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スコットの甘え

好きなのはサラだけ

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一度行ってしまったら、何度行っても変わらない。


俺はそう思って、同期に誘われる度に娼館に通った。

毎回同じ人を指名した。なんとなく雰囲気がサラに似ていたからだ。

「サラって恋人の名前?私に似てるのかしら?恋人に見立てて抱くなんて、見習い君は可愛いのね」

そう言われてから、サラの名前を呼ばなくなった。


村を出てから一年経って、俺はやっと騎士になれた。

たまたま遠征先が村の先の国境だったから、先輩が気を利かせてくれて、村に数日滞在出来ることになった。

(ようやくサラに会える。胸を張って会いに行こう)


久しぶりに会ったサラは変わっていなかった。

素朴で純粋なままだった。

(変わらないな。王都に行って俺は変わったよ。田舎者なんて呼ばれなくなったよ)

そう思いながら、サラの作ったオムライスを食べた。


食堂も閉店して、静かな部屋でサラと二人。

俺達は結ばれた。幸せだった。


「待ってるから」

そう言ってサラは送り出してくれた。


サラに会えなくても、俺はサラの為に頑張った。

あの村の騎士になる為に…

サラに格好良いって言ってもらえる為に…


村の近くに遠征に行った時は、先輩が気を利かせてくれて、数ヶ月に一回、村に行く休みをくれた。俺はサラに会いに行った。

でも…

サラには滅多に会えなくて、寂しく感じる時間が増えていった。

友達も家族もいない。見知った顔は仲間だけ…

心の隙間を埋めるように、俺は娼館に通っていた。


何処へ行っても同じ。

サラはいない。誰も知っている人もいない。その時に優しくしれくれた人と、一緒に過ごすようになっていた。


サラは大事だ。愛してる。いつか結婚したいと思っている。

でも、暫くは言われるがままに遠征に行かなければいけない。一通り廻ってから配属の希望が聞かれるからだ。

(あと数年だ。頑張ればあの村に駐在できる。そうしたら、サラにプロポーズをしよう)

俺はそう思っていたんだ。


今回の遠征先には娼館がなかった。

酒場で給仕をしている、どこかサラに似たベスに声をかけられて、俺は誘いに乗った。

ベスとは滞在している間だけという約束で付き合っていた。

罪悪感もあったから、ベスに誘われたらそのまま一緒に出かけていた。一緒に過ごすベスに愛着はあった。


でも…

(本当に好きなのはサラだ。ベスとは今だけの関係。俺はサラの元へ戻るんだ)

そう思っていたんだ。
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全話予約公開にしたので、21日で完結します。

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