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第一章 新人アナウンサー 雨宮涙子(22歳) 編

温泉レポートファイナル 中編

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 おじさんは、涙子のおっぱいを片手で掴みながら言う。

「ふーん、興味あるなら教えるけど」

 その手を払い除けて涙子は言う。

「興味は、あります……」

 まだ放送時間も残っている。
 けどこれ、ほんとに放送でやっていいことなの?

 ちらっとプロデューサーを見る涙子。
 あいつゴーサインしかださない。

 そんな怒りを押し殺しながら、おじさんについていく涙子。
 二人は、洗い場の方に上がっていく。

「そういや涙子ちゃん。今日排卵日なんだってな」
「はぁ?」

 何言ってるのこの人? という顔でおじさんを見る。

「ほらこれ」

 いつの間にかおじさんの手にスマホが握られている。
 その画面を見ると、トイレでおしっこをしている涙子の姿が映っていた。

「ぎゃー! これいつ撮ったんですか! カメラ映さないで!」

 この企画が始まってから羞恥を味わってばかりで、もうこれ以上は恥ずかしいことなんかないと思ってたのに。
 裸体を見られるのとは、また別種の恥ずかしさがある。

「ほら、排卵検査薬が陽性になってるじゃん」
「健康診断だって言って渡されたんですけど、それって排卵を調べるものだったんですか……」

 涙子がおしっこをかけたスティックには、きっちりと陽性反応がでている。

「良かったね。今日が一番薬が効く日だから」
「そうなんですか。あのいっときますけど、盗撮は犯罪ですからね……」

 昭和99年の世界でも、一応盗撮はいけないこととはされていた。
 大した罪にはならないのだが、それでも犯罪は犯罪である。

「それは、涙子ちゃんが許すっていえば犯罪にならないでしょ」
「ええ……」

「なんだよ。涙子ちゃんのために検査するように言ったのに、それを犯罪だって責めるわけ?」
「いや、責めてるわけでは……。私が言ってるのは検査ではなく、その無断撮影のほうで……」

「涙子ちゃん。カメラが回ってるんだよ。全国放送で俺のことを犯罪者呼ばわりしたんだけど、それって大丈夫なの?」

 そう言われて、ハッとする。
 怒りに我を忘れて、一瞬放送中であることを忘れていた。

「あ、そうですね。すみません……。私の配慮がいたらなかったというか、もう許しますので……ごめんなさい」

 いつの間にか、立場が逆転して謝罪させられている。

「口で謝れば済むんだ」
「あの、放送中ですので、正式な謝罪は後ほど」

「マスコミってそうだよなあ。報道で無実の人を犯罪者呼ばわりしておいて、実際違うってなっても謝りもしない。自分が全国放送に出てるアナウンサーで、大手局を代表する立場だって自覚はある?」
「あの、ほんとにそういうつもりでは……申し訳ありません」

 マスコミ批判までされてしまっては、涙子は震えるしかない。
 とにかくこの場を収めようと、深々と頭を下げる。

「前回の放送でも、俺は番組を盛り上げてって頼まれて無償で協力しただけなんだよ。それなのに、キツイ調子で責められてさ」
「重ね重ね、申し訳ありません」

 涙子の頭がどんどん下がっていく。

「天然の殺精子剤をわけてあげてもいいけど、この調子じゃまたあとからなんて言われるかわからないからなあ」
「あの、ほんとにそういうつもりではなく、放送に協力していただけるのはありがたく思っております。ご心配をおかけして申し訳ございません」

 このまま放送が終わってしまったら、とんでもない放送事故となってしまう。
 せめて、怒りを収めて和解してほしいと、涙子はついに膝をついて土下座まで始めた。

 自ら、全裸土下座するほど追い詰められていた。

「じゃあ、あれを読んでよ」

 おじさんが指差す先には、ADがフリップを出していた。
 あんなのを読まなきゃいけないのか。

 しかし、読まなきゃ収まらない空気なので震える声で言う。

「……私、雨宮涙子は、今回の放送のために、どのようなことをされても構いません。どのような結果になったとしても、全ては私の責任です。番組、スタッフ、テレビ局、スポンサーの皆様はもちろんのこと、協力していただいたあなた様にも一切の迷惑はかけないこととします。どうか、放送にご協力ください」

 一体なんだこれは、私は何を読まされているのだ。
 涙子の顔は、どんどん青くなった。

「涙子ちゃんにそこまで言われちゃしょうがない、やってあげるか」
「……ありがとうございます」

 なんなんだこれは、私は一体何をさせられようとしているのか。
 涙子の顔は恐怖に引きつった。
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