6 / 100
第一章
人たらし…?
しおりを挟む
自由気ままな生活をしていたマーガレットは、身の回りの世話をしてくれる使用人たちによく声を掛けていた。
「いつもありがとう」「あなた達のお陰よ」
身分差別が激しく、使用人を人とも思わないような貴族が多いこの国では、マーガレットの様に気さくに使用人に話し掛ける令嬢は特に珍しかった。
平民の愛人を追い出すためにマーガレットに協力しようと思っていた、長年テイラー家に仕えていた上級使用人たちは、次第に考えを変えていったのだった。
((忠誠を誓うのはテイラー伯爵家ではなく、マーガレット様なのでは…?))
上級使用人たちは、次第にマーガレットを「奥様」ではなく「マーガレット様」と、名前で呼ぶようになっていき、屋敷の空気も穏やかなものへと変わっていったのだった。
「マーガレット様、本日はどの様にして過ごされますか?」
オリビアがマーガレットに尋ねた。
「そうね…どうしようかしら…?屋敷の本は全て読み終えてしまったし…刺繍にしましょうか?」
そう答えたマーガレットだったが、一人思い悩んでいた。
(でも、刺繍もやり過ぎてしまってたくさん部屋にあるのよね…私だけでは使い切れそうにもないわね…そうだわ!)
「ねぇ、オリビア…?」
マーガレットはあることを閃き、オリビアに相談したのだった。
その日、マーガレットの元に上級使用人たちが次から次へと訪れていた。
「マーガレット様の刺繍が施されたハンカチを頂けるというのは本当でしょうか…?」
「えぇ、たくさん出来てしまったの。貰って頂けると嬉しいのだけれど…でも、あまり上手ではないのよ…」
照れながら答えるマーガレットに、使用人たちは恐縮しながら強請っていた。
「ぜ、是非とも頂戴したく思います!」
「まぁ、ありがとう。どれでも好きなものを選んで?」
使用人たちはそれぞれ好きなものを選び、喜んで仕事に戻っていった。そんな使用人たちを嬉しそうに見ながら、マーガレットは新たな刺繍を刺していたのだった。
その日の夜、マーガレットはオリビアとセバスを呼び出した。
「これはあなた達のハンカチよ。みんなに遠慮をして、選べなかったでしょう?」
「これは…先程出来上がったものでしょうか…?」
「これを私共の為に…?」
オリビア達は戸惑いながらハンカチを受け取った。
「えぇ、特に二人にはお世話になっているもの」
マーガレットは二人に感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとうございます!」「一生大切に致します!」
喜ぶ二人を見ながらマーガレットは微笑んだ。
「大袈裟よ。でも、喜んで貰えて嬉しいわ」
こうしてテイラー家で働く上級使用人たちは、皆マーガレットのハンカチを大切に持っていたのだが、ある噂が囁かれるようになっていた。
「このハンカチを持つようになってから、良いことばかりが起こる」
「体調も良くなったように感じる」
「これは幸運のハンカチなのでは…?」
次第に、上級使用人たちはニ枚のハンカチを持ち歩くようになっていった。
一枚は普通のハンカチとして、普段使いをする為に。
そして、もう一枚はマーガレットのハンカチ。大事に懐に仕舞い、お守りとして持ち歩くようになったのだった。
マーガレットと上級使用人たちは心を許せる程に仲が深まっていた。
しかし、それを快く思わない者達がいた。
「なによ!奥様に媚び売っちゃってさ!格好悪いったらないわ!」
テイラー家で働く下級使用人たちだった。
「いつもありがとう」「あなた達のお陰よ」
身分差別が激しく、使用人を人とも思わないような貴族が多いこの国では、マーガレットの様に気さくに使用人に話し掛ける令嬢は特に珍しかった。
平民の愛人を追い出すためにマーガレットに協力しようと思っていた、長年テイラー家に仕えていた上級使用人たちは、次第に考えを変えていったのだった。
((忠誠を誓うのはテイラー伯爵家ではなく、マーガレット様なのでは…?))
上級使用人たちは、次第にマーガレットを「奥様」ではなく「マーガレット様」と、名前で呼ぶようになっていき、屋敷の空気も穏やかなものへと変わっていったのだった。
「マーガレット様、本日はどの様にして過ごされますか?」
オリビアがマーガレットに尋ねた。
「そうね…どうしようかしら…?屋敷の本は全て読み終えてしまったし…刺繍にしましょうか?」
そう答えたマーガレットだったが、一人思い悩んでいた。
(でも、刺繍もやり過ぎてしまってたくさん部屋にあるのよね…私だけでは使い切れそうにもないわね…そうだわ!)
「ねぇ、オリビア…?」
マーガレットはあることを閃き、オリビアに相談したのだった。
その日、マーガレットの元に上級使用人たちが次から次へと訪れていた。
「マーガレット様の刺繍が施されたハンカチを頂けるというのは本当でしょうか…?」
「えぇ、たくさん出来てしまったの。貰って頂けると嬉しいのだけれど…でも、あまり上手ではないのよ…」
照れながら答えるマーガレットに、使用人たちは恐縮しながら強請っていた。
「ぜ、是非とも頂戴したく思います!」
「まぁ、ありがとう。どれでも好きなものを選んで?」
使用人たちはそれぞれ好きなものを選び、喜んで仕事に戻っていった。そんな使用人たちを嬉しそうに見ながら、マーガレットは新たな刺繍を刺していたのだった。
その日の夜、マーガレットはオリビアとセバスを呼び出した。
「これはあなた達のハンカチよ。みんなに遠慮をして、選べなかったでしょう?」
「これは…先程出来上がったものでしょうか…?」
「これを私共の為に…?」
オリビア達は戸惑いながらハンカチを受け取った。
「えぇ、特に二人にはお世話になっているもの」
マーガレットは二人に感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとうございます!」「一生大切に致します!」
喜ぶ二人を見ながらマーガレットは微笑んだ。
「大袈裟よ。でも、喜んで貰えて嬉しいわ」
こうしてテイラー家で働く上級使用人たちは、皆マーガレットのハンカチを大切に持っていたのだが、ある噂が囁かれるようになっていた。
「このハンカチを持つようになってから、良いことばかりが起こる」
「体調も良くなったように感じる」
「これは幸運のハンカチなのでは…?」
次第に、上級使用人たちはニ枚のハンカチを持ち歩くようになっていった。
一枚は普通のハンカチとして、普段使いをする為に。
そして、もう一枚はマーガレットのハンカチ。大事に懐に仕舞い、お守りとして持ち歩くようになったのだった。
マーガレットと上級使用人たちは心を許せる程に仲が深まっていた。
しかし、それを快く思わない者達がいた。
「なによ!奥様に媚び売っちゃってさ!格好悪いったらないわ!」
テイラー家で働く下級使用人たちだった。
17
お気に入りに追加
2,950
あなたにおすすめの小説
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。
ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。
───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。
───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。
婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。
今度は異母妹の様子がおかしい?
助けてというなら助けましょう!
※2021年5月15日 完結
※2021年5月16日
お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)
ありがとうございます!
※残酷な表現を含みます、ご注意ください
残念な婚約者~侯爵令嬢の嘆き~
cyaru
恋愛
女の子が皆夢見る王子様‥‥でもね?実際王子の婚約者なんてやってられないよ?
幼い日に決められてしまった第三王子との婚約にうんざりする侯爵令嬢のオーロラ。
嫌われるのも一つの手。だけど、好きの反対は無関心。
そうだ!王子に存在を忘れてもらおう!
ですがその第三王子、実は・・・。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※頑張って更新します。目標は8月25日完結目指して頑張ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる