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ムーンライズ 3
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結局回らない頭で、体をなんとか起こしてまたメニューを手に取った。
小さな文字で、たくさんドリンクの名前が書いてある。一般的なコーヒーのメニューから、ジュースや、紅茶、あとは、見てもよく分からないなんとかティーが、たくさん並んでる。アルコール類も。
この際、ひとつずつ読んで、おいしそうなのを見つけたら、頼むことにしよう。
だって、水はメニューに見当たらないし。
メニューの他に、テーブルの隅におすすめらしき小さなカードが立て掛けてあるのに目が止まる。
さっきまで、ガタガタと震えていたのに、ストーブで暖められて、今では顔が火照ってる。
まだ酔いは回りっぱなしだし。
なにか、スッキリしていて甘いものが欲しい。
「あっ」
あんまりにも今の気分にピッタリのイラストが色鉛筆で綺麗に描いてあって。思わず声が出た。
「すみません」
お兄さんを呼ぼうと振り返ったら、カウンターの中じゃなくてすぐ側にいた。予測してなかったからびっくりして、おどおどとした態度を取ってしまう。
「あっ、あの」
「はい」
「コーラフロート、ください」
イラストを指差して言うと、お兄さんはちょっと目を見開いた後、目尻をぐんと下げてにっこりと笑った。
「はい、少々お待ち下さい」
お兄さんは頷くと、微笑んだ。
俺のこと、鬱陶しいとは思っていなさそう。背中を向けて去っていこうとする彼に、ハッとした。
「アッ、あのっ」
「はい?」
振り返るお兄さんに、慌てて声をかけた。
「あの、すみません、俺時間分かってなくて。オープンまだなのに入っちゃって……まだ、ですよね」
お兄さんは黙って僕をじっとみつめてる。
俺になんて文句言おうか考えてるんだろうか。その視線に耐えられなくて、最後の方、なんかもじもじしたし。
「いいんですよ、お客さんが来たら、オープンです」
お兄さんは、柔らかい口調でそう言ってくれた。なんていうか、店員さんとしての気遣いトークっていうよりも、人柄から出てきた言葉っぽくて。
一瞬で彼を、いい人認定した。
「お待たせしました」
「あ、どう……も」
少ししてお兄さんが持ってきたのは、大きなワイングラスみたいなのに入ったコーラフロート。氷の浮かんだコーラの上に、ソフトクリームが……てんこ盛りに。イラストともぜんぜん違うし、俺の想像を遥かに超えた高さの巻き巻きのソフトクリームが乗っかってる。その上に、赤いさくらんぼ。
え、これって、これが普通なんですか?
そう聞きたかったけれど、まだオープン前の9時55分だし、失礼な態度は取りたくなくて、言葉を飲み込んだ。
イラストよりも豪華だって、素直に喜んでいいのかな。
とにかく、溶ける前にソフトクリームを食べようと、スプーンですくって頬張った。
「……わ」
思わず、声が漏れた。
甘くて冷たくて、それに、美味しくて。
だいたい、俺はなんでこれを注文したんだろうか。ソフトクリームなんて、前に食べたのがいつだったのか思い出せないくらいなのに。もしかしたら、大人になってからは初めてかもしれない。
こんな美味かったっけ。
コーラだって、久しぶりだ。
ジュースなんて普段から飲まないし。コーヒーか水か、アルコールだし。
うまっ!
めっちゃうまい!
おいしすぎるっ。
さすがに声には出せないけど、心の中でそう唱えながら食べた。
シロップ漬けのさくらんぼだって、幼い頃以来口にすることも目にする事もなかった。
茎の部分を指で摘んで、クリームで白くなったさくらんぼを口に放り込む。
甘酸っぱくて、どこか懐かしくて。
俺、これ好きだったのかもな。
小さな文字で、たくさんドリンクの名前が書いてある。一般的なコーヒーのメニューから、ジュースや、紅茶、あとは、見てもよく分からないなんとかティーが、たくさん並んでる。アルコール類も。
この際、ひとつずつ読んで、おいしそうなのを見つけたら、頼むことにしよう。
だって、水はメニューに見当たらないし。
メニューの他に、テーブルの隅におすすめらしき小さなカードが立て掛けてあるのに目が止まる。
さっきまで、ガタガタと震えていたのに、ストーブで暖められて、今では顔が火照ってる。
まだ酔いは回りっぱなしだし。
なにか、スッキリしていて甘いものが欲しい。
「あっ」
あんまりにも今の気分にピッタリのイラストが色鉛筆で綺麗に描いてあって。思わず声が出た。
「すみません」
お兄さんを呼ぼうと振り返ったら、カウンターの中じゃなくてすぐ側にいた。予測してなかったからびっくりして、おどおどとした態度を取ってしまう。
「あっ、あの」
「はい」
「コーラフロート、ください」
イラストを指差して言うと、お兄さんはちょっと目を見開いた後、目尻をぐんと下げてにっこりと笑った。
「はい、少々お待ち下さい」
お兄さんは頷くと、微笑んだ。
俺のこと、鬱陶しいとは思っていなさそう。背中を向けて去っていこうとする彼に、ハッとした。
「アッ、あのっ」
「はい?」
振り返るお兄さんに、慌てて声をかけた。
「あの、すみません、俺時間分かってなくて。オープンまだなのに入っちゃって……まだ、ですよね」
お兄さんは黙って僕をじっとみつめてる。
俺になんて文句言おうか考えてるんだろうか。その視線に耐えられなくて、最後の方、なんかもじもじしたし。
「いいんですよ、お客さんが来たら、オープンです」
お兄さんは、柔らかい口調でそう言ってくれた。なんていうか、店員さんとしての気遣いトークっていうよりも、人柄から出てきた言葉っぽくて。
一瞬で彼を、いい人認定した。
「お待たせしました」
「あ、どう……も」
少ししてお兄さんが持ってきたのは、大きなワイングラスみたいなのに入ったコーラフロート。氷の浮かんだコーラの上に、ソフトクリームが……てんこ盛りに。イラストともぜんぜん違うし、俺の想像を遥かに超えた高さの巻き巻きのソフトクリームが乗っかってる。その上に、赤いさくらんぼ。
え、これって、これが普通なんですか?
そう聞きたかったけれど、まだオープン前の9時55分だし、失礼な態度は取りたくなくて、言葉を飲み込んだ。
イラストよりも豪華だって、素直に喜んでいいのかな。
とにかく、溶ける前にソフトクリームを食べようと、スプーンですくって頬張った。
「……わ」
思わず、声が漏れた。
甘くて冷たくて、それに、美味しくて。
だいたい、俺はなんでこれを注文したんだろうか。ソフトクリームなんて、前に食べたのがいつだったのか思い出せないくらいなのに。もしかしたら、大人になってからは初めてかもしれない。
こんな美味かったっけ。
コーラだって、久しぶりだ。
ジュースなんて普段から飲まないし。コーヒーか水か、アルコールだし。
うまっ!
めっちゃうまい!
おいしすぎるっ。
さすがに声には出せないけど、心の中でそう唱えながら食べた。
シロップ漬けのさくらんぼだって、幼い頃以来口にすることも目にする事もなかった。
茎の部分を指で摘んで、クリームで白くなったさくらんぼを口に放り込む。
甘酸っぱくて、どこか懐かしくて。
俺、これ好きだったのかもな。
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