20 / 100
第一章
真実の愛と運命の相手
しおりを挟む
真実の愛で結ばれたというジェラルドとキャシー。
二人が出会ったのは、ジェラルドとマーガレットが顔合わせをする少し前の事だった。
エイドリアンに勝手に縁談を決められ、むしゃくしゃしていたジェラルドは、屋敷を飛び出して街を一人で歩いていた。
ふと平民の運営する酒場が目に留まり、普段なら絶対に入ることのない薄汚れた小さな酒場にジェラルドは入っていった。
そこで給仕をしていたのがキャシーだった。
ジェラルドは屋敷からそのまま来たので、一目で貴族だとわかる小綺麗な格好をしていた。
お貴族様には関わりたくないと客達が遠巻きに見ていたところ、初めに話しかけた人物がキャシーだった。
「いらっしゃいませ!注文はどうしますか?空いてる席に座ってください!」
ジェラルドは席に座ってから飲み物とつまみを頼み、キャシーはすぐに持って来た。
「どうぞ、食べてください!うちの料理は絶品ですから!」
誰もが遠巻きにジェラルドを見る中で、キャシーだけが普通に話してくれたのだ。
キャシーの可愛らしい顔も妖艶な体付きも好みだったジェラルドは、キャシーに会いに酒場に通うようになっていった。
ジェラルドはエイドリアンに婚約者と顔合わせをするように言われていたが、ずっと逃げ回っていた。しかし、後には引けなくなってしまい、渋々と自分の婚約者に会ったのだった。
マーガレットに会う頃には、ジェラルドの頭にはキャシーのことしかなかった。マーガレットも綺麗な令嬢なのだが、ジェラルドは一切興味を持たなかったのだ。
(ふんっ!冷たい笑顔だ。貴族の令嬢は皆作り笑いをする。それに比べてキャシーの綻ぶような本心からの笑顔は、いつ見ても癒やされる)
ジェラルドはマーガレットとは最低限しか会わず、贈り物も一切しなかった。数える程しか無かった交流も、義務だと言わんばかりの態度で、物の数分で帰って行ったのだった。
そして「ジェラルド様」「キャシー」と、二人が名前で呼ぶようになり、恋人同士になるのに時間はかからなかった。
キャシーはいつもジェラルドを褒め続けていた。
「ジェラルド様って凄いです!尊敬します!」
「ジェラルド様って頼りになります!」
「ジェラルド様はいつも頑張ってて偉いです!」
ジェラルドは、自分を認めてくれて、一切の否定をしないキャシーにのめり込んでいった。
(あの日に酒場に入らなければ、キャシーとは会えていなかった。普段なら絶対に行くことのない酒場に入って、そしてキャシーと出会えたのだ。これは運命に違いない!キャシーは私の真実の愛の相手なんだ!!)
そう考えたジェラルドは、エイドリアンに内緒でキャシーを離れに住まわせた。自分が面倒を見るからと、酒場の給仕を辞めさせたのだが、キャシーは何も言わずに微笑んだだけだった。
(父上は平民がお嫌いだからな…キャシーには申し訳ないが、離れで過ごしてもらう他ない。いくら真実の愛と言っても、平民のキャシーを父上は認めてくれないだろう…だが、私はキャシーしか愛さないし、キャシーとの間にしか子供はいらない!マーガレットとは形だけの結婚だ。キャシーは許してくれるだろうか…?あぁ…真実の愛を前に、私はなんて無力な男なんだ…)
ジェラルドは嘆いていた。
こうして離れで暮らし始めたジェラルド達だったが、離れでの日陰の生活を強いていることに罪悪感もあり、ジェラルドはキャシーに宝石やドレスをたくさん贈った。
喜ぶキャシーが今まで以上に可愛く見えて、ジェラルドはどんどんプレゼントを贈っていった。そして、キャシーに強請られるままに買い与えていた。
ジェラルドが仕事で外出をした帰りには、必ず土産を買って帰っていた。
仕事の殆どは領地経営の勉強と書類仕事だったので、離れでキャシーと過ごす時間の方が長かったのだが、視察で領地を巡ったりもしていた。
ジェラルドが視察に行っている間に、キャシーがマーガレットに突撃していたのだった。
二人が出会ったのは、ジェラルドとマーガレットが顔合わせをする少し前の事だった。
エイドリアンに勝手に縁談を決められ、むしゃくしゃしていたジェラルドは、屋敷を飛び出して街を一人で歩いていた。
ふと平民の運営する酒場が目に留まり、普段なら絶対に入ることのない薄汚れた小さな酒場にジェラルドは入っていった。
そこで給仕をしていたのがキャシーだった。
ジェラルドは屋敷からそのまま来たので、一目で貴族だとわかる小綺麗な格好をしていた。
お貴族様には関わりたくないと客達が遠巻きに見ていたところ、初めに話しかけた人物がキャシーだった。
「いらっしゃいませ!注文はどうしますか?空いてる席に座ってください!」
ジェラルドは席に座ってから飲み物とつまみを頼み、キャシーはすぐに持って来た。
「どうぞ、食べてください!うちの料理は絶品ですから!」
誰もが遠巻きにジェラルドを見る中で、キャシーだけが普通に話してくれたのだ。
キャシーの可愛らしい顔も妖艶な体付きも好みだったジェラルドは、キャシーに会いに酒場に通うようになっていった。
ジェラルドはエイドリアンに婚約者と顔合わせをするように言われていたが、ずっと逃げ回っていた。しかし、後には引けなくなってしまい、渋々と自分の婚約者に会ったのだった。
マーガレットに会う頃には、ジェラルドの頭にはキャシーのことしかなかった。マーガレットも綺麗な令嬢なのだが、ジェラルドは一切興味を持たなかったのだ。
(ふんっ!冷たい笑顔だ。貴族の令嬢は皆作り笑いをする。それに比べてキャシーの綻ぶような本心からの笑顔は、いつ見ても癒やされる)
ジェラルドはマーガレットとは最低限しか会わず、贈り物も一切しなかった。数える程しか無かった交流も、義務だと言わんばかりの態度で、物の数分で帰って行ったのだった。
そして「ジェラルド様」「キャシー」と、二人が名前で呼ぶようになり、恋人同士になるのに時間はかからなかった。
キャシーはいつもジェラルドを褒め続けていた。
「ジェラルド様って凄いです!尊敬します!」
「ジェラルド様って頼りになります!」
「ジェラルド様はいつも頑張ってて偉いです!」
ジェラルドは、自分を認めてくれて、一切の否定をしないキャシーにのめり込んでいった。
(あの日に酒場に入らなければ、キャシーとは会えていなかった。普段なら絶対に行くことのない酒場に入って、そしてキャシーと出会えたのだ。これは運命に違いない!キャシーは私の真実の愛の相手なんだ!!)
そう考えたジェラルドは、エイドリアンに内緒でキャシーを離れに住まわせた。自分が面倒を見るからと、酒場の給仕を辞めさせたのだが、キャシーは何も言わずに微笑んだだけだった。
(父上は平民がお嫌いだからな…キャシーには申し訳ないが、離れで過ごしてもらう他ない。いくら真実の愛と言っても、平民のキャシーを父上は認めてくれないだろう…だが、私はキャシーしか愛さないし、キャシーとの間にしか子供はいらない!マーガレットとは形だけの結婚だ。キャシーは許してくれるだろうか…?あぁ…真実の愛を前に、私はなんて無力な男なんだ…)
ジェラルドは嘆いていた。
こうして離れで暮らし始めたジェラルド達だったが、離れでの日陰の生活を強いていることに罪悪感もあり、ジェラルドはキャシーに宝石やドレスをたくさん贈った。
喜ぶキャシーが今まで以上に可愛く見えて、ジェラルドはどんどんプレゼントを贈っていった。そして、キャシーに強請られるままに買い与えていた。
ジェラルドが仕事で外出をした帰りには、必ず土産を買って帰っていた。
仕事の殆どは領地経営の勉強と書類仕事だったので、離れでキャシーと過ごす時間の方が長かったのだが、視察で領地を巡ったりもしていた。
ジェラルドが視察に行っている間に、キャシーがマーガレットに突撃していたのだった。
35
お気に入りに追加
2,962
あなたにおすすめの小説
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
冷遇王女の脱出婚~敵国将軍に同情されて『政略結婚』しました~
真曽木トウル
恋愛
「アルヴィナ、君との婚約は解消するよ。君の妹と結婚する」
両親から冷遇され、多すぎる仕事・睡眠不足・いわれのない悪評etc.に悩まされていた王女アルヴィナは、さらに婚約破棄まで受けてしまう。
そんな心身ともボロボロの彼女が出会ったのは、和平交渉のため訪れていた10歳上の敵国将軍・イーリアス。
一見冷徹な強面に見えたイーリアスだったが、彼女の置かれている境遇が酷すぎると強く憤る。
そして彼が、アルヴィナにした提案は────
「恐れながら王女殿下。私と結婚しませんか?」
勢いで始まった結婚生活は、ゆっくり確実にアルヴィナの心と身体を癒していく。
●『王子、婚約破棄したのは~』と同じシリーズ第4弾。『小説家になろう』で先行して掲載。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
お飾り王妃は愛されたい
神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。
私とは違う人との間に。
愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
天使のようだった初恋の人に十年ぶりに再会したら、ものすごく逞しく?!なっていました ~激変にびっくりです~
四折 柊
恋愛
マリエルの初恋の男の子は天使のように美しかった。彼(当時13歳)が他国に留学することになりマリエル(当時8歳)は見送りの時に「帰ってきたら結婚して」とプロポーズをした。彼は微妙に返事を濁したが婚約者(仮)として彼を待ち続けた。そして十年振りに帰国した彼と再会をしたのだが……。彼の姿に昔の天使ような面影はどこにもなく、体はゴリラ?並みに逞しくなっていて呆然としてしまう。「私の天使様は、どこへいってしまったのーーーー!!」 そんなマリエルの恋の行方は?!追記(注意:初恋は成就しません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる