転生先は繁殖主義国家だけど、普通に幸せになりたいです!

葉月とに

文字の大きさ
上 下
15 / 30

第十五話

しおりを挟む
「ミナミ、君の詳しい性検が済んでいなかった。於いては今すぐデータを取る。検査室に行くぞ、着いてこい」
 
 ミナミは収監期限がとっくに過ぎていたが、トラブルが多いためしばらくの間勾留が伸びまだ檻の中にいた。
 乱交を避けたいミナミにとってはラッキーなことであったが、ついに二度目の釈放日が迫ってきていた。
 
「……性検なら最初に来た日にやりましたよね? 何も問題なかったはずですが」 
 
 ミナミを迎えに来た学生は、うーんと首をひねった。
 
「君と何らかの接触を持った者の多くが、再びの性的接触、及び交尾を希望している。うちでは選ばなければ希望せずとも挿入できるのに、だ。
 そこで何らかの依存薬物を摂取していないかもう一度調査することになった。魅力的なのは子孫繁栄に於いて大切なことだが、一人の女に偏るのも効率が悪いだろう。一度に子を宿せる人数は一人や二人と限られているしな。
 まぁ、ただの検査だ何も気に病まなくてもいい」
 
「……」
 
 ミナミがここに来て一ヶ月半ほどだ。
 こんな世界に転生してここまで妊娠に至っていないのは、とても幸運だった。
  相変わらず、法の抜穴を突いた逃走ルートは見つからなかったし、フェリックスの精液を解析できるような道具……高度な顕微鏡に変わるものも再現できなくて辟易していたけど、命の心配をしなくていいことに対する感謝は、日々感じるようになっていた。
 毎日精液の素晴らしさを説かれ、飲精の効果を語られていると、あんなに嫌悪感を抱いていたのに慣れてしまうものである。
 昔はミナミの国もお見合い結婚が盛んだったし、結婚相手と結婚式に初めて会うなんていうのも珍しくなかった。
 それだと思えば、ちょっとヤりまくるくらい平気だ。
 出産時は自分の幸運を願って、安産になるように祈りまくるしかないけど、ミナミの場合はあと四年だ。
 多くても四人産めば自由に生きられる未来が約束されている。
 
 (ーーよし)
 
 腹をくくって、拳を握りしめる。
 
「フェリックスさんを出してください。もし本当に何らかの症状が見つかっても彼なら問題ないでしょう?」
 
 本来ならば最初の検査とは違う男にして大きさなどを比較するのだと思うが、ミナミはフェリックスが良かった。
 それくらい、ミナミの中で彼の存在が大きくなっていた。
 
 
 その日の夕刻、いつもの補講をする前に呼び止められた彼は、検査室でミナミと顔を合わせた。
 
「今日は補講の代わりに身体検査を行ってもらいます。調子が悪いとかありませんね?」
 
「……あ、あぁ」
 
 フェリックスはいつもよりそわそわしている。
 検査室にはミナミとフェリックスの他、進行と書記にあたる二人の男も居合わせていた。
 薄々気がついていたが、この国では性行為は特に隠れてするものではないらしい。
 
 複雑な気持ちを抱えながらミナミがワンピースを脱ぎ、シャツのボタンを外すと、たわわに実った乳房が上下に揺れた。
 フェリックスは思わず胸元を凝視した。
 書記の男は書き込もうと取ったペンを落とした。
 手から離れた万年筆は、カタンと落ちコロコロ床を転がった。
 
 この制服のシャツはブラウスとブラジャーが一体型になっており、シャツにワイヤーが入っている。
 ブラをつけなくても胸を綺麗に保ってくれるらしい。
 おそらく事実は"素早く性行為をするため"なのだが、深く考えるのは止めておく。
  
 細かく目盛りが刻まれているメジャーで、乳房の周りを円を描くように囲む。
 乳輪も同じく、外周から乳首までの距離を測り直径を求め、色を色見本と照らし合わせどれに近いかチェックしていく。
 その後、乳首をこねて立たせ、立たせる前と後の長さを記入する。
 先端への刺激はフェリックスがやってくれているが、左手で胸をいじり右手で股間を触り濡れ具合をチェックされている。
 
「乳が大きい分、濡れていますね」
 
「そうだな。左右ともすごく感度もいいし」 
 
 (フェリックスじゃなきゃこんなことで濡れたりしないんだからね! )
 
 羞恥心に耐えながら、検査を続ける。
 ミナミの国ではそもそも乳首は産まれた赤ちゃんのものという認識だが、産まれてすぐ国に引き取られるこの国では、男をもてなすための道具に過ぎないのだろう。
 
 (感度ってなんだよ! そんなの、相手によって異なるに決まってるじゃん! )
 
 しかし知らない派が大多数のこの世界。
 ミナミを除いて真剣に事が進んでいくのである。
 
 グラビア誌などでよく見るスリーサイズなどは特に計測せず、下半身へとメジャーは移動する。
 
「見た感じ、この前との相違点は見受けられない」
 
「そうですね。せっかくなのでそのデータ使いましょう。今日は時間がないですし。今日の夕食カレーだそうですし」
 
「あー、なんかいい匂いがすると思ったら」
 
 ミナミの裸体を前に呑気に会話を繰り広げる男たちである。
 いかにヤりまくっているのかよく分かる。
 開脚し続けているのも恥ずかしいので、カレーの辛さについて白熱した議論交わしている男たちの背後で、そっと足裏を合わせ膝を合わせようと試みる。
 フェリックスもミナミの足元で、後ろを向いて何やら作業していた。
 
「ミナミ、もうちょっと待ってくれ」
 
 (え? もしかしてコンドームを……)
 
 
 ここにきてまさかの現代展開かと期待したが、フェリックスは注射器のようなものでミナミの膣の中へ何かを注入した。
 人肌に温められた柔らかめのゼラチンのようなものか。
 
「あぁ、これは潤滑ゼリー。稀に濡れなくて全然挿入できない人もいるから念のため。心配するな。これの成分はほとんど水だから。中に入れるのは本当は精液がいいんだが、性検においては正しい値が測定できないと困るからな」
 
「そんなもんだと思ってた」
 
「うん?」
 
「いや、ううん……」 
 
 出産の際に精液で身体を清めるこの国に避妊具なんて存在しないのに、期待した自分が馬鹿だった。
 ミナミは頭を垂れた。
 
「じゃあ、挿入するよ」
 
「A地点まで」
 
「了解」
 
 フェリックスの了承の声と共に、ちゅく、と先端が入り口にわずかに埋まった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく……

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...