転生先は繁殖主義国家だけど、普通に幸せになりたいです!

葉月とに

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第十五話

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「ミナミ、君の詳しい性検が済んでいなかった。於いては今すぐデータを取る。検査室に行くぞ、着いてこい」
 
 ミナミは収監期限がとっくに過ぎていたが、トラブルが多いためしばらくの間勾留が伸びまだ檻の中にいた。
 乱交を避けたいミナミにとってはラッキーなことであったが、ついに二度目の釈放日が迫ってきていた。
 
「……性検なら最初に来た日にやりましたよね? 何も問題なかったはずですが」 
 
 ミナミを迎えに来た学生は、うーんと首をひねった。
 
「君と何らかの接触を持った者の多くが、再びの性的接触、及び交尾を希望している。うちでは選ばなければ希望せずとも挿入できるのに、だ。
 そこで何らかの依存薬物を摂取していないかもう一度調査することになった。魅力的なのは子孫繁栄に於いて大切なことだが、一人の女に偏るのも効率が悪いだろう。一度に子を宿せる人数は一人や二人と限られているしな。
 まぁ、ただの検査だ何も気に病まなくてもいい」
 
「……」
 
 ミナミがここに来て一ヶ月半ほどだ。
 こんな世界に転生してここまで妊娠に至っていないのは、とても幸運だった。
  相変わらず、法の抜穴を突いた逃走ルートは見つからなかったし、フェリックスの精液を解析できるような道具……高度な顕微鏡に変わるものも再現できなくて辟易していたけど、命の心配をしなくていいことに対する感謝は、日々感じるようになっていた。
 毎日精液の素晴らしさを説かれ、飲精の効果を語られていると、あんなに嫌悪感を抱いていたのに慣れてしまうものである。
 昔はミナミの国もお見合い結婚が盛んだったし、結婚相手と結婚式に初めて会うなんていうのも珍しくなかった。
 それだと思えば、ちょっとヤりまくるくらい平気だ。
 出産時は自分の幸運を願って、安産になるように祈りまくるしかないけど、ミナミの場合はあと四年だ。
 多くても四人産めば自由に生きられる未来が約束されている。
 
 (ーーよし)
 
 腹をくくって、拳を握りしめる。
 
「フェリックスさんを出してください。もし本当に何らかの症状が見つかっても彼なら問題ないでしょう?」
 
 本来ならば最初の検査とは違う男にして大きさなどを比較するのだと思うが、ミナミはフェリックスが良かった。
 それくらい、ミナミの中で彼の存在が大きくなっていた。
 
 
 その日の夕刻、いつもの補講をする前に呼び止められた彼は、検査室でミナミと顔を合わせた。
 
「今日は補講の代わりに身体検査を行ってもらいます。調子が悪いとかありませんね?」
 
「……あ、あぁ」
 
 フェリックスはいつもよりそわそわしている。
 検査室にはミナミとフェリックスの他、進行と書記にあたる二人の男も居合わせていた。
 薄々気がついていたが、この国では性行為は特に隠れてするものではないらしい。
 
 複雑な気持ちを抱えながらミナミがワンピースを脱ぎ、シャツのボタンを外すと、たわわに実った乳房が上下に揺れた。
 フェリックスは思わず胸元を凝視した。
 書記の男は書き込もうと取ったペンを落とした。
 手から離れた万年筆は、カタンと落ちコロコロ床を転がった。
 
 この制服のシャツはブラウスとブラジャーが一体型になっており、シャツにワイヤーが入っている。
 ブラをつけなくても胸を綺麗に保ってくれるらしい。
 おそらく事実は"素早く性行為をするため"なのだが、深く考えるのは止めておく。
  
 細かく目盛りが刻まれているメジャーで、乳房の周りを円を描くように囲む。
 乳輪も同じく、外周から乳首までの距離を測り直径を求め、色を色見本と照らし合わせどれに近いかチェックしていく。
 その後、乳首をこねて立たせ、立たせる前と後の長さを記入する。
 先端への刺激はフェリックスがやってくれているが、左手で胸をいじり右手で股間を触り濡れ具合をチェックされている。
 
「乳が大きい分、濡れていますね」
 
「そうだな。左右ともすごく感度もいいし」 
 
 (フェリックスじゃなきゃこんなことで濡れたりしないんだからね! )
 
 羞恥心に耐えながら、検査を続ける。
 ミナミの国ではそもそも乳首は産まれた赤ちゃんのものという認識だが、産まれてすぐ国に引き取られるこの国では、男をもてなすための道具に過ぎないのだろう。
 
 (感度ってなんだよ! そんなの、相手によって異なるに決まってるじゃん! )
 
 しかし知らない派が大多数のこの世界。
 ミナミを除いて真剣に事が進んでいくのである。
 
 グラビア誌などでよく見るスリーサイズなどは特に計測せず、下半身へとメジャーは移動する。
 
「見た感じ、この前との相違点は見受けられない」
 
「そうですね。せっかくなのでそのデータ使いましょう。今日は時間がないですし。今日の夕食カレーだそうですし」
 
「あー、なんかいい匂いがすると思ったら」
 
 ミナミの裸体を前に呑気に会話を繰り広げる男たちである。
 いかにヤりまくっているのかよく分かる。
 開脚し続けているのも恥ずかしいので、カレーの辛さについて白熱した議論交わしている男たちの背後で、そっと足裏を合わせ膝を合わせようと試みる。
 フェリックスもミナミの足元で、後ろを向いて何やら作業していた。
 
「ミナミ、もうちょっと待ってくれ」
 
 (え? もしかしてコンドームを……)
 
 
 ここにきてまさかの現代展開かと期待したが、フェリックスは注射器のようなものでミナミの膣の中へ何かを注入した。
 人肌に温められた柔らかめのゼラチンのようなものか。
 
「あぁ、これは潤滑ゼリー。稀に濡れなくて全然挿入できない人もいるから念のため。心配するな。これの成分はほとんど水だから。中に入れるのは本当は精液がいいんだが、性検においては正しい値が測定できないと困るからな」
 
「そんなもんだと思ってた」
 
「うん?」
 
「いや、ううん……」 
 
 出産の際に精液で身体を清めるこの国に避妊具なんて存在しないのに、期待した自分が馬鹿だった。
 ミナミは頭を垂れた。
 
「じゃあ、挿入するよ」
 
「A地点まで」
 
「了解」
 
 フェリックスの了承の声と共に、ちゅく、と先端が入り口にわずかに埋まった。
 
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