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第三部 異世界建築士と思い出の家
第233話:君のために、俺は
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「リトリィィィィイイイイッッ!!」
俺が無我夢中で体を起こした、その時だった。
突然、耳をつんざく音が怒涛のように押し寄せてくる。
ガラガラと、金属の塊が互いに叩きつけられ軋み叫ぶ音。
少しの間その音が続いたあと、今度は別の音が襲い掛かってくる。
メリメリと何かがきしむ音、何かが折れるような音、割れるような音。
まるで土砂崩れでも起こったかのようなすさまじい振動。
揺れる床、壁。
一瞬遅れて、やや離れたところとおぼしき場所から、硬い重量物がぶつかり合う轟音が響き渡り、振動がびりびりと伝わってくる。
砦が全身でがなり立てるような音の奔流を幸いに、俺は駆け出す。
今なら牢が開いているはず!
リトリィに手を出そうとしているなら、奴も無防備なはずで――!
鳴動する床を蹴って部屋に飛び込んだ俺の目に映ったのは。
部屋を二分する、金属の格子の、その奥に。
リトリィの腰を掴みながら、細長いスリットのような窓を通して、険しい目で外を見やる、狼男。
天井からぶら下がる鎖に両手首を拘束されている、金色の毛並みの少女。
「む、ムラタさん……!? うそ、そんな……!?」
「リトリィ! ごめん! 俺が悪かった!!」
俺は抜き放ったナイフを手に牢に突入すると、狼男に向かって滅茶苦茶に振り回してみせる!
「リトリィの相手は俺だ! お前じゃない!!」
リトリィから飛び退った狼男からリトリィを隠すように、俺は彼女と、そして奴の間に立ちはだかる。
「フン、ずっとそこで、芋虫みたいにはいつくばっていたくせに、いまさら粋がって何を」
嘲笑する狼男に、俺は悟った。
あのときこっちを見たのは、やはり知っていたんだ、俺がいたことを。
知っていて、あれだけの話を俺に聞かせたんだ、奴は。
「ああ。お、俺は貧弱な人間だからな。せ、せめてカッコよく登場しなけりゃ――」
がちがちと、歯の根が合わない。
ぶるぶると、膝の震えが止まらない。
こいつの爪に引っかかれただけで、俺は大怪我をした。
まともにやり合ったら、瞬時に殺されるのは間違いない。
俺のナイフをさらりとかわした、あの狼男に。
ちらりと、リトリィの方を見る。
一糸まとわぬ――もともと毛皮を着ているようなものだが――リトリィと、目が合う。
天井からつるされた鎖につながれた手首周りは、血がにじんで赤く染まっている。
足首にも、鎖が巻き付けられていた。
痛々しい、彼女の姿。
根の合わない歯を、無理矢理、噛み締める。
ああ、全ては。
君の、ために。
――俺は、ここに来たんだ!
「――信じて待っててくれた俺の女に、申し訳ないからな!」
裏返った俺の声に、狼男は額に手を当てて笑ってみせた。
「なるほどな。陰でこそこそ何をしているかと思いきや、お前がオレを足止めし、その隙に別の連中が跳ね橋を降ろすと。上手いものだ、こんな貧弱なオスだからこそ囮に使い、そしてオレはその囮の時間稼ぎに、まんまとはまってしまった……」
「お前が勝手に長々としゃべってただけだろう!」
「オレは紳士だからな。お前には勝ち目がないこと、そしてそこのメスにはオレのすばらしさを、二人ともに納得してもらいたかっただけだ」
狼男は、その、天に向かってそそり立つ股間のモノを見せつけるようにしながら、リトリィを指さし、こともなげに言い放った。
「メスを孕ませるだけなら犯すだけで充分だが、一応はメスを納得させて産ませないと、仔を育てるのはメスだからな」
「紳士は『孕ませる』も『犯す』も、当たり前みたいに言わねえよ!」
「何を言う。どちらもオスとして当たり前のことだろう。オスはメスを犯す。メスは孕んで産み育てる。ごく自然なことだろう?」
なんだよこの野生児! だれが解き放ちやがったんだ! 誰か文明ってやつを教えてやれよ!
「さて、くだらない話はこれで終わりだ。背後の壁の向こうに、なにやらうるさい連中がいるようだからな。
――それは、オレのモノだ。オレの仔を産むメスだ。渡してもらうぞ」
一歩、奴が、前に出る。
ナイフをわずかに上に向ける。
また一歩。奴の歩みは、止まらない。
そして、気づいた。
額にある、大きな傷跡。
向かって左上から、右側の頬に至るまでの、大きな、傷。
よく見たら、さらに額右上から左下に、先の傷跡と重なって×の字になるような傷跡も見える。
『額に×の字の切り傷はないかィ!』
アムティの叫びが、耳によみがえってくる。
――ああ、こいつが!
こいつが、インテレークの兄貴の仇!
「お前が、ガルフだったのか」
狼男は、すこし、顔を上げた。
「……なぜ、そう思う?」
「額の傷跡、それが特徴だと聞いた」
「冒険野郎や傭兵をやってりゃ、傷の一つや二つ、あって当たり前だろう?」
「額――左上から右下、頬にかかるほど大きな傷跡を含む×の字……それほど、同じ傷跡をもつ奴がいるとは思えない」
狼男は、口元――顎を撫でながらつぶやく。
「お前の前でこの姿に戻ったのは、うかつだったな。今までうまくやってきたつもりだったが、オレもメスを前にして、浮かれ過ぎたみたいだ。
このメスが手に入るなら、お前など放っておくつもりだったが……」
顎を撫でるのをやめ、すうっと、目を細める。
「今ここで、殺さなければならなくなった」
何が起こったか、全く分からなかった。
傷みではなく、ただ、衝撃。
壁に叩きつけられていた、ということだけを理解する。
呼吸ができない。
息を吸う、という感覚を思い出せない。
俺がいた場所の、その手前で、奴が、俺を、無造作に、右の裏拳で払った。
それだけが、俺の、理解できたことだった。
奴との距離は、数メートルはあったはずなのに。
「あいつの血で汚しては、お前の、せっかくの毛並みの美しさが台無しだからな」
奴はリトリィの顎に手を伸ばして言うと、わずかにこちらに顔を、目を向けた。
無感動な、目を。
「かはっ――あ、ぐ……あ……!」
咳き込みながら、ようやく、息を吸う、という感覚がよみがえってくる。
今になって、殴られた右腕が、衝撃を受けた右あばらが、壁に叩きつけられた左半身が、傷みだす。
簡素とはいえ、ナリクァン夫人にもらった革の鎧――これがなかったら、
――死んで、いた?
小さく笑う。
いや、違う。
鎧なんてあっても無駄だ。
奴には、絶対に敵わない。
奴が、こちらに体を向ける。
奴が、俺の、死――?
不思議と、怖くなかった。
ああ、そうだ。
たとえ歯が立たなくとも
君のためなら、俺は――
「ムラタさん!!」
リトリィの悲鳴。
がちゃがちゃと、腕を上げ、こちらに、できる限り寄ろうとしている。
髪を振り乱し、手首を赤く染めて。
――ああ、だめだ。
リトリィ、君は、きれいなんだ。
こころねも、すがたも……なにもかも。
そんなまねをしては、きみの、そのうつくしさが――
「死んでも産みません!」
凛とした、リトリィの、声。
にじむ視界のその眼前に、ぴたりと止まったかぎづめがあった。
ぎゃりっ、という、尖ったもので硬いものを擦った時のような音がした――それを知覚した時には、もう、俺は、死んでいたことになる。
リトリィの叫びがなければ、今度こそ。
「離れてください! それ以上ムラタさんに何かあったら、あなたの仔なんて、何があっても絶対に産みません!」
ガルフは軽く後ろに跳ぶと、理解できないといった様子でかぶりを振った。
「なぜだ。オレは仔を産ませるために、同族を何年も探したから知っているんだ。オレとお前は、この世に残された希少な血筋だぞ。オレたちで仔を作らないと、オレたちの血は途絶えてしまかもしれないんだ」
「絶えるなら絶えてしまえばいいんです」
リトリィは、困惑とともに毛を逆立てているガルフの様子など、まるで臆さずに続けた。
「少なくともわたしは、このひとの仔を産みたいとは思っても、このひとが生きた証を遺したいとは思っても、わたしの血を繋ぎたいとは思っていません。もちろん、あなたの血も、です」
手を、足を、鎖で繋がれ、自由を奪われているリトリィが、しかし、胸を張って言い放つ。
その勢いに押されてか、ガルフは耳を若干しおれさせるようにして、両手を広げて訴えた。
「何を言っている。お前自身が言っていただろう、仔を産みたいと。あの時の橋の上での話を忘れたか? 安心しろ、同族のオレなら絶対にお前を孕ませてやれる」
「あなたは、思い違いをしています。わたしは――いえ、女の子は、ただ仔を産めればいいわけじゃないんです」
「なんだと、じゃあなんだ」
ガルフが、身を乗り出した、その時だった。
背後の壁から、派手な衝撃音が響いてきた。
俺もガルフも思わずそちらを見る。
さらに二度三度、衝撃音が響き、そして、壁が弾け飛ぶ!
「ムラタァ! 生きてるかい!?」
「やれやれ、想定外の事故を生き延びたと思ったら、今度はおっかない獣人ですか? 僕は『矢払い』ですよ? 獣人の爪から子猫ちゃんを守るのは、専門外なのでよく分かりません。追加料金が欲しいところです」
どこで手に入れたか、金属の両手持ちハンマーを手にしたアムティが、埃にまみれて見えているのか分からない眼鏡の男――ヴェフタールとともに、瓦礫と埃の奥から飛び出してくる!
「チッ、次から次へと。こんなことなら、同意は後回しにして、さっさとさらっておけばよかったな」
無造作に俺を払いのけてリトリィに迫ったガルフに、ヴェフタールがクロスボウを構える!
「オレはこのメスをぶん捕りに来ただけだ! 邪魔するんじゃねえ!」
「奇遇ですね。そのお嬢さんをぶん捕りに来たんですよ、こちらもね」
俺が無我夢中で体を起こした、その時だった。
突然、耳をつんざく音が怒涛のように押し寄せてくる。
ガラガラと、金属の塊が互いに叩きつけられ軋み叫ぶ音。
少しの間その音が続いたあと、今度は別の音が襲い掛かってくる。
メリメリと何かがきしむ音、何かが折れるような音、割れるような音。
まるで土砂崩れでも起こったかのようなすさまじい振動。
揺れる床、壁。
一瞬遅れて、やや離れたところとおぼしき場所から、硬い重量物がぶつかり合う轟音が響き渡り、振動がびりびりと伝わってくる。
砦が全身でがなり立てるような音の奔流を幸いに、俺は駆け出す。
今なら牢が開いているはず!
リトリィに手を出そうとしているなら、奴も無防備なはずで――!
鳴動する床を蹴って部屋に飛び込んだ俺の目に映ったのは。
部屋を二分する、金属の格子の、その奥に。
リトリィの腰を掴みながら、細長いスリットのような窓を通して、険しい目で外を見やる、狼男。
天井からぶら下がる鎖に両手首を拘束されている、金色の毛並みの少女。
「む、ムラタさん……!? うそ、そんな……!?」
「リトリィ! ごめん! 俺が悪かった!!」
俺は抜き放ったナイフを手に牢に突入すると、狼男に向かって滅茶苦茶に振り回してみせる!
「リトリィの相手は俺だ! お前じゃない!!」
リトリィから飛び退った狼男からリトリィを隠すように、俺は彼女と、そして奴の間に立ちはだかる。
「フン、ずっとそこで、芋虫みたいにはいつくばっていたくせに、いまさら粋がって何を」
嘲笑する狼男に、俺は悟った。
あのときこっちを見たのは、やはり知っていたんだ、俺がいたことを。
知っていて、あれだけの話を俺に聞かせたんだ、奴は。
「ああ。お、俺は貧弱な人間だからな。せ、せめてカッコよく登場しなけりゃ――」
がちがちと、歯の根が合わない。
ぶるぶると、膝の震えが止まらない。
こいつの爪に引っかかれただけで、俺は大怪我をした。
まともにやり合ったら、瞬時に殺されるのは間違いない。
俺のナイフをさらりとかわした、あの狼男に。
ちらりと、リトリィの方を見る。
一糸まとわぬ――もともと毛皮を着ているようなものだが――リトリィと、目が合う。
天井からつるされた鎖につながれた手首周りは、血がにじんで赤く染まっている。
足首にも、鎖が巻き付けられていた。
痛々しい、彼女の姿。
根の合わない歯を、無理矢理、噛み締める。
ああ、全ては。
君の、ために。
――俺は、ここに来たんだ!
「――信じて待っててくれた俺の女に、申し訳ないからな!」
裏返った俺の声に、狼男は額に手を当てて笑ってみせた。
「なるほどな。陰でこそこそ何をしているかと思いきや、お前がオレを足止めし、その隙に別の連中が跳ね橋を降ろすと。上手いものだ、こんな貧弱なオスだからこそ囮に使い、そしてオレはその囮の時間稼ぎに、まんまとはまってしまった……」
「お前が勝手に長々としゃべってただけだろう!」
「オレは紳士だからな。お前には勝ち目がないこと、そしてそこのメスにはオレのすばらしさを、二人ともに納得してもらいたかっただけだ」
狼男は、その、天に向かってそそり立つ股間のモノを見せつけるようにしながら、リトリィを指さし、こともなげに言い放った。
「メスを孕ませるだけなら犯すだけで充分だが、一応はメスを納得させて産ませないと、仔を育てるのはメスだからな」
「紳士は『孕ませる』も『犯す』も、当たり前みたいに言わねえよ!」
「何を言う。どちらもオスとして当たり前のことだろう。オスはメスを犯す。メスは孕んで産み育てる。ごく自然なことだろう?」
なんだよこの野生児! だれが解き放ちやがったんだ! 誰か文明ってやつを教えてやれよ!
「さて、くだらない話はこれで終わりだ。背後の壁の向こうに、なにやらうるさい連中がいるようだからな。
――それは、オレのモノだ。オレの仔を産むメスだ。渡してもらうぞ」
一歩、奴が、前に出る。
ナイフをわずかに上に向ける。
また一歩。奴の歩みは、止まらない。
そして、気づいた。
額にある、大きな傷跡。
向かって左上から、右側の頬に至るまでの、大きな、傷。
よく見たら、さらに額右上から左下に、先の傷跡と重なって×の字になるような傷跡も見える。
『額に×の字の切り傷はないかィ!』
アムティの叫びが、耳によみがえってくる。
――ああ、こいつが!
こいつが、インテレークの兄貴の仇!
「お前が、ガルフだったのか」
狼男は、すこし、顔を上げた。
「……なぜ、そう思う?」
「額の傷跡、それが特徴だと聞いた」
「冒険野郎や傭兵をやってりゃ、傷の一つや二つ、あって当たり前だろう?」
「額――左上から右下、頬にかかるほど大きな傷跡を含む×の字……それほど、同じ傷跡をもつ奴がいるとは思えない」
狼男は、口元――顎を撫でながらつぶやく。
「お前の前でこの姿に戻ったのは、うかつだったな。今までうまくやってきたつもりだったが、オレもメスを前にして、浮かれ過ぎたみたいだ。
このメスが手に入るなら、お前など放っておくつもりだったが……」
顎を撫でるのをやめ、すうっと、目を細める。
「今ここで、殺さなければならなくなった」
何が起こったか、全く分からなかった。
傷みではなく、ただ、衝撃。
壁に叩きつけられていた、ということだけを理解する。
呼吸ができない。
息を吸う、という感覚を思い出せない。
俺がいた場所の、その手前で、奴が、俺を、無造作に、右の裏拳で払った。
それだけが、俺の、理解できたことだった。
奴との距離は、数メートルはあったはずなのに。
「あいつの血で汚しては、お前の、せっかくの毛並みの美しさが台無しだからな」
奴はリトリィの顎に手を伸ばして言うと、わずかにこちらに顔を、目を向けた。
無感動な、目を。
「かはっ――あ、ぐ……あ……!」
咳き込みながら、ようやく、息を吸う、という感覚がよみがえってくる。
今になって、殴られた右腕が、衝撃を受けた右あばらが、壁に叩きつけられた左半身が、傷みだす。
簡素とはいえ、ナリクァン夫人にもらった革の鎧――これがなかったら、
――死んで、いた?
小さく笑う。
いや、違う。
鎧なんてあっても無駄だ。
奴には、絶対に敵わない。
奴が、こちらに体を向ける。
奴が、俺の、死――?
不思議と、怖くなかった。
ああ、そうだ。
たとえ歯が立たなくとも
君のためなら、俺は――
「ムラタさん!!」
リトリィの悲鳴。
がちゃがちゃと、腕を上げ、こちらに、できる限り寄ろうとしている。
髪を振り乱し、手首を赤く染めて。
――ああ、だめだ。
リトリィ、君は、きれいなんだ。
こころねも、すがたも……なにもかも。
そんなまねをしては、きみの、そのうつくしさが――
「死んでも産みません!」
凛とした、リトリィの、声。
にじむ視界のその眼前に、ぴたりと止まったかぎづめがあった。
ぎゃりっ、という、尖ったもので硬いものを擦った時のような音がした――それを知覚した時には、もう、俺は、死んでいたことになる。
リトリィの叫びがなければ、今度こそ。
「離れてください! それ以上ムラタさんに何かあったら、あなたの仔なんて、何があっても絶対に産みません!」
ガルフは軽く後ろに跳ぶと、理解できないといった様子でかぶりを振った。
「なぜだ。オレは仔を産ませるために、同族を何年も探したから知っているんだ。オレとお前は、この世に残された希少な血筋だぞ。オレたちで仔を作らないと、オレたちの血は途絶えてしまかもしれないんだ」
「絶えるなら絶えてしまえばいいんです」
リトリィは、困惑とともに毛を逆立てているガルフの様子など、まるで臆さずに続けた。
「少なくともわたしは、このひとの仔を産みたいとは思っても、このひとが生きた証を遺したいとは思っても、わたしの血を繋ぎたいとは思っていません。もちろん、あなたの血も、です」
手を、足を、鎖で繋がれ、自由を奪われているリトリィが、しかし、胸を張って言い放つ。
その勢いに押されてか、ガルフは耳を若干しおれさせるようにして、両手を広げて訴えた。
「何を言っている。お前自身が言っていただろう、仔を産みたいと。あの時の橋の上での話を忘れたか? 安心しろ、同族のオレなら絶対にお前を孕ませてやれる」
「あなたは、思い違いをしています。わたしは――いえ、女の子は、ただ仔を産めればいいわけじゃないんです」
「なんだと、じゃあなんだ」
ガルフが、身を乗り出した、その時だった。
背後の壁から、派手な衝撃音が響いてきた。
俺もガルフも思わずそちらを見る。
さらに二度三度、衝撃音が響き、そして、壁が弾け飛ぶ!
「ムラタァ! 生きてるかい!?」
「やれやれ、想定外の事故を生き延びたと思ったら、今度はおっかない獣人ですか? 僕は『矢払い』ですよ? 獣人の爪から子猫ちゃんを守るのは、専門外なのでよく分かりません。追加料金が欲しいところです」
どこで手に入れたか、金属の両手持ちハンマーを手にしたアムティが、埃にまみれて見えているのか分からない眼鏡の男――ヴェフタールとともに、瓦礫と埃の奥から飛び出してくる!
「チッ、次から次へと。こんなことなら、同意は後回しにして、さっさとさらっておけばよかったな」
無造作に俺を払いのけてリトリィに迫ったガルフに、ヴェフタールがクロスボウを構える!
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「奇遇ですね。そのお嬢さんをぶん捕りに来たんですよ、こちらもね」
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