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第二章 グラビアアイドル 北欧の聖女 フィーナ・デリカ・ゼーリア(18歳)編

「北欧のグラビアアイドルにドッキリ企画! どすけべチャレンジ 1」

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 番組ADがプロデューサーに驚いて声を上げる。

「あの、グラビア界の(おっぱいが)大妖精。北欧の聖女と言われた、フィーナ・デリカ・ゼーリアがうちみたいな番組に出るんですか?」
「うちみたいなとは、失礼だな」

「すみません……」
「まーあれだよ。上が言うには、前回雨宮涙子をドッキリでハメたうちの実績が認められたそうだ」

 プロデューサーは、グラビアアイドルのフィーナ(18歳)の資料をペラペラめくる。
 北欧の社会民主主義国ラストニア出身のグラビアアイドル。

 妖精のように美しい肌、細くしなやかな体躯なのに、103センチHカップの巨乳の持ち主。
 そのアンバランスで魅惑的な肢体で、グラビア界の(おっぱいが)大妖精。

 実家がノルド教の教会であり、将来はシスターになるという発言から、北欧の聖女などとも言われている。

 日本に留学した2年前、友達がSNSに乗せた写真が300万リツイートされて大ブレイク。
 雑誌のモデルやグラビアを経て、発売された写真集が累計100万部を超えるヒットとなった。

 出演したドラマも大ヒットして、今後も活躍を期待されていたが、家庭の事情により引退となった。
 もはやグラビアアイドルとしては使えないので、最後に脱がしてぐちゃぐちゃにして、フィーナからできる限りの利益を引っ張り出せというのが上の指示だ。

「それで、どういう企画で行くんですか」
「桃川温泉の例のおやじを使う」

「えー、またあのおじさんですか。ただの温泉の清掃員なんでしょ、あの人?」

 日中からぷらぷら温泉につかっている、普段から何をやっているのかわからない。
 田舎のどこにでもいそうな、何の変哲もない小太りのおじさんだ。

「あいつは、そこらの役者よりよっぽど使える人材だよ。今回も任せれば上手くやってくれる、俺の眼がそう言っている」

 業界を生き延びて、数々の企画を成功させてきた海千山千のプロデューサーがそういうのだ。
 ADは、そんなもんですかねえと、怪しみながらもヘコヘコ頭を下げて従うしかない。

     ※※※

 身体にピッチリと張り付くような、純白のワンピースに身を包んだ美少女が、テレビ局のバスから降りてきた。

「ここが、桃川温泉なのでございますか」

 日本語が母国語ではない少女の、少し奇妙なイントネーションではあるが、丁寧な口調の日本語である。
 波打つ黄金の髪に美しい碧色の瞳を持つ彼女こそ、今回の主役であるフィーナ・デリカ・ゼーリア(18歳)である。

 後ろ手にポニーテールにくくった金糸のような長い髪は、可愛らしい青いリボンで結ばれていた。

「ようこそいらっしゃいました」

 例のおじさんが、フィーナを迎える。

「えっと、こういうときのアイサツは……。お世話になります、でございますか」

 たどたどしい日本語のフィーナ。
 もう日本に来て2年になるのに、ちっとも日本語が上達しない。

 それもそのはずで、留学したらいきなり芸能事務所にスカウトされて分刻みのスケジュールで仕事を入れられてしまったのだ。
 若いうちに色んな経験をしたくて、地球の反対側に位置する日本にやってきたフィーナではある。

 グラビアアイドルとしての活動は実に刺激的で、自分でお金を稼ぐこともできて、嬉しいことばかりであった。
 しかし、その代償として日本語の勉強や文化を学ぶことをあまりできなかったことだけが、心残りであろうか。

 そんなことを考えながら、東北の青々とした山を流れる。
 時折聞こえる、故郷でも聞いたことがないような珍しい鳥の鳴き声。

 湯気が立ち上る桃川温泉の美しい景色に心癒される。

「えーえー、ぜひとも、たっぷりとお世話させていただきます」

 今日のおじさんは、雨宮涙子のときとは違い、低姿勢だ。
 北欧からやってきた絶世の美女に、多少は気後れしているのか? と、思えばそうではない。

 フィーナのプロフィールを調べ上げてプロデューサーと悪巧みをしたおじさんは、着々と罠にハメる準備をしているのだ。

「ところで、ここには紀元前から続く古い神社があると聞いてきたのですが」

 家が紀元前から続くという言い伝えのノルド教の教会なので、奇縁を感じて興味を持ったのだ。

「ええ、桃川の社というものがございます。この温泉は、その神事にも使われる神聖な泉なのです」
「女神の泉でしたら、私の教会にもございます。興味深いで、ございますです。ぜひ見せてくださいですませ」

 フィーナが紺碧の瞳をキラキラさせて、両手を組んで祈りを捧げる。
 彼女は、とても信心深いのだ。

 ちなみに、そんな彼女の姿も一緒に降りてきたテレビクルーが撮影している。
 あとで編集して、番組として流す予定なのだ。

「では、こちらに……。ああ、これが桃川の社の神様です」

 そう言っておじさんが取り出したのは、天狗の鼻の部分に性的遊具である真っ赤なバイブレーションを取り付けた。
 とんでもない一物であった。

 もちろん、紀元前から存在する桃川の社なんてものは存在せず、この神様もでっちあげの偽物である。

「こ、これがこちらの御神体ですか」

 受け取って、しげしげと見つめるフィーナ。
 この映像をもとに作る番組だと

『さーはじまりました。どすけべチャレンジ。今回は、北欧のグラビアアイドル! ジャパニーズ偽風習、偽宗教にいつ気づくか◯秘大検証!と題しまして行われるドッキリ企画です。さっそく、第一の関門が始まりました』
『さて、日本のエログッズなどおそらく見たこともないであろう北欧の妖精フィーナさんは、このおかしさに気付くことができるでしょうか』

 などというナレーションが入るところである。

「どうです、立派な神様でしょう」

 さて、フィーナは気がつくことができるか。
 緊張の瞬間……。

「これは……ファシヌス神に、よく似ていますでございますね」

『おおっと、さすがは清純な聖女フィーナ、バイブレーションに気が付かなかった』
『ファシヌス神もそうですが、世界各国に男根信仰はよくありますからね。エログッズを、それの一種だと誤解したのでしょう』

 おじさんは笑顔で言う。

「ええ、日本におけるそのような神様ですね」
「これは、貴重なものをみせていただきました。ところで、この神様の名は何というのでございますか」

「この神様の名は、『名前も知らないおじさん』と言います」

 ナレーションが入る。

『おっとフィーナさん、これには怪訝な表情だ。こんなに早くバレてしまうのか?』
『つまり自分のことでしょう。このおじさんも、神を名乗るとか大胆ですねえ』

 フィーナが言う。

「すみません、日本語すこし難しくて、尊い神様の名前なのに……」

 フィーナは、自分はテレビ放送などではしゃべれているようにみえて。
 実は母国語でふりがなが振ってあるフリップボードを読んでいるのだと釈明する。

「ご安心ください、何度でもお教えしますよ。難しい言葉は、フリップボードも用意してありますので」

 フィーナは、何度か教えてもらってようやくおぼえた。

「……名前も、えっと……。名前も知らないおじさん様でございます。おぼえました」
「様はいらないですよ、気さくな神様なのでね」

「はい、名前も知らないおじさん。お会いできて光栄です」

 そうやって、真っ赤で卑猥なバイブレーションに向かってお辞儀するフィーナ。
 ギュンギュン機械音を立てて回転していたバイブであったが、なんとフィーナの顔に向かってピューッ! と、疑似精液まで飛ばしてしまった。

 顔にドロッとした白濁液を浴びたフィーナは、驚いた顔でおじさんの方を見る。

「あの、これは……」
「フィーナさんに会えて、神様も喜ばれたみたいです」

 温泉にくるなり、いきなりとんでもない目にあったフィーナなのに。

「これは、貴重な体験をさせていただきましたでございます」

 顔を拭うこともせず、笑顔で微笑むのだった。
 さて、このドッキリ。

 フィーナにどこまで気が付かれることなくできるのであろうか。
 次回に続く。
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