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本編
静かな空間
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あれから三ヶ月…
私は食堂で忙しく働いていた。
スコットからは一度だけ手紙が来た。無事に騎士団に入団できて、騎士になるために訓練を頑張ってるらしい。
この村は王都から遠いし、彼も訓練で忙しいだろうと思って、手紙はあまり期待していなかった。
私からも、こちらの近況と頑張って欲しいという手紙を、この間見つけた四葉のクローバーで作った栞と一緒に送ったきりだった。
それから忘れた頃にスコットから手紙が届いて、その返事を書いて送った。本当はもっと手紙を送りたかったけど、訓練を頑張ってる彼の迷惑になりたくなくて、我慢していた。
そんな時、村に新しく商会の店舗ができることになった。
開店準備のために人の出入りが増えて、食堂も毎日大繁盛でずっと忙しかった。それもあって、スコットからの返事が届くまでは手紙を送れなかった。
やっと落ち着いた頃には、孤児院を出てから一年が経っていた。彼には一度も会えていない。
そんなある日…
私は昼までの当番だったから、昼食の忙しい時間も終わって、帰る準備をしていた。
「お疲れ様です!」
そう言って食堂を出ると、大きな男の人が木に寄りかかって立っていた。
「よぉ、久しぶり」
声を聞いて初めて誰かわかった。顔付きも体格も、以前とは比べ物にならないくらいに、別人みたいだった。
「え…?もしかしてスコット?なんでいるの?訓練は…?」
私はびっくりして、疑問ばかりが口から出た。
そんな私を見て、スコットは笑いながら言った。
「酷え言いぐさ。せっかく会いに来たのに…」
「ごめんごめん。いると思わなくてびっくりして…元気だった?なんか逞しくなったね!」
声を聞けばスコットなのに、顔を見ると知らない人と話している様な気持ちになった。
(久しぶりだからなのかな?すごくドキドキする…)
一年ぶりに会って緊張していた私に、スコットは嬉しい報告をしてくれた。
「サラ。俺、ようやく騎士になれたんだ!」
「本当に?おめでとう!スコットなら絶対大丈夫だって信じてたよ!お祝いしなきゃだね!」
彼が騎士になれたことが、本当に嬉しかったんだ。
「ありがとう。でも…これから暫くは、色んな所に遠征に行かないといけないんだ…サラとは滅多に会えなくなるかもしれない…」
スコットの言葉に動揺したけど、夢が叶ったのだからと応援することにした。でも、寂しい気持ちは消せなかった。
(やっと会えたと思ったのに、また会えないんだ…遠征ってどこまで行くんだろう…?)
「とりあえず部屋に入りなよ。お店の裏の方から二階に上がれるからさ、お茶でも出すよ」
私の彼を部屋に招き入れた。また会えなくなるなら、もう少し彼と一緒にいたかったんだ。
「綺麗にしてるじゃん、サラっぽい部屋。食堂の上に住んでるんだな」
私の部屋を見渡しながら、スコットが言った。
「そうなの。女将さんは自分の家があるし、ここには誰も住んでないからって言ってくれて、住まわせてもらってるの」
「ふーん、そうなんだ…」
椅子に座った彼にお茶を出して、私達は色んな話をした。
彼の話を聞いて、ずっと頑張っていたんだなって感じて、凄く嬉しくなった。会えなかった一年の間に起きた私の話も、たくさん聞いてもらった。
気が付いたら、窓の外が夕焼け色に染まっていた。
「もうこんな時間!夜ご飯食べて行く?なにか簡単なもので良ければ作るよ!」
そう聞いた私に、スコットは嬉しそうに答えた。
「サラのオムライスが食いたい。よく孤児院で作ってくれたやつ」
(孤児院に居た時もよく言ってたな…見た目が変わっても、スコットはスコットなんだよね)
私は嬉しくなって、オムライスを作った。
「美味い!やっぱりオムライスはこれだよな!」
彼はあっという間にオムライスを平らげていた。そんな彼は昔のままで、変わらない部分を見つけられて安心したんだ。
「ふぅ。美味かった…」
そう言いながらお腹をさするスコットに、私は食後のお茶を出した。
お茶を一口飲んだ後、彼は話しだした。
「なぁ、サラ。俺、二日後には国境に行かないと行けないんだ…今回はたまたまこの村が通り道だったから、先輩が里帰りをしても良いって言ってくれたんだ…」
「そうなんだ…二日しかいれないんだ…でも、仕事だもんね…仕方ないよ。頑張ってね!」
私は悲しくなったけど、頑張る彼を応援したかった。
「だからさ、ここに泊めてくれない?サラと一緒に過ごしたいんだ」
私は自分の鼓動が早くなるのを感じた。
さっきまでガヤガヤと賑わう声が下から聞こえていたのに、食堂も閉まって誰もいない。私達しかいない世界みたいに、物音一つ無い、静かな空間だった。
その日の夜、私達は結ばれた。スコットに愛されているんだって実感ができて、幸せだった。
それから二日間、スコットは私の部屋で寝泊まりをした。
食堂の仕事が終わってから、私の部屋で一緒に過ごしていた。少しの時間しか一緒に居られなかったけど、それでも嬉しかったんだ。
「じゃぁ、また来るよ。待たせちゃうけど、絶対に戻って来るから…だから待ってて」
そう言ってスコットは国境へと向かった。
私は食堂で忙しく働いていた。
スコットからは一度だけ手紙が来た。無事に騎士団に入団できて、騎士になるために訓練を頑張ってるらしい。
この村は王都から遠いし、彼も訓練で忙しいだろうと思って、手紙はあまり期待していなかった。
私からも、こちらの近況と頑張って欲しいという手紙を、この間見つけた四葉のクローバーで作った栞と一緒に送ったきりだった。
それから忘れた頃にスコットから手紙が届いて、その返事を書いて送った。本当はもっと手紙を送りたかったけど、訓練を頑張ってる彼の迷惑になりたくなくて、我慢していた。
そんな時、村に新しく商会の店舗ができることになった。
開店準備のために人の出入りが増えて、食堂も毎日大繁盛でずっと忙しかった。それもあって、スコットからの返事が届くまでは手紙を送れなかった。
やっと落ち着いた頃には、孤児院を出てから一年が経っていた。彼には一度も会えていない。
そんなある日…
私は昼までの当番だったから、昼食の忙しい時間も終わって、帰る準備をしていた。
「お疲れ様です!」
そう言って食堂を出ると、大きな男の人が木に寄りかかって立っていた。
「よぉ、久しぶり」
声を聞いて初めて誰かわかった。顔付きも体格も、以前とは比べ物にならないくらいに、別人みたいだった。
「え…?もしかしてスコット?なんでいるの?訓練は…?」
私はびっくりして、疑問ばかりが口から出た。
そんな私を見て、スコットは笑いながら言った。
「酷え言いぐさ。せっかく会いに来たのに…」
「ごめんごめん。いると思わなくてびっくりして…元気だった?なんか逞しくなったね!」
声を聞けばスコットなのに、顔を見ると知らない人と話している様な気持ちになった。
(久しぶりだからなのかな?すごくドキドキする…)
一年ぶりに会って緊張していた私に、スコットは嬉しい報告をしてくれた。
「サラ。俺、ようやく騎士になれたんだ!」
「本当に?おめでとう!スコットなら絶対大丈夫だって信じてたよ!お祝いしなきゃだね!」
彼が騎士になれたことが、本当に嬉しかったんだ。
「ありがとう。でも…これから暫くは、色んな所に遠征に行かないといけないんだ…サラとは滅多に会えなくなるかもしれない…」
スコットの言葉に動揺したけど、夢が叶ったのだからと応援することにした。でも、寂しい気持ちは消せなかった。
(やっと会えたと思ったのに、また会えないんだ…遠征ってどこまで行くんだろう…?)
「とりあえず部屋に入りなよ。お店の裏の方から二階に上がれるからさ、お茶でも出すよ」
私の彼を部屋に招き入れた。また会えなくなるなら、もう少し彼と一緒にいたかったんだ。
「綺麗にしてるじゃん、サラっぽい部屋。食堂の上に住んでるんだな」
私の部屋を見渡しながら、スコットが言った。
「そうなの。女将さんは自分の家があるし、ここには誰も住んでないからって言ってくれて、住まわせてもらってるの」
「ふーん、そうなんだ…」
椅子に座った彼にお茶を出して、私達は色んな話をした。
彼の話を聞いて、ずっと頑張っていたんだなって感じて、凄く嬉しくなった。会えなかった一年の間に起きた私の話も、たくさん聞いてもらった。
気が付いたら、窓の外が夕焼け色に染まっていた。
「もうこんな時間!夜ご飯食べて行く?なにか簡単なもので良ければ作るよ!」
そう聞いた私に、スコットは嬉しそうに答えた。
「サラのオムライスが食いたい。よく孤児院で作ってくれたやつ」
(孤児院に居た時もよく言ってたな…見た目が変わっても、スコットはスコットなんだよね)
私は嬉しくなって、オムライスを作った。
「美味い!やっぱりオムライスはこれだよな!」
彼はあっという間にオムライスを平らげていた。そんな彼は昔のままで、変わらない部分を見つけられて安心したんだ。
「ふぅ。美味かった…」
そう言いながらお腹をさするスコットに、私は食後のお茶を出した。
お茶を一口飲んだ後、彼は話しだした。
「なぁ、サラ。俺、二日後には国境に行かないと行けないんだ…今回はたまたまこの村が通り道だったから、先輩が里帰りをしても良いって言ってくれたんだ…」
「そうなんだ…二日しかいれないんだ…でも、仕事だもんね…仕方ないよ。頑張ってね!」
私は悲しくなったけど、頑張る彼を応援したかった。
「だからさ、ここに泊めてくれない?サラと一緒に過ごしたいんだ」
私は自分の鼓動が早くなるのを感じた。
さっきまでガヤガヤと賑わう声が下から聞こえていたのに、食堂も閉まって誰もいない。私達しかいない世界みたいに、物音一つ無い、静かな空間だった。
その日の夜、私達は結ばれた。スコットに愛されているんだって実感ができて、幸せだった。
それから二日間、スコットは私の部屋で寝泊まりをした。
食堂の仕事が終わってから、私の部屋で一緒に過ごしていた。少しの時間しか一緒に居られなかったけど、それでも嬉しかったんだ。
「じゃぁ、また来るよ。待たせちゃうけど、絶対に戻って来るから…だから待ってて」
そう言ってスコットは国境へと向かった。
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全話予約公開にしたので、21日で完結します。
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