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第四話
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「子ども、そんなに足りてないんですか?」
ワンピースの端をぎゅっと握りしめ、ミナミは同い年くらいの女の子に問いかけた。
この制服が締め付けのないなだらかなデザインなのは、きっと女生徒の妊娠を前提としているからなのだ。
背筋が凍るような思いがして、彼女は自分自身を抱きしめた。
女の子はそんな現状に一切不満を持っている様子もなく、淡々とした表情で答える。
「そうだね、半世紀前は大変だったみたいよ。キャリアや趣味を優先してみんな子どもを作らなくなったから、産むのは昔で言うデキ婚の人たちのみ。その人たちも産んでからはできないように避妊手術するのが当たり前になったから、もう本当にお年寄りしかいなくてかなりヤバかったらしいよ」
小さい女の子も続ける。
「そうそう、でも繁殖主義になってからだいぶ改善してきたんですよね。産むの大変ですけど、産んでしまえば卒業後は好きに暮らせますもんね。みんなスタートが一緒だから、スポーツでも芸術でも妊娠出産育児で中断して遅れを取るなんてこともないし」
「子どもは産めば終わりだしね。昔みたいに親の責任とか押し付けられることもないし、いい時代になったよね」
少女たちは顔を見合せ穏やかに微笑んだ。
ミナミにはにわかに信じられなかったが、未成年の乱交多産が当然の世の中の仕組みを簡単に受け入れているし、むしろ賞賛している。
ついていけずにミナミは呆気に取られてしまう。
「子ども、産めば終わりって……?」
「あぁ、産まれた子はみんな国が引き取って育てるんですよ。そういう養育施設が何ヵ所もあるんです。楽しいですよー。みんなできょうだいみたいに育ちます」
「虐待とか、親に養育義務があった時代はあったって聞くけど、そういうのも一切ないしね。繁殖可能年齢過ぎるまでの子どもに危害を加えたら重罪だし、まぁ当然っちゃ当然か!」
二人はまた、声高らかに笑った。
貞操観念が違いすぎるこの国の人たちとは、分かり合うのは難しいような気がしてきた。
今確かに言えることは、彼女たちはよくてもミナミは良くないということだ。
不特定多数と日常的に性行為をすることや、卒業するまでずっと妊娠しなければならないこと、ミナミにとっては理解し難いことばかりだ。
(こんなところ、早く出て行かなければ)
より一層その思いが強くなった。
異世界から現実に戻る前例はないものの、他国へ行けば何か変わるはずだ。
少なくともこんな乱れた性観念の国とはサヨナラできるし、死ぬまで働き詰めだったとしても、生理的に無理な男の子どもを産むよりマシである。
そこまで考えて、ふとミナミは疑問が浮かんだ。
「そんなにセックスしても、もし卒業するまで誰も妊娠させることができなかったり、しなかったりしたらどうなるんですか? 税金が上がったり国を追放されたりするんでしょうか?」
子どもは授かり物だ。
いくら身体を重ねてもできないこともあるし、医療がそこまで進んでいなさそうなこの国では、生殖医療の技術もまだまだ発展途上だろう。
だとすれば、無精子症や抗精子抗体など現代ならある程度治療が可能でも、この世界では彼らを妊娠に至らせることはできない。
割合的にもそんな人たちが少なからずいるはずだ。
産みたくても産めない、どうすることもできない人たち。
「そうだな……あぁ、そうだちょっと見てみるかい?」
口を開いたのは先生だった。
放送で一人の職員を校長室に呼び寄せた。
艶のある黒髪が美しい、20代後半くらいの女性が入室してきた。
先生はおもむろにベルトを緩めるとスラックスの前を開けて男性器を舐めるよう指示した。
「私はもう繁殖年齢ではないんだが」
大勢に見られていても少しも恥じることなく、先生のソレは完全に勃ち上がった。
「交尾するぞー」
先生が言うと、女性は全く抵抗することなく下着を脱ぎ始めた。
机に手をついて、先生が挿れやすいようにお尻だけを前に突き出した。
先生は教卓を漁ってローションを取り出し、雑にお尻に塗りたくるとそのままズンッと一気に奥を突いた。
「あっ……あぅ……んん……っ!」
女性は激しい揺さぶりに喘ぎ声が漏れた。
先生は何度か前後すると直ぐに動きを止め、女性の中に大量の白濁液を放った。
放出し終わると、彼女はポーチから丸めた綿を取り出して挿入し、膣に蓋をした。
まるで子種を一滴も取りこぼすまいとしているようだった。
「……ありがとうございます」
性欲処理に使われただけにしか見えないのに、女性は頭を下げて礼を言い、床にこぼれ落ちた体液をハンカチで拭き取った。
先生はすっきりした顔でミナミを見た。
「わかったかい? 子どもができない、子孫を残せない人というのはこうなるんだ。フリーセックス……つまり、交尾を拒否する権利が消失して、いつでもどこでも、誰のどんな性行為にでも応じなければいけなくなるんだ。子どもを残せなければ価値がないからね。子を孕むまで永遠に中出しされるんだよ」
「今ので先生の子を生成できれば永遠の子作りは終わるけどね」
「無理ですよ。だって15年以上ずっと無排出なんですよ? 今さら繁殖なんてできないですって」
少女たちはクスクス笑った。
完全にこの世の価値観に支配されている。
産まれたときから親がおらず、子孫繁栄が何よりも大事なこの世界に生まれれば、そうなるのも仕方ないかも知れない。
けれどミナミはそうではないのだ。
ミナミは平凡ながら幸せな日常を送ってきた。
地方公務員の父と助産師の母、派手好きだが甘えん坊で可愛い妹、そしてミナミ。
ミナミは学校は好きではなかったけど、父は無口だが穏やかで優しく、母はちょっと口うるさいけどいつでもミナミの味方でいてくれ、妹もミナミとは全くタイプが違うのに、お姉ちゃん子でとても可愛かった。
家族みんな仲が良く、家がミナミにとって一番安心できる場所だった。
いつかは自分も自分が育ったような家庭を築きたいとずっと思っていた。
それは異世界に来てしまった今も変わらない。
優しい旦那様と仲良く幸せに暮らしたい、ミナミのその望みは相手を選り好みしなければそんなに難しいことではないと思っていた。
ーーでも。
(この世界では、きっと無理だ)
そもそもミナミが想像する"幸せな家庭"というのが存在しないのだ。
夢を描いたって、実現する方法がないのだ。
ワンピースの端をぎゅっと握りしめ、ミナミは同い年くらいの女の子に問いかけた。
この制服が締め付けのないなだらかなデザインなのは、きっと女生徒の妊娠を前提としているからなのだ。
背筋が凍るような思いがして、彼女は自分自身を抱きしめた。
女の子はそんな現状に一切不満を持っている様子もなく、淡々とした表情で答える。
「そうだね、半世紀前は大変だったみたいよ。キャリアや趣味を優先してみんな子どもを作らなくなったから、産むのは昔で言うデキ婚の人たちのみ。その人たちも産んでからはできないように避妊手術するのが当たり前になったから、もう本当にお年寄りしかいなくてかなりヤバかったらしいよ」
小さい女の子も続ける。
「そうそう、でも繁殖主義になってからだいぶ改善してきたんですよね。産むの大変ですけど、産んでしまえば卒業後は好きに暮らせますもんね。みんなスタートが一緒だから、スポーツでも芸術でも妊娠出産育児で中断して遅れを取るなんてこともないし」
「子どもは産めば終わりだしね。昔みたいに親の責任とか押し付けられることもないし、いい時代になったよね」
少女たちは顔を見合せ穏やかに微笑んだ。
ミナミにはにわかに信じられなかったが、未成年の乱交多産が当然の世の中の仕組みを簡単に受け入れているし、むしろ賞賛している。
ついていけずにミナミは呆気に取られてしまう。
「子ども、産めば終わりって……?」
「あぁ、産まれた子はみんな国が引き取って育てるんですよ。そういう養育施設が何ヵ所もあるんです。楽しいですよー。みんなできょうだいみたいに育ちます」
「虐待とか、親に養育義務があった時代はあったって聞くけど、そういうのも一切ないしね。繁殖可能年齢過ぎるまでの子どもに危害を加えたら重罪だし、まぁ当然っちゃ当然か!」
二人はまた、声高らかに笑った。
貞操観念が違いすぎるこの国の人たちとは、分かり合うのは難しいような気がしてきた。
今確かに言えることは、彼女たちはよくてもミナミは良くないということだ。
不特定多数と日常的に性行為をすることや、卒業するまでずっと妊娠しなければならないこと、ミナミにとっては理解し難いことばかりだ。
(こんなところ、早く出て行かなければ)
より一層その思いが強くなった。
異世界から現実に戻る前例はないものの、他国へ行けば何か変わるはずだ。
少なくともこんな乱れた性観念の国とはサヨナラできるし、死ぬまで働き詰めだったとしても、生理的に無理な男の子どもを産むよりマシである。
そこまで考えて、ふとミナミは疑問が浮かんだ。
「そんなにセックスしても、もし卒業するまで誰も妊娠させることができなかったり、しなかったりしたらどうなるんですか? 税金が上がったり国を追放されたりするんでしょうか?」
子どもは授かり物だ。
いくら身体を重ねてもできないこともあるし、医療がそこまで進んでいなさそうなこの国では、生殖医療の技術もまだまだ発展途上だろう。
だとすれば、無精子症や抗精子抗体など現代ならある程度治療が可能でも、この世界では彼らを妊娠に至らせることはできない。
割合的にもそんな人たちが少なからずいるはずだ。
産みたくても産めない、どうすることもできない人たち。
「そうだな……あぁ、そうだちょっと見てみるかい?」
口を開いたのは先生だった。
放送で一人の職員を校長室に呼び寄せた。
艶のある黒髪が美しい、20代後半くらいの女性が入室してきた。
先生はおもむろにベルトを緩めるとスラックスの前を開けて男性器を舐めるよう指示した。
「私はもう繁殖年齢ではないんだが」
大勢に見られていても少しも恥じることなく、先生のソレは完全に勃ち上がった。
「交尾するぞー」
先生が言うと、女性は全く抵抗することなく下着を脱ぎ始めた。
机に手をついて、先生が挿れやすいようにお尻だけを前に突き出した。
先生は教卓を漁ってローションを取り出し、雑にお尻に塗りたくるとそのままズンッと一気に奥を突いた。
「あっ……あぅ……んん……っ!」
女性は激しい揺さぶりに喘ぎ声が漏れた。
先生は何度か前後すると直ぐに動きを止め、女性の中に大量の白濁液を放った。
放出し終わると、彼女はポーチから丸めた綿を取り出して挿入し、膣に蓋をした。
まるで子種を一滴も取りこぼすまいとしているようだった。
「……ありがとうございます」
性欲処理に使われただけにしか見えないのに、女性は頭を下げて礼を言い、床にこぼれ落ちた体液をハンカチで拭き取った。
先生はすっきりした顔でミナミを見た。
「わかったかい? 子どもができない、子孫を残せない人というのはこうなるんだ。フリーセックス……つまり、交尾を拒否する権利が消失して、いつでもどこでも、誰のどんな性行為にでも応じなければいけなくなるんだ。子どもを残せなければ価値がないからね。子を孕むまで永遠に中出しされるんだよ」
「今ので先生の子を生成できれば永遠の子作りは終わるけどね」
「無理ですよ。だって15年以上ずっと無排出なんですよ? 今さら繁殖なんてできないですって」
少女たちはクスクス笑った。
完全にこの世の価値観に支配されている。
産まれたときから親がおらず、子孫繁栄が何よりも大事なこの世界に生まれれば、そうなるのも仕方ないかも知れない。
けれどミナミはそうではないのだ。
ミナミは平凡ながら幸せな日常を送ってきた。
地方公務員の父と助産師の母、派手好きだが甘えん坊で可愛い妹、そしてミナミ。
ミナミは学校は好きではなかったけど、父は無口だが穏やかで優しく、母はちょっと口うるさいけどいつでもミナミの味方でいてくれ、妹もミナミとは全くタイプが違うのに、お姉ちゃん子でとても可愛かった。
家族みんな仲が良く、家がミナミにとって一番安心できる場所だった。
いつかは自分も自分が育ったような家庭を築きたいとずっと思っていた。
それは異世界に来てしまった今も変わらない。
優しい旦那様と仲良く幸せに暮らしたい、ミナミのその望みは相手を選り好みしなければそんなに難しいことではないと思っていた。
ーーでも。
(この世界では、きっと無理だ)
そもそもミナミが想像する"幸せな家庭"というのが存在しないのだ。
夢を描いたって、実現する方法がないのだ。
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