上 下
105 / 113

帰宅後

しおりを挟む

 「は~、やっと帰って来れた! 帝国っ!」

 教国での事件が解決してから私達は休む間もなく船に乗った。
 元々そんなに長くいる予定ではなかったのに、色々予想外のことが起きすぎてバタバタの出国になってしまったのだ。

 でもこれでやっとやっと、クレンセシアに建てた家を見に行ける!

 「リア! 狩りだっ!」

 「大森林だっ!」

 しばらく狩りをしていなかった2匹は大森林に行けるのがよほど楽しみなようだ。






 「2週間後、獣国の王子が来るんだ」

 王宮へ行くと、皇帝陛下の元へ行き教国での報告を済ませた。聖女任命の祝いと急な教国への労いの後、皇帝陛下が言った一言がこれだ。
 
 「は……い……??」

 「ち、父上……?」

 これはウィルフレッド様も初耳のようだ。

 「2人が教国へ行ってすぐに連絡が来たんだ。特に何か用事があってくるわけじゃないんだけどねぇ。ほら、ウィルフレッドはわかるだろ? いつものだよ」

 「いつもの?」

 「あぁ、獣人は人より身体能力が高くて実力社会だろう? 獣国の王子もかなりの武闘派で、毎年のようにうちに来て大森林で狩りをするんだ」

 王子が大森林で狩り!?

 「まぁオレリアが住んでいるような大森林の奥へは行かなけどね」

 ウィルフレッド様は私が驚いているのがわかったのか笑いながらそう付け足した。
 
 「だから、ウィルフレッドとアールグレーン嬢にはその狩りに同行して欲しいんだ。この国で他国の王子が亡くなりでもしたら大変なことになるからね、いつも騎士団を同行させるんだけど獣人は結構無茶をするからアールグレーン嬢が同行してくれるほど安全なことはない」

 ええ~……。

 「同行するのはいいんですけど、その狩りにはノアとネージュも連れて行ってもいいですか?」

 これだけ久しぶりで楽しみにしている狩りが先延ばしになったら、私が大森林に行っている間に勝手にどこに狩りに行かれるかわからない。

 「それはもちろん。むしろ安全性が上がるというものだ」

 「うーん、まぁそれなら」

 最優先はあの2匹のストレス発散だからね。

 獣国の王子がくるのはまだ1週間先だというので、とりあえずその間にクレンセシアの家だけ見てくることにした。
ノアとネージュとかっ飛ばせば全然余裕なのだ。

 必要なものはアイテムボックスに全て入っているので、私たちはそのままクレンセシアに向かった。

 「おいっ! 見にくるのが遅いぞ!」

 ロドリグさんのところに行くと、そんなふうに言いつつも早く見せたいのかソワソワワクワクした顔をしていた。

 出来上がった家はとっても立派で内装も家具も私好みの完璧な仕上がりだった。ちょっとした所まで柄が彫ってあったりで、ロドリグさんのこだわりがこれでもかというほど詰まっている。

 「やってやったぜ! 俺の最高傑作だっ!」

 元々町1番の大工と言われているロドリグさんに、大森林の最高級素材を際限なく思いっきり使って家を建ててもらったのだ。最高にならないはずがない。

 そんな最高な家に泊まれないことを嘆きつつ、次は大森林の家へと急いだ。

 大森林の家もこんなに長い間帰らない予定ではなかったので、色々片付けたいものやらやりたいことが溜まっていたのだ。
 その間ノアとネージュは大森林に放して狩りをさせておけばちょうどいい。数日でもちょっとした息抜きにはなる。
 そうしてノアとネージュを狩りに行かせている間に家の掃除や、改装、作っている途中だった家具などを完成させる。






 「リアー!! 大物だぞ!」

 「こーんな大きいぞ!」

 大森林最終日、まだ帰りたくないと駄々を捏ねる2匹を狩りへと送り出して夕食を用意していると、ノアとネージュが高揚した顔で家へと戻ってきた。

 見て見てとうるさいので家から出ると、家の前には小山が。

 「な、なにこれぇ!?」

 「「ふっふっふっ……!! 風竜だっ!!」」

 「竜!!?」

 竜種といえば、この家がある岩壁の向こうに生息しているはず。

 「まさかこの壁の向こうへ行ったの!?」

 「最終日だからな! ちょっと覗いただけだ」

 「そうだ。ちょっと覗いたらちっこい風竜がいたから狩ってきたんだ」

 確かに風竜にしては小さいけれど、魔物としてはかなりの大物だ。

 「危ないじゃない!」

 「危なくなんかないぞ! ちょっと浅い所を覗いただけだ」

 「そうだ! 俺たちはフェンリルとグリフォンだぞ!」

 それはわかってるけど! 

 「心配なんだよ~」

 ノアとネージュは勝手に岩壁の向こうへ行ったことを怒られ、今度からは行く時は一緒に行くと約束させられたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

一家の恥と言われた令嬢ですが、嫁ぎ先で本領を発揮させていただきます

風見ゆうみ
恋愛
ベイディ公爵家の次女である私、リルーリアは貴族の血を引いているのであれば使えて当たり前だと言われる魔法が使えず、両親だけでなく、姉や兄からも嫌われておりました。 婚約者であるバフュー・エッフエム公爵令息も私を馬鹿にしている一人でした。 お姉様の婚約披露パーティーで、お姉様は現在の婚約者との婚約破棄を発表しただけでなく、バフュー様と婚約すると言い出し、なんと二人の間に出来た子供がいると言うのです。 責任を取るからとバフュー様から婚約破棄された私は「初夜を迎えることができない」という条件で有名な、訳アリの第三王子殿下、ルーラス・アメル様の元に嫁ぐことになります。 実は数万人に一人、存在するかしないかと言われている魔法を使える私ですが、ルーラス様の訳ありには、その魔法がとても効果的で!? そして、その魔法が使える私を手放したことがわかった家族やバフュー様は、私とコンタクトを取りたがるようになり、ルーラス様に想いを寄せている義姉は……。 ※レジーナブックス様より書籍発売予定です! ※本編完結しました。番外編や補足話を連載していきます。のんびり更新です。 ※作者独自の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

【完結】些細な呪いを夫にかけ続けている妻です

ユユ
ファンタジー
シャルム王国を含むこの世界は魔法の世界。 幼少期あたりに覚醒することがほとんどで、 一属性で少しの魔力を持つ人が大半。 稀に魔力量の大きな人や 複数属性持ちの人が現れる。 私はゼロだった。発現無し。 政略結婚だった夫は私を蔑み 浮気を繰り返す。 だから私は夫に些細な仕返しを することにした。 * 作り話です * 少しだけ大人表現あり * 完結保証付き * 3万5千字程度

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います

かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。 現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。 一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。 【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。 癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。 レイナの目標は自立する事なのだが……。

『絶対に許さないわ』 嵌められた公爵令嬢は自らの力を使って陰湿に復讐を遂げる

黒木  鳴
ファンタジー
タイトルそのまんまです。殿下の婚約者だった公爵令嬢がありがち展開で冤罪での断罪を受けたところからお話しスタート。将来王族の一員となる者として清く正しく生きてきたのに悪役令嬢呼ばわりされ、復讐を決意して行動した結果悲劇の令嬢扱いされるお話し。

処理中です...