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パーティー後

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「そこで使者団は魔女殿と従魔達に出会い、話を聞いた魔女殿はウィルフレッドと騎士団長を従魔にのせ帝都へ駆けつけてくれた」

 おおぅ。なんか素晴らしい物語になっている。いや、内容は合っているんだけどね。確かに合っているけど、実際は狩りに行ったノアとネージュが大蛇に襲われて瀕死の使者団を拾ってきたのよね。

「そして皇妃を診た魔女殿は、治せると言った。こちらから探しに行っておいてなんだが、はじめは信じられなかったよ。だが、魔女殿が皇妃に魔法をかけると辺りは神々しい美しい光に包まれ、そしてしばらく寝たきりだった皇妃が自ら起き上がった! 苦しさが消えたと言ってね。私は目一杯の報酬を用意すると言ったが、魔女殿は自分が治したことを言わないようにと言って大森林へ帰っていったのだ」

 いやいや! きちんと報酬はもらって帰りましたよ!? そりゃもうたっぷり!!

「そうして魔女殿が帰った後、私の元へルボワール王国から手紙が届いた。その手紙にはアールグレーン嬢が手違いで国外追放になったということ、そしてグリフォンを従えてこのラルージュ帝国へと入国したということが書いてあった。グリフォンを従えている者など皇妃を治してくれた魔女殿以外にいない。そうして国外追放の取り消しを伝えるために魔女殿に再び帝都へきてもらい、正体を明かしたアールグレーン嬢とウィルフレッドが再会を果たしたのだ。ウィルフレッドは何度かルボワール王国に行っていて、アールグレーン嬢にも何度か会ったことがある。アールグレーン嬢はウィルフレッドの初恋の相手だしな。はっはっはっ!」

 ちょ……、そんなこと言っちゃっていいの!?

「一通り話してわかったと思うが、彼女は皇妃の命の恩人だ。それにウィルフレッドの長年の想い人でもある。私は、ウィルフレッドの相手として彼女以上の人はいないと思っているよ」

 初恋の相手から長年の想い人になってるっ!?
  
 皇帝陛下の話術でなんだかいい感じにまとまったし、皆んな納得してくれたようだ。
 色々と盛ってはいるけれど……! 盛り盛りだけどっ!

「アールグレーン嬢は正体を隠さなければならない事情があった。が、ルボワール王国から手違いだという手紙が届いたことでその必要もなくなった。そこでアールグレーン嬢には皇妃の命を救った褒美として、帝都内にある皇族所有の屋敷を授けることにする」

 んぇえ!? 屋敷!? なんで!? もう5億リル貰ってるのに!??

 色々言いたいことがあるのに、この雰囲気では何も言えない……。
 せっかく皇帝陛下が作ってくれた歓迎ムードを私が壊すわけにもいかず、冷や汗をかきながらも笑ってなんとかパーティーを乗り切ったのだった。






「どういうことですかっ!?」

「いやぁ、無事に終わってよかった!」

 皇帝陛下は、ハッハッハッ! とご機嫌そうに笑っている。

 いや、貴族たちも色々思うところはあったとしても最終的には魔法使いで強い従魔のいる私を歓迎してくれたし、おめかししたノアとネージュが登場した時は大盛り上がりだったから大成功なんだけど! けど!!

「まあよいではないか。5億リルでは皇妃の命を助けてもらった礼には足りん」
 
 いやいやいや! 貰いすぎだよ!

「ん? 不満げだな。皇妃の命がそんなに安いとでも?」

 うっ! そう言われると断れない! 皇帝陛下もそれをわかって言っているし。

「ありがたく、頂戴いたします」

「うむ。屋敷はもう使えるように整っているから、帰りに行ってみるといい。案内をつけよう」

 整ってるって……。 
 皇族所有の屋敷だ。掃除やら何やら手入れするのもそれなりの期間がいるだろうに。
 それが終わっているということは、だいぶ前から屋敷を報償にするつもりだったんだろう。

 はぁ……。なんだかしてやられた感がすごい。

 帝都に屋敷が手に入ったのになんだか素直に喜べず悶々としていると、皇帝陛下が「さて……」と口を開き、空気が変わる。

「無事ラルージュ帝国皇太子の婚約者になったわけだし、これでルボワール王国に向かえるな」

 そうだ。ルボワール王国からの手紙には戻ってくるように書いてあった。
 次から次へと起こる問題に頭が痛くなってくる。

「ということで、1ヶ月後にウィルフレッドとルボワール王国へ向かってくれ」

!!?
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