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第一章

真実の愛と運命の相手

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真実の愛で結ばれたというジェラルドとキャシー。

二人が出会ったのは、ジェラルドとマーガレットが顔合わせをする少し前の事だった。


エイドリアンに勝手に縁談を決められ、むしゃくしゃしていたジェラルドは、屋敷を飛び出して街を一人で歩いていた。

ふと平民の運営する酒場が目に留まり、普段なら絶対に入ることのない薄汚れた小さな酒場にジェラルドは入っていった。

そこで給仕をしていたのがキャシーだった。


ジェラルドは屋敷からそのまま来たので、一目で貴族だとわかる小綺麗な格好をしていた。

お貴族様には関わりたくないと客達が遠巻きに見ていたところ、初めに話しかけた人物がキャシーだった。

「いらっしゃいませ!注文はどうしますか?空いてる席に座ってください!」

ジェラルドは席に座ってから飲み物とつまみを頼み、キャシーはすぐに持って来た。

「どうぞ、食べてください!うちの料理は絶品ですから!」

誰もが遠巻きにジェラルドを見る中で、キャシーだけが普通に話してくれたのだ。

キャシーの可愛らしい顔も妖艶な体付きも好みだったジェラルドは、キャシーに会いに酒場に通うようになっていった。


ジェラルドはエイドリアンに婚約者と顔合わせをするように言われていたが、ずっと逃げ回っていた。しかし、後には引けなくなってしまい、渋々と自分の婚約者に会ったのだった。

マーガレットに会う頃には、ジェラルドの頭にはキャシーのことしかなかった。マーガレットも綺麗な令嬢なのだが、ジェラルドは一切興味を持たなかったのだ。

(ふんっ!冷たい笑顔だ。貴族の令嬢は皆作り笑いをする。それに比べてキャシーの綻ぶような本心からの笑顔は、いつ見ても癒やされる)

ジェラルドはマーガレットとは最低限しか会わず、贈り物も一切しなかった。数える程しか無かった交流も、義務だと言わんばかりの態度で、物の数分で帰って行ったのだった。


そして「ジェラルド様」「キャシー」と、二人が名前で呼ぶようになり、恋人同士になるのに時間はかからなかった。


キャシーはいつもジェラルドを褒め続けていた。

「ジェラルド様って凄いです!尊敬します!」

「ジェラルド様って頼りになります!」

「ジェラルド様はいつも頑張ってて偉いです!」

ジェラルドは、自分を認めてくれて、一切の否定をしないキャシーにのめり込んでいった。


(あの日に酒場に入らなければ、キャシーとは会えていなかった。普段なら絶対に行くことのない酒場に入って、そしてキャシーと出会えたのだ。これは運命に違いない!キャシーは私の真実の愛の相手なんだ!!)

そう考えたジェラルドは、エイドリアンに内緒でキャシーを離れに住まわせた。自分が面倒を見るからと、酒場の給仕を辞めさせたのだが、キャシーは何も言わずに微笑んだだけだった。

(父上は平民がお嫌いだからな…キャシーには申し訳ないが、離れで過ごしてもらう他ない。いくら真実の愛と言っても、平民のキャシーを父上は認めてくれないだろう…だが、私はキャシーしか愛さないし、キャシーとの間にしか子供はいらない!マーガレットとは形だけの結婚だ。キャシーは許してくれるだろうか…?あぁ…真実の愛を前に、私はなんて無力な男なんだ…)

ジェラルドは嘆いていた。


こうして離れで暮らし始めたジェラルド達だったが、離れでの日陰の生活を強いていることに罪悪感もあり、ジェラルドはキャシーに宝石やドレスをたくさん贈った。

喜ぶキャシーが今まで以上に可愛く見えて、ジェラルドはどんどんプレゼントを贈っていった。そして、キャシーに強請られるままに買い与えていた。

ジェラルドが仕事で外出をした帰りには、必ず土産を買って帰っていた。

仕事の殆どは領地経営の勉強と書類仕事だったので、離れでキャシーと過ごす時間の方が長かったのだが、視察で領地を巡ったりもしていた。

ジェラルドが視察に行っている間に、キャシーがマーガレットに突撃していたのだった。
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