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第三話
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先生と呼ばれた男は、螺旋階段を上り、上の階にある一室にミナミを案内した。
途中で別棟へと繋がる渡り廊下があり、たくさんの写真が飾られてあった。
歴代の校長や功績を残した学生か、とミナミがぼんやり眺めていると、先生がニヤリとほくそ笑んだ。
「君もこの中に入ってくれると嬉しいがな」
そうして辿り着いたのは、現代であればちょっと大きめな校長室といったところだった。
先生と共に扉を開けると、男子生徒と女子生徒がペアで二組、白髪交じりの初老の男性に何かを報告しているところだった。
皆ミナミが着ているのと同じ制服を着ているからには、この学校の生徒で間違いなさそうだ。
しかし、ミナミはある点に目が釘付けになった。
「え……? この学校おかしくないですか?」
「どこがおかしいのだね? どこもおかしくはないだろう。また新たな子孫が産まれるのだよ、めでたいことじゃないか」
そこにいた女子生徒は二人とも、大きなお腹をしていたからだ。
一人は中学生くらいの女の子で、幼い顔に不釣り合いなまあるいお腹を撫でていた。
隣の男性学生は少し年上か、白いネクタイを緩めながら立っていた。
「先生、オレこれで三人目っす! 白タイ卒業っすよ!」
「あぁ、よくやったな。これからも頑張ってくれよ」
「あたしなんかやっと一人目なのにー。もう、いっつもお兄ちゃんに負けるんだから」
もう一人はミナミと同い年くらいの女の子で、先ほどの子よりもさらに大きいお腹をしていた。
対して男性は「男の子」と呼ぶに相応しい、貧弱な身体つきだ。
「4月20日、フランチェスコの入学時身体検査時の交尾で双子受胎。騎乗位、最奥部に精液量5.2ml、潮吹き有り、挿入前に一回、挿送時に一回絶頂済み……で、合ってるか?」
「はい」
「双胎による難出リスクにはどう備えている?」
「はい、彼女の過去の排出は全て三人体制でしたが、今回は五人に増やして対応していきたいと考えております。挿入促進二名、体制確保兼肛門部圧迫、精飲及び口腔への体液譲渡、排出児誘導及び排出後精塗布、が各一名づつ。排出後には輪姦による精液同時摂取で感染症予防効果を高めながら、月経発来を予防します」
「そうだな、いい心がけだ。男女とも、使われない命のもとなど本来あってはならない。男は作られる全ての精子を女に注ぎ込む必要があり、女は子を孕んでいる状態が最もベストと言える。例え排出直後だろうと、繁殖期間において子が宿っていない状態はなるべく避けた方がいいからな」
「……!? 」
ミナミにとってはあり得ないことを言っているのに、彼女以外は誰も疑問を持たず和やかに談笑していた。
(妊娠している状態がベスト……? そんな訳ないじゃない。それに話を聞くと、出産してすぐに子作りさせられるみたいじゃない。せめて一ヶ月は空けないと駄目なのに、この人たち一体何考えてるの……? )
ミナミは母が助産師で、仕事の話をよく聞かされて育ったから一般的な十八歳よりは出産に関する知識がある。
産後の子作りに関しても、ミナミが思春期になっても明け透けに話して聞かされた。
"四月産まれの子は、きちんと数ヶ月は避妊しないと兄弟姉妹で同学年になっちゃうわよ"
"出産後、一ヶ月は身体を休めないとね。出産は交通事故に遭ったようなもんなんだから。無理したら駄目よ"
(休む間もなく子どもを産めって。絶対おかしいでしょ! )
突っ込みたいことは山ほどあったが、異なる文化に部外者が口を挟むわけにもいかないと判断し、一旦頭の片隅に追いやった。
しかし、自分が身につけている制服が彼女たちのものと同じであることの意味を考えた瞬間、全身から血の気が引いた。
認めたくないが、ここは現実とよく似た異世界で、死後に転生してしまったのだ。
転生した少年少女たちは、大体は転生特典としてチートスキルを持ち、仲間と親交を深めながらその世界になじんでいき、そのまま一生をそこで過ごす。
ミナミが転生した世界での馴染むということは、子を孕み、異様な方法で出産し、それを何度も繰り返していくことなのだ。
(絶対嫌……)
百歩譲って、結婚したカップルに出産義務が生じるのは理解できる。
産むも産まないも本人たちに任せるのが一番だが、少子化を食い止めるならば一人や二人産んで育てよというのは小さい国ならば仕方のないことなのかも知れない。
しかし、彼女たちはどうみてもまだ十代だし、男性との関係も恋人同士ではなさそうだ。
一組目は兄妹だし、二組目も恋人でも友人という雰囲気でもない。
ただ単に適齢期の男と女だからという理由で果実みたいに交配させられただけかも知れない。
可愛いから抱きたいとか、カッコいいから抱かれてもいいとか、そんな生殖に必要な感情も一切ないまま、新たな命を作り続けなければいけないのだ。
途中で別棟へと繋がる渡り廊下があり、たくさんの写真が飾られてあった。
歴代の校長や功績を残した学生か、とミナミがぼんやり眺めていると、先生がニヤリとほくそ笑んだ。
「君もこの中に入ってくれると嬉しいがな」
そうして辿り着いたのは、現代であればちょっと大きめな校長室といったところだった。
先生と共に扉を開けると、男子生徒と女子生徒がペアで二組、白髪交じりの初老の男性に何かを報告しているところだった。
皆ミナミが着ているのと同じ制服を着ているからには、この学校の生徒で間違いなさそうだ。
しかし、ミナミはある点に目が釘付けになった。
「え……? この学校おかしくないですか?」
「どこがおかしいのだね? どこもおかしくはないだろう。また新たな子孫が産まれるのだよ、めでたいことじゃないか」
そこにいた女子生徒は二人とも、大きなお腹をしていたからだ。
一人は中学生くらいの女の子で、幼い顔に不釣り合いなまあるいお腹を撫でていた。
隣の男性学生は少し年上か、白いネクタイを緩めながら立っていた。
「先生、オレこれで三人目っす! 白タイ卒業っすよ!」
「あぁ、よくやったな。これからも頑張ってくれよ」
「あたしなんかやっと一人目なのにー。もう、いっつもお兄ちゃんに負けるんだから」
もう一人はミナミと同い年くらいの女の子で、先ほどの子よりもさらに大きいお腹をしていた。
対して男性は「男の子」と呼ぶに相応しい、貧弱な身体つきだ。
「4月20日、フランチェスコの入学時身体検査時の交尾で双子受胎。騎乗位、最奥部に精液量5.2ml、潮吹き有り、挿入前に一回、挿送時に一回絶頂済み……で、合ってるか?」
「はい」
「双胎による難出リスクにはどう備えている?」
「はい、彼女の過去の排出は全て三人体制でしたが、今回は五人に増やして対応していきたいと考えております。挿入促進二名、体制確保兼肛門部圧迫、精飲及び口腔への体液譲渡、排出児誘導及び排出後精塗布、が各一名づつ。排出後には輪姦による精液同時摂取で感染症予防効果を高めながら、月経発来を予防します」
「そうだな、いい心がけだ。男女とも、使われない命のもとなど本来あってはならない。男は作られる全ての精子を女に注ぎ込む必要があり、女は子を孕んでいる状態が最もベストと言える。例え排出直後だろうと、繁殖期間において子が宿っていない状態はなるべく避けた方がいいからな」
「……!? 」
ミナミにとってはあり得ないことを言っているのに、彼女以外は誰も疑問を持たず和やかに談笑していた。
(妊娠している状態がベスト……? そんな訳ないじゃない。それに話を聞くと、出産してすぐに子作りさせられるみたいじゃない。せめて一ヶ月は空けないと駄目なのに、この人たち一体何考えてるの……? )
ミナミは母が助産師で、仕事の話をよく聞かされて育ったから一般的な十八歳よりは出産に関する知識がある。
産後の子作りに関しても、ミナミが思春期になっても明け透けに話して聞かされた。
"四月産まれの子は、きちんと数ヶ月は避妊しないと兄弟姉妹で同学年になっちゃうわよ"
"出産後、一ヶ月は身体を休めないとね。出産は交通事故に遭ったようなもんなんだから。無理したら駄目よ"
(休む間もなく子どもを産めって。絶対おかしいでしょ! )
突っ込みたいことは山ほどあったが、異なる文化に部外者が口を挟むわけにもいかないと判断し、一旦頭の片隅に追いやった。
しかし、自分が身につけている制服が彼女たちのものと同じであることの意味を考えた瞬間、全身から血の気が引いた。
認めたくないが、ここは現実とよく似た異世界で、死後に転生してしまったのだ。
転生した少年少女たちは、大体は転生特典としてチートスキルを持ち、仲間と親交を深めながらその世界になじんでいき、そのまま一生をそこで過ごす。
ミナミが転生した世界での馴染むということは、子を孕み、異様な方法で出産し、それを何度も繰り返していくことなのだ。
(絶対嫌……)
百歩譲って、結婚したカップルに出産義務が生じるのは理解できる。
産むも産まないも本人たちに任せるのが一番だが、少子化を食い止めるならば一人や二人産んで育てよというのは小さい国ならば仕方のないことなのかも知れない。
しかし、彼女たちはどうみてもまだ十代だし、男性との関係も恋人同士ではなさそうだ。
一組目は兄妹だし、二組目も恋人でも友人という雰囲気でもない。
ただ単に適齢期の男と女だからという理由で果実みたいに交配させられただけかも知れない。
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