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第三部 異世界建築士と思い出の家
第310話:披露宴(2/2)
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一、二、三。一、二、三。ここでくるりとリトリィが回り、もう一度同じステップを繰り返して、今度は俺が、彼女を抱いて一緒に回る。
彼女を回すたびに、スカートがふわりと浮かび、しっぽと一緒にひらりと回る。
ああ、きっと真横から見たら、彼女の膝下くらいは見えるかもしれないくらいに。
テンポが比較的早い軽やかな曲で、リトリィに導かれるように踊る。小さな声でアドバイスをくれながら。だから、かろうじて動いていられる感じだ。
「ふふ、ムラタさん。すてきです」
彼女を抱きしめ一緒に回る、そのわずかな時間に、彼女は必ず一言を入れる。
おじょうずです、うれしいです、もっときつく抱いてください、愛しています――
時にそっと口づけを交わしてくる彼女は、一体どこからそんな余裕が生まれてくるのか。
おまけに、彼女を抱きしめるたびに、コルセットみたいな補正下着に押し上げられた豊かな胸が、あふれそうになるのがほんと心臓に悪い。
俺だけが見るならともかく、周りにはギャラリーがいるんだそ!? ただでさえ胸元が大胆すぎて、先端部のコーラルピンクの部分が見えそうってか、実際見えてるってのに!
大事な大事な嫁さんのあられもない姿なんか、見られてたまるか!
いや、すぐそこで両乳を放り出してザンクくんにおっぱいあげてるクラムさんがいますけれども!
――いいの!?
羞恥心はないの!?
それともおっぱいはエロに入りませんか!?
「……ムラタさん?」
そっと身を寄せてきたリトリィが、やや険のある目で見上げてくる。
「……どちらを、ごらんになってるんですか?」
――――!?
まさか正直に言えるはずもなく沈黙していると、彼女がさらに身を寄せてきた。
「ここにあるものでは、満足、していただけませんか?」
「え? ……いや、そんなことは……!」
「でしたら、今は、わたしだけを見てください。あなたのリトリィは、すぐここに、目の前にいるんですよ……?」
そう言って、俺の胸に顔を埋める。
その健気なさまを見て、思わずダンス中だというのにひしと抱きしめてしまい。
プルンとはみ出してしまったそれを見て慌ててそのまま密着。不自然な体勢のまま、ダンスから抜けてそっと直してもらったとさ。
「監督は独占欲が強いっすねえ。嫁さんの乳の一つも見せたくないんすか?」
「とんでもないこと言いやがるなお前! 当たり前だろ!」
からかうレルフェンに思わず言い返すと、無言で指を指す。その先には、両胸をはだけて赤ん坊に乳を与えるクラムさん。
「ダンス中に見えちまうなんて珍しくないっすよ? 嫁自慢のためにわざと見せるように踊るヤツもいますし。監督、ココロ狭いっすね?」
ココロが狭い……だと?
バカ言え、嫁さんのおっぱいを他人に見られて嬉しいわけがあるか!
「でも、さっきマレット親方の奥さんのおっぱい、見てたっすよね?」
「い、いやそれは、堂々とおっぱいを……授乳してるのを見てすご……驚いたからで!」
「なんだ、やっぱり監督も好きなんじゃないすか。今度、おっぱいデカめのカワイイ娘がいる店を紹介しますんで、おごってくださいよ」
ばっ……お前っ! 新婚生活が始まる当日から、速攻でケンカになりそうなネタをよこすんじゃねえよ!
「またまた~。あんだけおっぱいがデカい娘を捕まえたんすから、監督もデカいおっぱいが好きなんでしょ?」
「違うわ! よく聞け! でっかいおっぱいは当然言うまでもなく素晴らしい人類の宝でアレはよいものだがな、だからそれだけが理由でリトリィを選んだわけ――」
「ムラタさん?」
「で――……!?」
振り返る気にもなれなかった。
それでも、振り返らざるを得ない。
声の調子が、なんだか冷えている。
それも、とてつもなく。
「ええと、ですね?」
必死に動かした首、その先には、リトリィが青筋を浮かべる勢いで微笑んでいた。
「あなたのおっぱいは、こちらですよ? この上さらに、『人類の宝』なんてものが必要なのですか?」
ち、ちが……
いや、人類の宝ってのはその……
「おいレルフェン! お前のせいで――!?」
ってあいつ! 逃げやがった! いつのまに!?
くすくすと、周りから笑い声が聞こえる。
ああ、もう、なんてこったい!
リトリィは小さなため息をつくと、そっと俺に寄り添って、小声で言った。
「……そんなに、おっぱいが好きですか?」
ちょっ……リトリィ! あ、いえ、そりゃもちろん――って、だからそういう誤解を招く言い方は……!
「そんなにおっぱいがお好きなら、いずれきっと飲ませてさしあげますから……」
ごっ、誤解だリトリィ! また取り出そうとするんじゃない! それじゃ俺が変なマニアの変態みたいで――!!
日も沈み、だいぶ暗くなってきた時間。
家の窓辺には、庭を照らすようにランプが並べられ、庭のテーブルにもランプが置かれて、宵の口ならではの、幻想的な風景がつくられている。
庭は相変わらずのにぎやかさだった。
夕飯時に相当する時間だが、みな相変わらず飲んだり食ったりである。
俺も何曲踊らされたか分からないほどでクタクタなのだが、みんな入れ代わり立ち代わり、相変わらずダンスを踊っている。
正確には、踊った疲れを飲んで食って話している間に癒して、またダンスに参加、といった具合だ。みんなタフすぎる。
「ムラタさん、そろそろ出しましょう? お姉さまも、準備に行きました」
マイセルに促されて、そういえばそうだったと、ハッとする。
マイセルと共に家に戻ると、リトリィがちょうど、棚から取り出そうとしているところだった。
「あ、ムラタさん、いいところに。マイセルちゃん、呼んできてくれて、ありがとうね?」
リトリィが、こちらを見てにっこりと笑う。
さっそく、リトリィと一緒に、棚いっぱいの大きさのケーキを、トレイごと引っ張り出す。
大きさは五十センチ四方ほど。昨日、じっくりと時間をかけて焼いたものだ。
この世界では、ケーキと言えばドライフルーツやナッツを練り込んだフルーツケーキのようなものを指していて、このウエディングケーキも、それだ。ホイップクリームを塗るようなこともしない。
ただ、バターはたっぷりと使った。マイセルが心配するくらいに。
おかげでかなり高くついたが、味見をした限りでは、芳醇な香りがたまらない逸品となっている。一日寝かせたからか、しっとりと生地も落ち着いて、実にいい香りが漂ってくる。
「リトリィさん、マイセルさん。こちらを仕上げにふりかけますから、砕いておいてくださいな」
狐人族のご婦人、フィネスさんから、紙包みを渡される。中身はナッツ類だった。
「少し炒っておきましたから、香ばしくできているはずですよ。お願いしますね?」
マイセルが歓声を上げる。さっそくリトリィと一緒に、奥のテーブルに持って行った。
だが、俺は二人とは別のものを目にして、驚いた。
テーブルに置かれた紙包みの中に入っていた、それ。
さらさらの、白い粉末の山。
――粉砂糖!
この世界に来て初めて見たぞ!
「……これ、高かったんじゃないですか?」
俺の質問に、ペリシャさんがにっこりとする。
「あら、高いって、これがなにか、ご存じなのかしら?」
「なにかって、砂糖でしょ?」
フィネスさんが、目を見開く。ペリシャさんも一瞬息を呑んだようだったが、すぐに微笑んだ。
「よくご存じね。そう、お砂糖。一目見て分かるなら、お味もご存じなのかしら?」
「そりゃ当然で――」
言いかけて、気が付いた。
俺が知っているというだけで、フィネスさんが目を見開くくらいに驚いたのだ。街の一般住人が、そうそう知っている味ではないのだろう。
「……そう。うちの人も貴重なものだとは知っていたようですけれど、あなたにとっては、当たり前のお味なのですね」
ペリシャさんの言葉に、フィネスさんが俺を二度見する。
――うん、まあ、分からなくもない。昔は砂糖ってのはすごく高価で、特にヨーロッパでは、砂糖は「白い黄金」と呼ばれるほど富をもたらした時代もあったとか聞いたことがある。
それは、この世界でも同じらしい。なるほど、そんな貴重品の味を当たり前の味として知っている俺は何者だ、というわけか。
「では、そんな貴重品を、誰が、どうやって用意したか――察しはつきますね?」
……それはもちろん、ナリクァンさんが用意してくれたものに違いない。
味を知っているというだけで驚かれる――そんな貴重品を、こんなにも惜しげもなくいただけるなんて。本当に、リトリィは愛されているんだな。
「違いますよ? あなたに期待をしているんです、あのひとは」
「……は? 御冗談でしょう、リトリィのおまけですから、俺は」
ペリシャさんが冗談を言うなんて珍しい。笑い飛ばすと、ペリシャさんが呆れたようにため息をつき、そして小さく笑った。
「そうやって、ご自身の価値をずいぶんと軽んじることができるほど謙虚だからこそ、あのひとも今のうちに投資をしておこうと思われるのでしょうね」
「投資って……。俺は『リトリィを泣かせるな』って、さんざん釘を刺された男ですよ?」
あの、リトリィびいきのナリクァンさんだ。リトリィが執着する俺だから、俺に投資する。それなら分かる。俺がまともに稼げるようにならないと、彼女が不幸になるからだ。それ以外に考えられない。
「……いいですわ。あなたがそう考えるなら、今はそれで結構。リトリィさんを、大切になさいね?」
マイセルが、ナッツを砕き終わったと元気な声で報告してくる。
ペリシャさんは表情を切り替えると、二人を呼んだ。
ケーキへの、最後のデコレーション。
この白い粉末が、間違いなく、俺たちがいかに大きな力をバックにしているかを、列席した人々に示すものになるのだろう。
我が事ながら、空恐ろしいものを感じる。けれど、それだけ、リトリィが軽んじられる要素を減らすのだ、このケーキが。
彼女を回すたびに、スカートがふわりと浮かび、しっぽと一緒にひらりと回る。
ああ、きっと真横から見たら、彼女の膝下くらいは見えるかもしれないくらいに。
テンポが比較的早い軽やかな曲で、リトリィに導かれるように踊る。小さな声でアドバイスをくれながら。だから、かろうじて動いていられる感じだ。
「ふふ、ムラタさん。すてきです」
彼女を抱きしめ一緒に回る、そのわずかな時間に、彼女は必ず一言を入れる。
おじょうずです、うれしいです、もっときつく抱いてください、愛しています――
時にそっと口づけを交わしてくる彼女は、一体どこからそんな余裕が生まれてくるのか。
おまけに、彼女を抱きしめるたびに、コルセットみたいな補正下着に押し上げられた豊かな胸が、あふれそうになるのがほんと心臓に悪い。
俺だけが見るならともかく、周りにはギャラリーがいるんだそ!? ただでさえ胸元が大胆すぎて、先端部のコーラルピンクの部分が見えそうってか、実際見えてるってのに!
大事な大事な嫁さんのあられもない姿なんか、見られてたまるか!
いや、すぐそこで両乳を放り出してザンクくんにおっぱいあげてるクラムさんがいますけれども!
――いいの!?
羞恥心はないの!?
それともおっぱいはエロに入りませんか!?
「……ムラタさん?」
そっと身を寄せてきたリトリィが、やや険のある目で見上げてくる。
「……どちらを、ごらんになってるんですか?」
――――!?
まさか正直に言えるはずもなく沈黙していると、彼女がさらに身を寄せてきた。
「ここにあるものでは、満足、していただけませんか?」
「え? ……いや、そんなことは……!」
「でしたら、今は、わたしだけを見てください。あなたのリトリィは、すぐここに、目の前にいるんですよ……?」
そう言って、俺の胸に顔を埋める。
その健気なさまを見て、思わずダンス中だというのにひしと抱きしめてしまい。
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「監督は独占欲が強いっすねえ。嫁さんの乳の一つも見せたくないんすか?」
「とんでもないこと言いやがるなお前! 当たり前だろ!」
からかうレルフェンに思わず言い返すと、無言で指を指す。その先には、両胸をはだけて赤ん坊に乳を与えるクラムさん。
「ダンス中に見えちまうなんて珍しくないっすよ? 嫁自慢のためにわざと見せるように踊るヤツもいますし。監督、ココロ狭いっすね?」
ココロが狭い……だと?
バカ言え、嫁さんのおっぱいを他人に見られて嬉しいわけがあるか!
「でも、さっきマレット親方の奥さんのおっぱい、見てたっすよね?」
「い、いやそれは、堂々とおっぱいを……授乳してるのを見てすご……驚いたからで!」
「なんだ、やっぱり監督も好きなんじゃないすか。今度、おっぱいデカめのカワイイ娘がいる店を紹介しますんで、おごってくださいよ」
ばっ……お前っ! 新婚生活が始まる当日から、速攻でケンカになりそうなネタをよこすんじゃねえよ!
「またまた~。あんだけおっぱいがデカい娘を捕まえたんすから、監督もデカいおっぱいが好きなんでしょ?」
「違うわ! よく聞け! でっかいおっぱいは当然言うまでもなく素晴らしい人類の宝でアレはよいものだがな、だからそれだけが理由でリトリィを選んだわけ――」
「ムラタさん?」
「で――……!?」
振り返る気にもなれなかった。
それでも、振り返らざるを得ない。
声の調子が、なんだか冷えている。
それも、とてつもなく。
「ええと、ですね?」
必死に動かした首、その先には、リトリィが青筋を浮かべる勢いで微笑んでいた。
「あなたのおっぱいは、こちらですよ? この上さらに、『人類の宝』なんてものが必要なのですか?」
ち、ちが……
いや、人類の宝ってのはその……
「おいレルフェン! お前のせいで――!?」
ってあいつ! 逃げやがった! いつのまに!?
くすくすと、周りから笑い声が聞こえる。
ああ、もう、なんてこったい!
リトリィは小さなため息をつくと、そっと俺に寄り添って、小声で言った。
「……そんなに、おっぱいが好きですか?」
ちょっ……リトリィ! あ、いえ、そりゃもちろん――って、だからそういう誤解を招く言い方は……!
「そんなにおっぱいがお好きなら、いずれきっと飲ませてさしあげますから……」
ごっ、誤解だリトリィ! また取り出そうとするんじゃない! それじゃ俺が変なマニアの変態みたいで――!!
日も沈み、だいぶ暗くなってきた時間。
家の窓辺には、庭を照らすようにランプが並べられ、庭のテーブルにもランプが置かれて、宵の口ならではの、幻想的な風景がつくられている。
庭は相変わらずのにぎやかさだった。
夕飯時に相当する時間だが、みな相変わらず飲んだり食ったりである。
俺も何曲踊らされたか分からないほどでクタクタなのだが、みんな入れ代わり立ち代わり、相変わらずダンスを踊っている。
正確には、踊った疲れを飲んで食って話している間に癒して、またダンスに参加、といった具合だ。みんなタフすぎる。
「ムラタさん、そろそろ出しましょう? お姉さまも、準備に行きました」
マイセルに促されて、そういえばそうだったと、ハッとする。
マイセルと共に家に戻ると、リトリィがちょうど、棚から取り出そうとしているところだった。
「あ、ムラタさん、いいところに。マイセルちゃん、呼んできてくれて、ありがとうね?」
リトリィが、こちらを見てにっこりと笑う。
さっそく、リトリィと一緒に、棚いっぱいの大きさのケーキを、トレイごと引っ張り出す。
大きさは五十センチ四方ほど。昨日、じっくりと時間をかけて焼いたものだ。
この世界では、ケーキと言えばドライフルーツやナッツを練り込んだフルーツケーキのようなものを指していて、このウエディングケーキも、それだ。ホイップクリームを塗るようなこともしない。
ただ、バターはたっぷりと使った。マイセルが心配するくらいに。
おかげでかなり高くついたが、味見をした限りでは、芳醇な香りがたまらない逸品となっている。一日寝かせたからか、しっとりと生地も落ち着いて、実にいい香りが漂ってくる。
「リトリィさん、マイセルさん。こちらを仕上げにふりかけますから、砕いておいてくださいな」
狐人族のご婦人、フィネスさんから、紙包みを渡される。中身はナッツ類だった。
「少し炒っておきましたから、香ばしくできているはずですよ。お願いしますね?」
マイセルが歓声を上げる。さっそくリトリィと一緒に、奥のテーブルに持って行った。
だが、俺は二人とは別のものを目にして、驚いた。
テーブルに置かれた紙包みの中に入っていた、それ。
さらさらの、白い粉末の山。
――粉砂糖!
この世界に来て初めて見たぞ!
「……これ、高かったんじゃないですか?」
俺の質問に、ペリシャさんがにっこりとする。
「あら、高いって、これがなにか、ご存じなのかしら?」
「なにかって、砂糖でしょ?」
フィネスさんが、目を見開く。ペリシャさんも一瞬息を呑んだようだったが、すぐに微笑んだ。
「よくご存じね。そう、お砂糖。一目見て分かるなら、お味もご存じなのかしら?」
「そりゃ当然で――」
言いかけて、気が付いた。
俺が知っているというだけで、フィネスさんが目を見開くくらいに驚いたのだ。街の一般住人が、そうそう知っている味ではないのだろう。
「……そう。うちの人も貴重なものだとは知っていたようですけれど、あなたにとっては、当たり前のお味なのですね」
ペリシャさんの言葉に、フィネスさんが俺を二度見する。
――うん、まあ、分からなくもない。昔は砂糖ってのはすごく高価で、特にヨーロッパでは、砂糖は「白い黄金」と呼ばれるほど富をもたらした時代もあったとか聞いたことがある。
それは、この世界でも同じらしい。なるほど、そんな貴重品の味を当たり前の味として知っている俺は何者だ、というわけか。
「では、そんな貴重品を、誰が、どうやって用意したか――察しはつきますね?」
……それはもちろん、ナリクァンさんが用意してくれたものに違いない。
味を知っているというだけで驚かれる――そんな貴重品を、こんなにも惜しげもなくいただけるなんて。本当に、リトリィは愛されているんだな。
「違いますよ? あなたに期待をしているんです、あのひとは」
「……は? 御冗談でしょう、リトリィのおまけですから、俺は」
ペリシャさんが冗談を言うなんて珍しい。笑い飛ばすと、ペリシャさんが呆れたようにため息をつき、そして小さく笑った。
「そうやって、ご自身の価値をずいぶんと軽んじることができるほど謙虚だからこそ、あのひとも今のうちに投資をしておこうと思われるのでしょうね」
「投資って……。俺は『リトリィを泣かせるな』って、さんざん釘を刺された男ですよ?」
あの、リトリィびいきのナリクァンさんだ。リトリィが執着する俺だから、俺に投資する。それなら分かる。俺がまともに稼げるようにならないと、彼女が不幸になるからだ。それ以外に考えられない。
「……いいですわ。あなたがそう考えるなら、今はそれで結構。リトリィさんを、大切になさいね?」
マイセルが、ナッツを砕き終わったと元気な声で報告してくる。
ペリシャさんは表情を切り替えると、二人を呼んだ。
ケーキへの、最後のデコレーション。
この白い粉末が、間違いなく、俺たちがいかに大きな力をバックにしているかを、列席した人々に示すものになるのだろう。
我が事ながら、空恐ろしいものを感じる。けれど、それだけ、リトリィが軽んじられる要素を減らすのだ、このケーキが。
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