささやかながら満ち足りた日々を送っていたミナミは、繁殖の為のルームメイト制度だということを忘れていた。
それだけでなく、"もしミナミの国で出会っていたら"という妄想までしてしまっていた。
それは今よりもさらに充実した日々だ。
一人暮らししているどちらかの家に転がり込んで、イチャイチャしながらダラダラ過ごす休日なんかもいいな。
生まれてくる子どもの名前も考えなきゃ、ミナミの想いを込めてこの国っぽい呼び名にするにはどんなネーミングがいいかな。
似たような生活送っているのに、それは絶対に叶わない夢物語だと、今改めて現実を突き刺された。
「何泣いてんだよ……」
「わかんない……」
想い描く普通の生活などとっくの昔に捨てたつもりだったのに、まだくすぶっている。
どうして理想から離れられないんだろう。
いつまでも追い続けてしまうんだろう。
「この国を変える為にはどうしたらいいんだろう」
「知るかよ」
「ミナミはフェリックスさんと結婚したい。それで平凡だけど幸せな家庭を築きたいの。産んだ子ども全員自分の手で育てて、いろんな思い出刻んでいきたいの。どうしたらそういうことができるの?」
「できねぇってば」
ミナミの泣き言に、クラスメイトは素っ気なく返事をする。
当たり前なのだ。
彼にとってはミナミこそが異例なのだから。
「あなたは好きな子はいないの? できればその子だけ抱いていたいと思わないの!? 」
「んなの当然だろ。でも仕方ねぇんだ、この身体はブスでもデブでも女であれば反応するように、つまりは改造されたんだ。オレらにだって選択権なんかねぇんだよ」
級友はため息をついて教科書を閉じる。
一見いい思いしかしないように見えた男だって、そんなことはないのだ。
フェリックスもずっと子どもができずに人生を諦めていたことが、まだ記憶に新しい。
「そういやミナミちゃん、クレマンスが感謝してたよ。今回は裂けたとこの戻りが早いって。出血そんな多くなくてこれは四人目すぐ孕めそうって」
「クレマンスが……?」
毎日律儀に挿入してくるフェリックスも、微々たる変化を楽しみにしている。
こんな学校でもきちんとした授業も実習もあって、帰りが遅くなった日、疲れて先に眠っていたら股間をまさぐる感覚で目が覚めた。
寝ぼけ眼で適当に頷くと、大きく片足を上げられ唐突に突っ込んで来ようとしてるではないか。
「ちょ……フェリックス……! 待って、明日の朝にしない!? 」
「俺明日の朝当番で早いから出しとくな。んー、ぽこんとしててすごい可愛い」
子宮の辺りを優しく撫でるが、陰部に当たる竿は全然優しさを感じられない。
フェリックスは性欲は強くない方だと言っていたし、ミナミもそう思うけれども、それでこの状態である。
よっぽど気持ち昂らせてしまったのか、身悶えする大きさだ。
妊孕性があることを認められてからは、ルームメイトであるミナミとの行為以外はやっていないようだし、少し我慢させてしまったのだろうか。
「ミナミのこと考えてたらずっと勃ったまま治まらなくてさ、早く挿れたかったんだ」
先端の滑った部分が軽く触れたかと思うと、ねっとりと腰を動かして控えめに内部へと侵入する。
「あーっ……これこれ……! いい……っ」
フェリックスは我慢していた欲求を少しずつ、少しずつ解消していく。
半分まで進んだところで踏みとどまり、入り口付近を往復する。
「やっと繋がれたから、すぐに出しちゃうのはもったいないと思ってさ。もうちょっと堪能させて」
角度を変えたり、体制を変えたりしながら何度も抜き挿しを繰り返す。
この国での妊娠中における性行為の目的は、精液での栄養補給が目的だ。
それはこの国で生まれ育った彼なら知っていることなのに、なかなか中出しせずにミナミの身体を楽しんでいる。
きっと無意味なことなのに、気にする様子もなく肌を寄せ合うフェリックスのことは、やはり大事にしたいなと、首筋にほんのりにじんだ彼の汗を拭う。
これこそが、子作りを目的としないミナミの求めているセックスのような気がして、彼の広い背中を抱きしめる。
この世界に来たばかりの頃は、こんな世界まっぴらだと思った。
誰も彼も繁殖のことしか考えてなくて、やりたくなくても無理矢理発情させて交わる世界。
逃げ出したくて堪らなかった。
それがいつのまにか、それなりに馴染んでしまった自分がいる。
汗とはどこか違う彼の匂いを味わいたくて、身体をこちら側へ引き寄せる。
「どうした?」
「なんでもないよ、いい匂いだから」
見たこともない髪の色したれっきとした異世界の男の人なのに、ずっとこの温もりに包まれていたいと思うのだ。
高窓からは満天の星空が見える。
流れているかも知れない星の欠片に向かって、ミナミは心の中で祈りを捧げた。
(ずっとフェリックスさんと一緒にいれますように)
やがて荒っぽい息づかいになってようやく果てたのを感じて、彼女は目を閉じた。
早朝、フェリックスが部屋を出る前に、扉を少し開けて誰かと話す声が聞こえたが、眠気が勝ったミナミの耳にはハッキリと入ることはなかった。
夜が明けて間もない薄暗い部屋で、フェリックスは健やかに寝息を立てるミナミの唇にそっと自分のを触れさせた。
そうしていつも通りに部屋を離れた。
ただ大きく違うのは、授業に出るという割には大きな荷物を抱えていたということ。
目が覚めたミナミは、整頓された彼の机の上を見て呆然とした。
紐パンの紐を適当に結び、制服に袖を通して日課の交尾確認を受けてから教室に駆け込んだ。
「フェリックスさん知らない!? 朝起きたらいなくなってて、昨日もちゃんとシたのに、なんか荷物がなくなってて……」
クラスメイトの男は特に焦るでもなく、予習をしながら答えた。
「あぁ、君あの先輩と同室だったんだ。君を希望する男結構多いのに、部屋交換したって聞かなかったもんな。基本は一ヶ月くらいで交換だから、時期的にそろそろローテーションのタイミングなんじゃないか? もしかして嫌なのか? 他の女と接触するのが」
「交換……」
そういえば同室の相手は、より効率的に妊娠に至る為に一定間隔で入れ替わると彼が言っていたことを思い出した。
まぐれでも懐妊させたフェリックスは、再びそのまぐれを期待され、ミナミの元からはいなくなってしまったのだった。
「ミナミちゃんは違和感かもねぇ、君結婚制度が残ってる国から来たんだろ? そうしたらこの国は……って、えっ」
頬に大粒の涙がこぼれていた。
このところフェリックスとささやかながら満ち足りた日々を送っていたミナミは、繁殖の為のルームメイト制度だということを忘れていた。
それだけでなく、"もしミナミの国で出会っていたら"という妄想までしてしまっていた。
それは今よりもさらに充実した日々だ。
一人暮らししているどちらかの家に転がり込んで、イチャイチャしながらダラダラ過ごす休日なんかもいいな。
生まれてくる子どもの名前も考えなきゃ、ミナミの想いを込めてこの国っぽい呼び名にするにはどんなネーミングがいいかな。
似たような生活送っているのに、それは絶対に叶わない夢物語だと、今改めて現実を突き刺された。
「何泣いてんだよ……」
「わかんない……」
想い描く普通の生活などとっくの昔に捨てたつもりだったのに、まだくすぶっている。
どうして理想から離れられないんだろう。
いつまでも追い続けてしまうんだろう。
「この国を変える為にはどうしたらいいんだろう」
「知るかよ」
「ミナミはフェリックスさんと結婚したい。それで平凡だけど幸せな家庭を築きたいの。産んだ子ども全員自分の手で育てて、いろんな思い出刻んでいきたいの。どうしたらそういうことができるの?」
「できねぇってば」
ミナミの泣き言に、クラスメイトは素っ気なく返事をする。
当たり前なのだ。
彼にとってはミナミこそが異例なのだから。
「あなたは好きな子はいないの? できればその子だけ抱いていたいと思わないの!? 」
「んなの当然だろ。でも仕方ねぇんだ、この身体はブスでもデブでも女であれば反応するように、つまりは改造されたんだ。オレらにだって選択権なんかねぇんだよ」
級友はため息をついて教科書を閉じる。
一見いい思いしかしないように見えた男だって、そんなことはないのだ。
フェリックスもずっと子どもができずに人生を諦めていたことが、まだ記憶に新しい。
「そういやミナミちゃん、クレマンスが感謝してたよ。今回は裂けたとこの戻りが早いって。出血そんな多くなくてこれは四人目すぐ孕めそうって」
「クレマンスが……?」
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語
猫村まぬる
ファンタジー
海外出張からの帰りに事故に遭い、気づいた時にはどことも知れない南の島で幽閉されていた南洋海(ミナミ ヒロミ)は、年上の少年たち相手にも決してひるまない、誇り高き少女剣士と出会う。現代文明の及ばないこの島は、いったい何なのか。たった一人の肉親である妹・茉莉のいる日本へ帰るため、道筋の見えない冒険の旅が始まる。
(全32章です)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる