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第二章 勝負の三年間 一年生編

第二十三話 プロが使用するあのスタジアムで

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 五月二十八日。


 翌月から始まる高校総体県大会の組み合わせが発表された。山取東高校女子サッカー部は一回戦で台府西だいふにし高校と対戦する。


 
 「西高にしこう(台府西高校の略称)か、手強い相手だよ」


 練習終了後、ベンチで綾乃の右隣に腰掛ける真希が言う。

 綾乃はトーナメント表を眺める真希の横顔を見つめる。


 「確か、県大会の常連ですよね?」

 「うん。中学時代に県大会で上位に入ったことのある子もいるって話だよ」


 僅かながら、綾乃の頭の中に強豪校の情報があった。


 「総体の県大会でベストエイト入りすると、冬の選手権の県予選は二次から出場できるんだ。だからこそ、勝ち進みたい。そして、辿り着きたい」


 真希は力強く言う。

 
 「高校でサッカーをするからには目指したいもん。あの場所を」


 そう続けた真希の言葉に共感するように頷く綾乃。


 「そうですよね」

 「プロが使用するあのスタジアムでプレーしてみたい。それが、今の私の夢」


 笑顔の真希。

 
 しばらくし、クールダウンのようにやさしい風が二人を包む。

 それからすぐに、二人の髪がなびく。


 冬の選手権の県予選を突破し、全国大会へ駒を進めると、関東地方のいくつかのスタジアムで試合が行なわれる。

 そして、決勝まで駒を進めると、プロが使用する関東スタジアムのピッチに立つことができる。


 「綾乃ちゃん達と一緒にあのピッチに立ちたい。そして…」


 真希は続きの言葉を飲み込む。綾乃はその先の言葉を尋ねる。

 すると、真希は「何でもないよ」と笑顔で答えた。


 「えー!気になるじゃないですか!」
  
 「教えなーい!」


 笑顔でじゃれ合う綾乃と真希。

 その姿を練習場の外から見つめていた一人の男子サッカー部員は綾乃と真希にその場で言葉を贈る。

 その言葉が届いたかのように、真希がこう言う。


 「卒業しても綾乃ちゃんとプレーしたい!そして、あの舞台でプレーする綾乃ちゃんの姿を観てみたい!」


 同時に、野球場から打球音と硬式野球部員の声が。

 まるで、真希と同じような気持ちを持っている人物が近くにいるというサインを示すかのように。
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