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第一章 新人アナウンサー 雨宮涙子(22歳) 編

温泉レポ 後編

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 生おっぱいが全国に中継されて、揉まれたくらいのことは涙子だって諦められる。
 昭和99年のこの世界においては、バラエティー番組でその程度のことはハプニングとして認められているのだ。

 新人アナウンサーだったら、水着の大運動会でビキニを剥ぎ取られることなんてよくあることだ。

「はあ、なんでだよ?」
「これ生放送なんです。あなたの身体が、映ってしまいますので」

「はぁ、別におっさんの身体くらい撮ってくれてもかまわんよ。ほれほれ」
「ちょ、ちっ……ソーセージを、しまってください」

 中年男性は、びんびんにおったったソーセージを見せびらかしてきた。

「はぁ、ソーセージくらいテレビに映ってもいいだろうが、お前まさか規制派か? ソーセージが映ったら不健全だってか?」
「えっ、いえ! とんでもないです。私はテレビ局の人間ですよ」

 わいざつなものをテレビに映さないという規制の運動は、この世界でも起きていた。
 しかし、それはテレビの自由を侵害するものとして、徹底的に批判されている。

 新人アナウンサーの涙子が、規制派ということになれば、社内での出世は絶望的だ。
 報道キャスターへの道も閉ざされることになる。

「ふーん、じゃあお姉ちゃんは、ソーセージを映してもいいとおもってるんだな」

 わざと生娘の涙子にみせびらかすように目の前まで持っていく。

「は、はい……」
「じゃあ、お前のアワビも映してくれよ」

「ええっ!」
「できないんなら、やっぱり規制派じゃないの。不健全だとおもってんだろ」

 規制派と思われたら、もう終わりだ。

「や、やります……」
「やるんだったら、カメラの前で大きくアワビを指で開いてみろよ。あははっ、それでいいんだよ。気に入ったぜ」

 涙子は、震える手でアワビをクパァと開く。
 全世帯に向けて、いま涙子のアワビの中身が映し出されているのだ。

 ああ、今のテレビとはここまで身を犠牲にしないといけないものか。
 涙子の黒目がちの瞳には、涙が光っていた。

「あー、これは最高のおかずになるな」
「ちょ! ソーセージをしこらないでください!」

 この男には常識というものがないのだろうか。
 いくら、テレビが自由だと言っても限界があるだろう。

「なんだよ、やっぱりお前は規制派なのか」
「違います。違いますけど!」

「じゃあ、顔を近づけてよく見てみろ」

 ここまでやったのだ。

「わかりました。見ればいいんですね」

 涙子は意を決して、しこしこする男のどす黒いソーセージを見つめる。
 こんな経験のない涙子は、顔を真っ青にして震えている。

「よーし、口を開けて下を出せ」
「えっ、はい……んんんんんんんっ!」

 涙子の声にならない悲鳴。
 男は、舌にソーセージ押し付けるようにしてドピュドピュと、男汁を出したのだ。

「すぐには飲むなよ!」
「んんんんっ!」

 誰がおっさんの男汁なんて、飲むものか!
 でも、口に溜まったこれをどうすればいいのだ。

「ほら、テレビカメラの前で口を開いて、よーく見せてみろ」
「べろっ……」

 涙子は、しかたなく言われた通り男汁がたっぷりと乗った舌をテレビの前に出す。

「よーし、もうごっくんしていいぞ」

 ごっくんなんかしたくない。
 涙子は、助けを求めるようにプロデューサーを見たが、飲めというジェスチャーを送ってくる。

 ああ、こいつ。
 もしかして、ハプニングに見せかけて全部仕込んでいたのか?

 涙子は怒りと悲しみで顔を真っ赤にしながら、カメラの前で男汁をごっくんした。
 この日のレポートは神回と讃えられ、最高視聴率を記録するのであった。
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