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第二章 勝負の三年間 一年生編
第十三話 一番の持ち味
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前半十七分、岩浜西高校はコーナーキックから一点を返す。ショートコーナーを使い、細かくボールを繋ぐ。そして、八番の選手がゴール前にクロスを上げる。そのボールに九番の選手が右足を合わせ、ゴールネットを揺らした。
美佳は悔しそうな表情を浮かべながらセンターサークルへボールを転がす。
「ふぅ」と美佳が息をつく姿を見て、綾乃が彼女に歩み寄る。
「カバーできなかった私が悪いんです。気にすることはありません」
そう言葉を掛け、綾乃はポジションへ戻る。振り返ると、綾乃を見つめる美佳の姿が。
すると、美佳は綾乃にサインを送るようにキーパーグローブを装着した左手掌を見せる。綾乃は彼女からのサインに素手の左手掌を見せ、応える。
そして、綾乃は視線をセンターサークルへ。その十数秒後に、美智恵がボールを蹴り出し、試合が再開した。
山取東高校は自陣で細かくボールを繋ぎ、岩浜西高校の動きを探る。
じりじりと迫る岩浜西高校の選手。
しばらくボールを繋ぎ、美幸は前線へパスを出す。送った相手は綾乃。綾乃は左サイドでボールを受けると、ゆっくりとドリブルで進む。
七番の選手が綾乃につく。
綾乃は彼女を引き付けるようにドリブルで進む。
岩浜西高校陣地へ入った綾乃。同時に、六番の選手が七番の選手とともに綾乃のマークへ。
コースを塞ぐ作戦。綾乃にはそれが分かっている。
美智恵はサポートに回りながらスペースを探る。しかし、完全に封じられていた。
この時、綾乃の頭の中にある考えがあった。それは、二点目に繋がったボールを高く上げるあのパス。そのパスならこの状況を打開できるのではないかと考えた。
しかし、それをしっかり読んでいたかのように、七番の選手と六番の選手は距離を詰める。
綾乃はタッチライン際まで追い込まれる。
しかし、綾乃は焦ることはなかった。
一瞬、振り向く綾乃。すると、一人の山取東高校の選手の姿が。
相手ディフェンスを抜け出した真希だった。
彼女の前にはスペースができていた。前と右には二人のマーク。しかし、背後はフリー。綾乃は迷うことなく、真希へパスを出す。
鮮やかなヒールパスだった。
六番の選手は真希へマークにつく。七番の選手はピッチ中央へ。
その動きを見て、綾乃は左サイドを駆け上がる。
綾乃は次々と相手選手を引き付ける。
三人の選手に囲われた綾乃。しかし、一瞬の隙を突き、包囲網を突破。そして、サポートへ走る。
「綾乃ちゃん!」
「はい!」
美幸からパスを受けた綾乃は華麗なドリブルで突き進む。
一人抜き去ると、綾乃の心が呟く。
あの状況を私一人で打開できるようにならないと…!
七番の選手が綾乃に追いつく。同時に、ゴール前にクロスを上げる綾乃。
そのボールを右足で合わせた美智恵。しかし、GKが上手くキャッチ。山取東高校はディフェンスに切り替える。
前半二十分、ボールを繋いだ岩浜西高校は山取東高校ゴールに迫る。
ボールは九番の選手へ。そして、そのまま右足を振り抜いた。
岩浜西高校のリザーブメンバーが立ち上がる。それからすぐ、ベンチで戦況を見つめる彩が立ち上がる。
同時に、校舎から歓声が。
「綾乃ちゃん!」
それからすぐに、前半終了のホイッスルが。
「大丈夫?」
美佳が仰向けの状態になっている綾乃へ手を差し伸べる。綾乃は笑顔で美佳の手に掴まり、立ち上がる。そして、呼吸を整え、こう話す。
「泥臭いプレーが一番の持ち味ですから。それが見事に活きました。リードで折り返すことができてよかったです」
そう話した綾乃が着用したビブスの色彩に若干変化が。
それは、綾乃が体を張ってピンチを救ったという証を示していた。
美佳は悔しそうな表情を浮かべながらセンターサークルへボールを転がす。
「ふぅ」と美佳が息をつく姿を見て、綾乃が彼女に歩み寄る。
「カバーできなかった私が悪いんです。気にすることはありません」
そう言葉を掛け、綾乃はポジションへ戻る。振り返ると、綾乃を見つめる美佳の姿が。
すると、美佳は綾乃にサインを送るようにキーパーグローブを装着した左手掌を見せる。綾乃は彼女からのサインに素手の左手掌を見せ、応える。
そして、綾乃は視線をセンターサークルへ。その十数秒後に、美智恵がボールを蹴り出し、試合が再開した。
山取東高校は自陣で細かくボールを繋ぎ、岩浜西高校の動きを探る。
じりじりと迫る岩浜西高校の選手。
しばらくボールを繋ぎ、美幸は前線へパスを出す。送った相手は綾乃。綾乃は左サイドでボールを受けると、ゆっくりとドリブルで進む。
七番の選手が綾乃につく。
綾乃は彼女を引き付けるようにドリブルで進む。
岩浜西高校陣地へ入った綾乃。同時に、六番の選手が七番の選手とともに綾乃のマークへ。
コースを塞ぐ作戦。綾乃にはそれが分かっている。
美智恵はサポートに回りながらスペースを探る。しかし、完全に封じられていた。
この時、綾乃の頭の中にある考えがあった。それは、二点目に繋がったボールを高く上げるあのパス。そのパスならこの状況を打開できるのではないかと考えた。
しかし、それをしっかり読んでいたかのように、七番の選手と六番の選手は距離を詰める。
綾乃はタッチライン際まで追い込まれる。
しかし、綾乃は焦ることはなかった。
一瞬、振り向く綾乃。すると、一人の山取東高校の選手の姿が。
相手ディフェンスを抜け出した真希だった。
彼女の前にはスペースができていた。前と右には二人のマーク。しかし、背後はフリー。綾乃は迷うことなく、真希へパスを出す。
鮮やかなヒールパスだった。
六番の選手は真希へマークにつく。七番の選手はピッチ中央へ。
その動きを見て、綾乃は左サイドを駆け上がる。
綾乃は次々と相手選手を引き付ける。
三人の選手に囲われた綾乃。しかし、一瞬の隙を突き、包囲網を突破。そして、サポートへ走る。
「綾乃ちゃん!」
「はい!」
美幸からパスを受けた綾乃は華麗なドリブルで突き進む。
一人抜き去ると、綾乃の心が呟く。
あの状況を私一人で打開できるようにならないと…!
七番の選手が綾乃に追いつく。同時に、ゴール前にクロスを上げる綾乃。
そのボールを右足で合わせた美智恵。しかし、GKが上手くキャッチ。山取東高校はディフェンスに切り替える。
前半二十分、ボールを繋いだ岩浜西高校は山取東高校ゴールに迫る。
ボールは九番の選手へ。そして、そのまま右足を振り抜いた。
岩浜西高校のリザーブメンバーが立ち上がる。それからすぐ、ベンチで戦況を見つめる彩が立ち上がる。
同時に、校舎から歓声が。
「綾乃ちゃん!」
それからすぐに、前半終了のホイッスルが。
「大丈夫?」
美佳が仰向けの状態になっている綾乃へ手を差し伸べる。綾乃は笑顔で美佳の手に掴まり、立ち上がる。そして、呼吸を整え、こう話す。
「泥臭いプレーが一番の持ち味ですから。それが見事に活きました。リードで折り返すことができてよかったです」
そう話した綾乃が着用したビブスの色彩に若干変化が。
それは、綾乃が体を張ってピンチを救ったという証を示していた。
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