上 下
95 / 113

力の証明 1

しおりを挟む
 今私は大ホールの横の控え室で出番を待っている。
 教皇聖下が私を聖女に任命することになった経緯を話した後私が入場し、聖下が用意したパーフェクトヒールを使用しなければ治らない状態の患者を治療した後任命式、そしてすぐに国中に新しい聖女の誕生を発表し、3日後簡単なパレードを行うという。

 超過密ぶっ飛ばしスケジュール!!

 しかもなにを話しているのかまでは聞こえないが、今も大ホールからはザワザワとした声が聞こえる。

 本来ならば回復魔法の才能がありそうな子は幼い時から神殿で回復魔法を学んで、そんな才能があるら回復魔法の使い手のなかから選ばれた者が聖女となるので、こんな急に聖女レベルの回復魔法の使い手が現れました! ということはないらしい。

 たまに例外もあるけれど、その場合もどこどこの国でこんな素晴らしい回復魔法の使い手がいるらしい。聖女候補として我が国に招待したらどうか、というところから始まるらしい。

 私は例外中の例外。反発も多そうだ。今も騒めきが聞こえてくる大ホールの中がどうなっているのかも想像がつく。

 正直言って回復魔法で黙らせる自信はある。 
 というか、回復魔法じゃなくても魔法なら自信がある。

 かつて魔法で公爵家を興した伝説の魔法使いアデライトの知識と、制御ができず無意識に抑え込んでいたほどの魔力量。

 負けるはずがない。

 けど、けど……! どうしてここ最近の私はこんなに色々なことに巻き込まれるの……!?
 王国からでたから!? 王国以外はこういうのが普通なのかしら……。

 「オレリア、大丈夫だよ。オレリアほどの回復魔法使い、認められないはずがない。現に皇帝と私が使える限りの力を使って探しても、母上を治せる回復魔法の使い手はオレリア以外いなかったのだから」

 うんうんと唸りながら考えている私を心配したのか、ウィルフレッド様が声をかけてくる。

 「あ、ありがとうございます。少し緊張してしまって」

 ウィルフレッド様には入場する際のエスコートをお願いしているのだ。

「そろそろみたいだ。行こう」

 ウィルフレッド様に手を引かれ、重く豪華な扉が開かれ中へと進み、教皇聖下の横へと並ぶ。

 「彼女が新たな聖女候補、オレリア・アールグレーン嬢だ」

 新たに任命される聖女に向けた歓喜。
 急に現れた聖女に向ける疑惑。不満。

 様々な視線を感じるが、一際嫌な視線を感じそちらに目を向けると50代くらいの脂ぎった肉の塊とでも言えるような男がいた。とても聖職者とは思えない見てくれをしているが、教皇の近くにいるということはそれなりに階級も高いのだろう。
 
 その男は目が合うとニヤリと笑い口を開いた。

「聖下、私はまだ納得していませんよ。皆だってそうです。そんなに強い回復魔法の使い手ならば噂くらい聞きていてもよいもの。セサル卿が手柄欲しさにそこそこ使える回復魔法の使い手を連れてきたのでしょう。帝国の皇妃様を治したというのも無理がある話です」

 それにうんうんと頷き賛同する者も多い。

 というかセサルさんで枢機卿だったのね。
 ナンバー2だとは聞いていたけれどあの性格なので全然しっくりこない。

 「ここで私が何を言っても力を証明することは難しいでしょう。手っ取り早く、力の証明を始めましょう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一家の恥と言われた令嬢ですが、嫁ぎ先で本領を発揮させていただきます

風見ゆうみ
恋愛
ベイディ公爵家の次女である私、リルーリアは貴族の血を引いているのであれば使えて当たり前だと言われる魔法が使えず、両親だけでなく、姉や兄からも嫌われておりました。 婚約者であるバフュー・エッフエム公爵令息も私を馬鹿にしている一人でした。 お姉様の婚約披露パーティーで、お姉様は現在の婚約者との婚約破棄を発表しただけでなく、バフュー様と婚約すると言い出し、なんと二人の間に出来た子供がいると言うのです。 責任を取るからとバフュー様から婚約破棄された私は「初夜を迎えることができない」という条件で有名な、訳アリの第三王子殿下、ルーラス・アメル様の元に嫁ぐことになります。 実は数万人に一人、存在するかしないかと言われている魔法を使える私ですが、ルーラス様の訳ありには、その魔法がとても効果的で!? そして、その魔法が使える私を手放したことがわかった家族やバフュー様は、私とコンタクトを取りたがるようになり、ルーラス様に想いを寄せている義姉は……。 ※レジーナブックス様より書籍発売予定です! ※本編完結しました。番外編や補足話を連載していきます。のんびり更新です。 ※作者独自の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした

桜月雪兎
ファンタジー
アバント伯爵家の次女エリアンティーヌは伯爵の亡き第一夫人マリリンの一人娘。 彼女は第二夫人や義姉から嫌われており、父親からも疎まれており、実母についていた侍女や従者に義弟のフォルクス以外には冷たくされ、冷遇されている。 そんな中で婚約者である第一王子のバラモースに婚約破棄をされ、後釜に義姉が入ることになり、冤罪をかけられそうになる。 そこでエリアンティーヌの素性や両国の盟約の事が表に出たがエリアンティーヌは自身を蔑ろにしてきたフォルクス以外のアバント伯爵家に何の感情もなく、実母の実家に向かうことを決意する。 すると、予想外な事態に発展していった。 *作者都合のご都合主義な所がありますが、暖かく見ていただければと思います。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。 両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。 そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった… 本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;) 本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。 ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...