転生先は繁殖主義国家だけど、普通に幸せになりたいです!

葉月とに

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第十四話

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「は……?」
 
 男は不思議そうに眉を潜める。
 ミナミは男からの接触に必死に抵抗しながら訴えた。
 
「この世界では、男の人にこういう事されてもそんなに嫌じゃないかも知れないけど、ミナミの国では、ミナミみたいな未成人の子にこういうことしたら犯罪なんですよ! 犯罪!」
 
「犯罪……」
 
 ミナミは成人しているが、ここはこの国の成人年齢の基準に合わせて二十二歳ということにしておこう。
 嘘も方便である。
 
「犯罪者に加担していいんですか!? 他の国に飛ばされた上に犯罪者のおじさんに孕まされるなんて……そんなの、そんなのあんまりじゃないですか! ミナミだって幸せになりたいです!」
 
 何をもって幸せというのかは人によって異なるが、少なくとも一回り以上年上の男と結ばれることではない。
 本当だったら、死ななかったら大学生の年齢だ。
 やりたかったことだってあるし、あんなに呆気なく死にたくなんかなかった。
 そうだーー……こんなに呆気なく、ぽっと出のおじさんに未来を奪われてたまるか。
 ミナミは意識し直した。
 
 ご飯に困らないだけ、ミナミは恵まれているのだ。
 剣と魔法の世界じゃないのは残念だけど、だからこそ一般人が簡単に戦いに巻き込まれることはないし、割とみんな平和主義。
 ドラゴンもフェアリーもいないけど、それは言うなればモンスターがウジャウジャいる世界観だ。
 ミナミだって王子様や騎士団、フリルやレースのドレスに憧れはあるけれど、そういう理想の異世界に転生した人たちは常に死の危険と隣り合わせかも知れない。
 比べれば良いとこが無いわけじゃない。
 
「フェリックスさん……お願い、フェリックスさんのことはミナミがなんとかするから。今はまだ来たばかりだから自分のこともよく分かってないけど、ミナミの国はここよりも発展してる。ミナミの国の技術を取り入れたらフェリックスさんが子どもを持てない理由はわかるし、治療することだってできるの! だから……!」
 
 フェリックスはミナミの訴えを黙って聞いていた。
 愛撫で解きほぐされた秘部からは、ミナミの意図とは関係なく迎液が溢れ出す。
 刻々と身体の準備が整っていく。
 残念ながら男女とは、気持ちがなくても子ができる。
 生物学的にそういう風にできている。
 
「……わかった」
 
 ミナミの入り口に男が猛ったモノをあてがったとき、フェリックスはその手を力強く握った。
 
「ノルダール君」
 
「フェリックスさん!」
 
 男のブツを押さえつけながら横にずらし、さりげなく自分のをあてがった。
 ちゅぷ、とフェリックスの屹立の先端が密口に触れる。
 
「……ちゃっかりしてるな」
 
「すいません、いつもはこんなにビンビンじゃないんですけど」
 
 男はフェリックスにはそれ以上突っかかることはなく、彼に席を譲った。
 すぐにでもひとつに溶け合えそうだったが、フェリックスはそこに挿入はせず、男茎はやや上にある陰核をなぞった。
 
「ひぁ……!」
 
「ミナミ、約束して。何か思い出したらすぐに俺に報告するって。治療薬ができたら一番に俺を被験者にして、俺の精液を使ってお前が俺の子を孕むって。必ずだ」
 
 フェリックスはミナミの腕を引っ張って、自らの小指と絡ませて指切りの仕草をした。
 フェリックスの長い指と指の間に、ミナミの小さい小指が遠慮がちに挟まる。
 
 それはミナミの世界と変わらない仕草で、彼女は思わず笑みがこぼれた。
 似ているようでちょっとずつ異なるこの世界での暮らしを突如強いられてしまったけど、彼がいるから心細さとは無縁だった。
 彼は彼自身のことが嫌いだけど、何も才能はないと思っているけど、あなたが存在することで助かっている人もいるということを、いつかあなたに伝えられたらいいと思う。
 
「もちろんです」
 
 出産の義務・・と言えど、必ずしも遂行できる義務ではないが、現代の知識を持ったミナミならそうできる可能性は高いはず。
 ミナミは自信を持ってそう答えた。
 
「そのときはちゃんと孕ませてくださいね。無駄にヤりまくるの嫌なんですから。フェリックスさんだけで充分です」
 
「ーー!」
 
 資産家の男が控えている横で、フェリックスの肉棒からは熱い飛沫が吹き出した。
 
「もったいねぇ、こんなとこで出すのか。最奥まで我慢しろ」
 
「す……、すいませ……! あ、あぁ……止まんね………」
 
 時折ビクビク震わせながら、続け様に幾度も粘液を放出する。
 太股やお腹の上、一部はミナミの顔にまで、この国の繁栄の源が弾け飛ぶ。
 ミナミは口元にかかったそれを手で拭った。
 他の男のものと同じく、彼のそれも独特の匂いがしてベトベトして決して好きとは言えない。
 
 でも、いつもはこんなんじゃない、と彼は言った。
 それはつまり、いつもより興奮したということ。
 他の女の子たちよりミナミに興奮してくれたということ。
 性に淫らなこの国で、フェリックスにとって特別な存在に選ばれたような気がして、ミナミは優越感で満たされた。
 
 (彼の精液をこんなに浴びてるのミナミくらいかも知れない)
 
 
 その後、思考がこの国に染まりかけていると気付いた彼女が頭を抱えてしまったのは、言うまでもなかったが。
 
 
 
 帰宅し、フェリックスを予約済みのお金持ちの男ーーデイビッドは先刻あった出来事を思い出していた。
 デイビッドにとってフェリックスは、たくさん購入している奴隷の一人に過ぎない。
 だからフェリックスが彼に逆らったときも、そこまで固執することはなかった。
 彼は性欲が強く、交わる相手も男女どちらでも良かったため、自分好みの美しい外見の人物を選んでいた。
 相手が自分を好まなくてもそれは主従関係において当然のことで、セックスさえできれば良いという考えだった。
 
 しかし、ミナミのことはどうしても手に入れたくなった。
 珍しいグレーの髪と瞳、そして真っ白な肌は久しぶりにデイビッドに所有欲というものを与えた。
 噂には聞いていたが想像以上のインパクトだった。
 彼女の優れた容姿を自分が後世に残さなければと燃えたぎった。
 
 (自分の国はここよりも発展していると言っていた。どこの国か知らないが、やはり貴重だ。どんな手段を使ってでも私が懐妊させなければ)
 
 
 
 
 
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