5 / 30
第五話
しおりを挟むショッピングモールで一日過ごし、すっかり日が落ちた中を俺たちは繁華街から離れる方向に歩いていた。
何を隠そう、これからホテルで一泊するためだ。しかもラブが付く方の。
「七海?」
「………は、はい……」
「大丈夫か?」
「………は、はい……」
俺が何処を目指しているのかは少しでも地理に精通していればわかる。
賑やかな中心街からは離れた裏通りのような場所。近づくにつれて七海の落ち着きが無くなって行くのがわかった。
そういう俺もホテルに行くのは久しぶりなのでワクワクしている。
特に毎回受け付けをする度に驚愕した目で見られるのが俺のお気に入り。
こういう系統のホテルはこの世界だと、男性が少ないことで発生したユリカップルによって使われることが多い。もちろん男性が使っても問題は無い。
周りがユリな分、俺にとっては楽園のような場所とも言えるかもしれない。
「行くよ?」
「……はい!」
七海に一声かけてからホテルの入り口にある扉を押して中に入る。
内装はピンク色の壁にピンク色の明かりを使っており、とにかくそういう店にありがちなピンク一色だった。
「すみません、いいですか?」
「はい……はい?!え、?!………ご、ごほん。失礼しました。こちらのプランから希望するものを選択してください。」
「ありがとうございます」
被害者累計百人近くが存在する中、この受付嬢も言い反応をしてくれた。
チラチラと俺と七海に視線を送るのは果たして。嫉妬なのか、羨望なのか、それとも正義感なのか。
「宿泊でお願いします。部屋はノーマルの洋室で」
「?!……承りました。開始まで時間がありますが、いかがしますか」
「うーん、直ぐに部屋に入りたいので休憩でお願いします」
「わ、わかりました……お会計は〇〇〇〇◯円になります」
俺は財布を取り出し料金を支払う。俺は七海と違って給料をもらっているので俺の驕りだ。
「せ、先生……すみません後で払います」
「驕りだから気にするな」
「……で、でもっ」
「とりあえず部屋に行こうか」
「……わかりました」
受付嬢から部屋番号が書かれたキーを受け取ると、俺と七海はエレベーターを使って部屋に向かった。床にはこれまたピンク色の絨毯が敷き詰められているため、足音が響くこともなく、結構当たりのホテルだと思った。
部屋に入ると、ベッドにソファーにテレビがあり、そして暗めのライトによってぼんやりした空間が広がっていた。
「……凄いです……」
七海は始めて来たようで当たりを見渡して感動していた。
「そうだな……七海」
「っ……はい……!!」
ここはもう周囲の目を一切気にする必要の無い密室。
俺は横にいる七海を抱きしめると、お互いの唇を交える。
しばらくしてから、俺たちはベットへと向かった。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
私の愛する夫たちへ
エトカ
恋愛
日高真希(ひだかまき)は、両親の墓参りの帰りに見知らぬ世界に迷い込んでしまう。そこは女児ばかりが命を落とす病が蔓延する世界だった。そのため男女の比率は崩壊し、生き残った女性たちは複数の夫を持たねばならなかった。真希は一妻多夫制度に戸惑いを隠せない。そんな彼女が男たちに愛され、幸せになっていく物語。
*Rシーンは予告なく入ります。
よろしくお願いします!
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

目には目を歯には歯を!ビッチにはビッチを!
B介
恋愛
誰もいないはずの教室で絡み合う男女!
喘ぐ女性の声で、私は全て思い出した!
ここは乙女ゲームの世界!前世、親の借金のせいで若くして風俗嬢となった私の唯一のオアシス!純愛ゲームの中で、私は悪役令嬢!!
あれ?純愛のはずが、絡み合っているのはヒロインと…へ?モブ?
せめて攻略キャラとじゃないの!?
せめて今世は好きに行きたい!!断罪なんてごめんだわ!!
ヒロインがビッチなら私もビッチで勝負!!
*思いつきのまま書きましたので、何となくで読んで下さい!!
*急に、いや、ほとんどR 18になるかもしれません。
*更新は他3作が優先となりますので、遅い場合申し訳ございません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる