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第一章 中学校時代
第六話 「私はまだまだですよ」
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一月。
綾乃は近所の公園で小学生の少女とサッカーボールを転がしていた。
綾乃のプレーを観た少女は声を上げる。
「綾乃お姉さん、凄いー!」
少女の声と同時に、綾乃は右足でボールを収める。そして、ボールを右手で抱え、少女の元へ。
「まだまだ。私より凄い選手はいっぱいいますよ?」
「え、綾乃お姉さんよりも?」
「ええ」
微笑む綾乃。
「綾乃お姉さんよりも凄い選手か…」
少女は台府市内で土日に活動するサッカークラブに所属している。練習のない平日は授業終了後に公園でサッカーボールを転がしている。
綾乃は中学一年生の時に少女と出会った。
中学校での土曜日の練習終了後に綾乃はサッカーボールを抱え、この公園を訪れた。一人でドリブル練習などをしている時に彼女の元に現れたのが少女だった。
「お姉さん、私にもそれ教えて!」
それ以来、二人は時間が合う時に一緒に練習する仲になった。
しばらく練習し、公園内のベンチへ腰を下ろす二人。綾乃は水筒のキャップへミネラルウォーターを注ぎ、喉を潤す。
「ふぅ…」と静かに息をつく綾乃の横顔を見つめる少女。
綾乃がキャップを閉めると同時に、少女がブランコを見つめながら言う。
「びっくりしちゃったな…。綾乃お姉さんが強い学校に行かないなんて…」
綾乃は彼女の言葉を聞き、軽く目を閉じる。
すると、瞼の裏に浩平とのあるやり取りの映像が流れる。
浩平が山取東高校への進学を勧めた時の映像が。
「山取東高校ですか?」
「そうだ。知ってるだろうが、県内の公立高校。今年の秋の大会では県大会ベストエイトまで勝ち進んだ。力がついてきている高校だ。恐らく、一番全国に近い。私はそう思っている。そして、あの高校には体育科サッカーコースが設置されている。それもあっての提案だ。万が一に備えて私立高校も受験してほしい。まあ、山取東高校はあくまで私の提案だ。受験する高校は綾乃自身で決めろ」
綾乃は浩平の話で山取東高校に興味を持ち始める。サッカーについて学びながらプレーする。綾乃にとってはメリットだらけだった。
自身の夢は何か。それを思い出す綾乃。
しばらく考え
「山取東高校を受験します」
そう話した。
少女の言葉からしばらくし、綾乃は目を開ける。そして、やさしい表情で少女を見つめ、口を開く。
「強豪校への進学も考えましたけど、お父様のお話が大きかったですね。そして、将来のためにもなりますから」
少女は視線を綾乃へ。
「将来?」
「ええ。夢のために」
綾乃はその夢を少女に伝える。
「へぇ…!」
「険しい道だということは百も承知です。しかし、悔いを残したくはなかったので」
少女は目を輝かせながら綾乃を見つめる。
「その夢を叶えるにはまず、入試を突破しないといけません。そのために、勉強だけでなく、サッカーの練習も」
綾乃はそう言うと立ち上がり、サッカーボールを右手に抱える。そして、ドリブル練習を始めた。
少女はドリブルで進む綾乃の背中を見つめる。それからすぐに、リフティングする音が公園内を包んだ。
「すごーい!」
その音に誘われ、小学生の男の子が姿を現す。綾乃は男の子へ視線を向けながら微笑み、ドリブル練習を続けた。
「私はまだまだですよ」
綾乃はやさしい声でそう応えると、ボールを高く蹴り上げる。太陽に届くかのように高く上がったボールは眩しいほどに光り輝いていた。
綾乃は近所の公園で小学生の少女とサッカーボールを転がしていた。
綾乃のプレーを観た少女は声を上げる。
「綾乃お姉さん、凄いー!」
少女の声と同時に、綾乃は右足でボールを収める。そして、ボールを右手で抱え、少女の元へ。
「まだまだ。私より凄い選手はいっぱいいますよ?」
「え、綾乃お姉さんよりも?」
「ええ」
微笑む綾乃。
「綾乃お姉さんよりも凄い選手か…」
少女は台府市内で土日に活動するサッカークラブに所属している。練習のない平日は授業終了後に公園でサッカーボールを転がしている。
綾乃は中学一年生の時に少女と出会った。
中学校での土曜日の練習終了後に綾乃はサッカーボールを抱え、この公園を訪れた。一人でドリブル練習などをしている時に彼女の元に現れたのが少女だった。
「お姉さん、私にもそれ教えて!」
それ以来、二人は時間が合う時に一緒に練習する仲になった。
しばらく練習し、公園内のベンチへ腰を下ろす二人。綾乃は水筒のキャップへミネラルウォーターを注ぎ、喉を潤す。
「ふぅ…」と静かに息をつく綾乃の横顔を見つめる少女。
綾乃がキャップを閉めると同時に、少女がブランコを見つめながら言う。
「びっくりしちゃったな…。綾乃お姉さんが強い学校に行かないなんて…」
綾乃は彼女の言葉を聞き、軽く目を閉じる。
すると、瞼の裏に浩平とのあるやり取りの映像が流れる。
浩平が山取東高校への進学を勧めた時の映像が。
「山取東高校ですか?」
「そうだ。知ってるだろうが、県内の公立高校。今年の秋の大会では県大会ベストエイトまで勝ち進んだ。力がついてきている高校だ。恐らく、一番全国に近い。私はそう思っている。そして、あの高校には体育科サッカーコースが設置されている。それもあっての提案だ。万が一に備えて私立高校も受験してほしい。まあ、山取東高校はあくまで私の提案だ。受験する高校は綾乃自身で決めろ」
綾乃は浩平の話で山取東高校に興味を持ち始める。サッカーについて学びながらプレーする。綾乃にとってはメリットだらけだった。
自身の夢は何か。それを思い出す綾乃。
しばらく考え
「山取東高校を受験します」
そう話した。
少女の言葉からしばらくし、綾乃は目を開ける。そして、やさしい表情で少女を見つめ、口を開く。
「強豪校への進学も考えましたけど、お父様のお話が大きかったですね。そして、将来のためにもなりますから」
少女は視線を綾乃へ。
「将来?」
「ええ。夢のために」
綾乃はその夢を少女に伝える。
「へぇ…!」
「険しい道だということは百も承知です。しかし、悔いを残したくはなかったので」
少女は目を輝かせながら綾乃を見つめる。
「その夢を叶えるにはまず、入試を突破しないといけません。そのために、勉強だけでなく、サッカーの練習も」
綾乃はそう言うと立ち上がり、サッカーボールを右手に抱える。そして、ドリブル練習を始めた。
少女はドリブルで進む綾乃の背中を見つめる。それからすぐに、リフティングする音が公園内を包んだ。
「すごーい!」
その音に誘われ、小学生の男の子が姿を現す。綾乃は男の子へ視線を向けながら微笑み、ドリブル練習を続けた。
「私はまだまだですよ」
綾乃はやさしい声でそう応えると、ボールを高く蹴り上げる。太陽に届くかのように高く上がったボールは眩しいほどに光り輝いていた。
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