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町一番の大工ロドリグ2

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「ば、馬鹿を言うな。そんな素材用意できるわけがない!」

 普通ならそうだろう。実際この国1番の冒険者パーティーである金色の逆鱗でも、大森林の奥地で死にかけていたのだ。大森林に生えている木は他と比べてとてつもなく大きい。そんな危険な場所で巨木を伐採して町まで持ってくるなんて不可能に近い。

「私ならできるんです」

 そう言ってアイテムボックスに入っている木材を取り出す。
 大森林にある家の周りに生えていた木を風魔法で伐採して、家具を作るために小さくカットしたものだ。
 ここでは出せないけれど、アイテムボックスには切り倒しただけで加工してない丸のままの巨木も何本も入ってる。
 
「い、今どこから出し……、いや! そんなことはどうでもいい! その木材を見せてくれっ!」

 ロドリグさんに木材を手渡すと、木材を食い入るように見つめる。

「ほ、本物だ……! っいや、俺は大森林の奥地の木材なんて見たことないから本当に奥地の素材かはわからねぇ。でも、俺が使っている大森林の木材より遥かに質がいい!!」

 ロドリグさんは元々素材にこだわり大森林の木材を使っていると言っていたが、おそらく大森林の木材と言っても門を出てすぐの大森林の外側の木を取ってきたものだろう。
 魔物だけでなく、素材も奥に行けば行くほど濃度の濃い魔素を浴びて質が良くなる。
 元々使っていた素材と私の持っている素材では大分質が違うだろう。

 ロドリグさんは急にガバッと頭を下げる。

「俺にこの素材を使わせてくれ!」

「それは、私の家を建ててくれるということでしょうか?」

「あぁ! もちろんだ! むしろこちらからお願いしたい!」

 やった! ドワーフは手先が器用だというし、きっとステキな家ができるわ!

 ロドリグさんは今ちょうど受けている仕事がないというので、素材の用意と間取りやデザインが決まればすぐにでも家造りに取り掛かれるそう。
 入ってきた時にトンカンやっていたのは大工の仕事がない時にやっている家具作りだったらしい。

 デザイン決めはノアとネージュも呼んだほうがいいよね?
 ここに来る時にこんなのがいいあんなのがいいって2匹で話し合ってたはず。

「ちょっと従魔達を呼んで来ます。デザイン一緒に決めたがっていたので!」

 後ろで「え? 従魔を連れてくる!?」と言っているが気にせず外へ出る。

「ノアー! ネージュ!」

「リア! どうだった!?」

「受けてもらえるのか!?」

「バッチリだよ! それで家の間取りとかデザインを決めたいんだけど、ノアとネージュも色々考えてたんでしょ? だから話し合いに参加したいんじゃないかなと思って呼びに来たの」
  
 やっぱり2匹ともいろいろと考えてたようで、参加する! と大喜びだ。

「じゃあ中に入れるように小さくなってね」

 あっという間に小さくなったノアを肩に乗せ、ネージュを腕に抱き抱えてロドリグさんの元へ戻る。

「お待たせしました! 従魔のノアとネージュです!」

「…………? 大型の従魔だって言ってなかったか?」

 あぁ。確かに今のノアとネージュの姿じゃ小型従魔だ。

「私たちは今魔法で小さくなっているだけだ」

「そうだ! 俺たちの本当の姿はこんなもんじゃないぜ!」

 ロドリグさんは急に喋り出したノアとネージュを見てギョッとする。

「しゃ、喋った!?」

「おぅ! 喋れるぜ!」

「本当に……? それとも俺の頭がおかしくなったのか??」

 どうやら信じられなくて自分の頭を疑い始めたようだ。

「伝えてあった通り、私の従魔達は人語を理解できるほど知能が高いんですよ」

 「理解できるってレベルじゃねぇだろ……」と呆然と呟いてるが、このままだと話が進まないので気にせず話を進めちゃおう。

「それで家のデザインなんですけど、この子達にも好みがあるので意見を取り入れて欲しいんです」

「そうだ! 家だ! 俺たちに似合うような豪華な家だ! 1番じゃないとな!」

「いや、豪華なだけじゃダメだろう。美しさや上品さもなければな!」

「俺の瞳の金色も必要だな!」

「それなら俺の瞳の美しい青もだ!」

 このままだとまた戯れ始めてどんどん激しくなりそうなので今のうちに私がまとめてしまおう。

「まず玄関や部屋の入り口、廊下、階段をこの子達が通れるくらい広く。そして豪華だけど美しく上品で、金と青を使った家でお願いします」

「ん? あ、あぁ」

 なんとか意識の戻ってきたロドリグさんは、手近にあった紙にこちらの希望をサラサラと書いていく。

 さすがロドリグさん。キッチンやリビング、お手洗いなど、こちらの意見を取り入れつつ使いやすいようにあっという間に間取りを書き込んでいく。

 あ、あとこれも言っておかなきゃ!

「お風呂もつけてもらえますか? この子達も入れる大きさで」

 お風呂は王侯貴族や豪商の家じゃないと基本ついてないからね。お湯を沸かすのに薪も水もたくさん使うし、使用人が何往復もして湯船にお湯を貯める必要があるからだ。

 私なら魔法で一瞬だけど。

 間取り図にサラサラとお風呂を追加していく。

「よし。これでいいだろ」

 仕上がった間取り図を覗き込むと、家は3階建てで1部屋1部屋が随分広々としている。

 これ、家じゃなくてちょっとした屋敷じゃない?

 平民街にこんな家が建ったら目立っちゃう! ともう少し普通でいいと言ったが、大型の従魔がゆったり住むにはこのくらいの広さは必要なんだそうだ。

「後は実際の土地を見て細かくサイズを記入していくから土地の場所を教えてくれ」

 そう言って外に出る準備を始めたロドリグさんが振り返って思い出したように言う。

「あ、あと従魔達の本当のサイズも見ておきたい。ちゃんとゆったり過ごせる大きさが確認したいからな」

「おう! いいぜっ!」

「確認は大切だな!」

「ちょっ! ちょっと待って……!」

 止めようとしたが間に合わず、ノアとネージュはどんどん大きくなり元の姿に戻る。
 ノアとネージュで部屋がみっちり埋まる。

「もうっ! 急に大きくなったらロドリグさんがビックリするでしょ! あれ? ロドリグさん? ロドリグさんは!?」

 いきなり伝説級の魔物を間近で見たロドリグさんは、気を失ってネージュのモフモフの中に埋まるように倒れていた。
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