131 / 438
第二部 異世界建築士と大工の娘
第121話:柱
しおりを挟む
製材屋の親方は、じつにまったく、胡散臭げな眼で俺を見た。
「……そりゃ、たしかに板はいくらでも作れるって言ったさ。だが今度は、五分(約一・五センチメートル)の厚みで幅六寸(約十八センチメートル)、長さ三十尺(約九メートル)の板をさしあたって百枚だと? 気は確かか?」
えらい言われようだ。
半目で、阿呆を相手にしているかのような製材屋の親方を前に、隣ではマイセルが、居心地悪そうにもじもじしている。ごめん、マイセル。
「じゃあ、この前から準備してある半端な板の山はどうすんだ?」
「もちろん、そっちも使いますよ」
「なあ、あんた。俺らが切っておいていうのもなんだが、こんな半端な板切れや棒切れ、どうやったら家になるってんだ?」
隣でマイセルがうんうんうなずいている。マイセル、お前もか。
「床材に使うとかならまだ分かる。だが、これだけで家を建てるって、正気か?」
「正気です。ひとまず、さっき言った六十枚は急いでほしい。その六十枚がないと、壁が作れません」
こういうときは、こっちが自信たっぷりにしていればいい。こちらがブレなきゃ、顧客も安心するというものだ。まあ、客はこっちだけどな。
「……こっちは、払うもんだけ払ってくれりゃ、いくらでも切るだけだけどよ。請求はナリクァン夫人でいいんだな?」
「ええ。ただ、材料費、手間賃、なるべく細かく分かる明細を――」
「ああ、前と同じようにすればいいんだろ? 分かってる」
「いつまでに出来そうです?」
「材はあるからな。すぐにでもかかってやるよ。なんたってナリクァン夫人の依頼なんだからな。
ただ、全てを三十尺に揃えるのは厳しい。おそらく、二十尺無いもののほうが多いだろうな」
おっと、いきなり問題発生。六メートルも無い材が多いってことか。
「それは、どうして?」
「そりゃ、なんたって森から運ぶのが大変だからな」
どうも、ある材というのは木炭用の間伐材のことらしい。運びやすいように、基本は木炭用、柱にも流用できる程度の長さで切ってしまうそうだ。
だから、三十尺もないだろう、という話だった。
本当は、製材屋の方できっちり寸法合わせをやってもらう「プレカット」にしてほしかったんだが。しかし、そもそもその長さがない、と言うならもう、仕方がない。
現場で、組み合わせて長さを確保し、余分を切り落として調整するしかないな。
そうなると、やっぱり慣れたノコギリがほしい。リトリィが早く来てくれるとすごく嬉しいんだが……。
「長さが足りないぶんは、こっちで短い材を切って継ぎ足します。その分は負けてくれますよね?」
「ちゃっかりしてやがる。……いいぜ、三十尺に満たねえ材の加工賃については、多少は割り引いてやるよ」
親方はばりばりと頭を掻きながら、しかし承諾してくれた。よし! すこしでも安くできるのはいいことだ。
「助かります。ただ、六十本分にできるように見越した上で、加工で目減りすることも踏まえて、さらに余裕が欲しいですね」
「……まあ、それも仕方ねえな。半端分はこっちで面倒見てやるよ」
よし、交渉成立だ!
「あ、あの……」
製材所の門を出るか出ないかといったところで、マイセルが口を開いた。
「製材屋さんで見た材木ですけど、本当に、あれで家を建てるんですか?」
「そうだよ?」
うなずいた俺に対して、マイセルの目が、妙に不安げに揺れている。
「あ、あの……柱はどこですか?」
「あそこにあったものは、全部、柱だよ? もちろん、床材に使い回す分もあるけれど」
「あ、あんな細い材を柱にして、家を建てるんですか!?」
「そうだけど?」
俺の返事に、マイセルが目を見開いた。
「無茶ですよ! 倒れちゃいます!」
「大丈夫だよ、意外に頑丈にできるから」
「だ、だって、柱って言ったって、厚みが一寸しかないんでしょう!?」
「まあ、そうだね?」
マイセルは、戸惑いを隠せないようだ。彼女の経験上、おそらくツーバイ材のように薄い材を柱に据えるなど、なかったのだろう。
一寸、つまり約三センチメートルの厚みしかない柱は、家という構造物に相応しくないと思っているのだ。
まあ、俺も在来工法でこの柱しか与えられなかったら、ちょっと考えなければならないだろう。例えば、集成材よろしく何本も束にして、ガッチリとズレないように固定金物を駆使するとか。
しかし、俺が考えているのはツーバイ材を使った木造枠組壁構法。
柱は、家を支えるものではなく、壁という面を作り出すための部品。そして、柱という点ではなく、壁という面によって家を支えるという考え方だ。
マイセルは立ち止まると、しばらく右手の指先で口元を隠すようにしながら、考え込む姿を見せる。
少々眉値を寄せてうつむき加減に考えている様は、なんだか探偵っぽく感じられる。だが、しっかりしているようでどこか幼さを感じさせる容貌がアンバランスで、なんだか可愛らしい。
「あ……わかりました! 何本も何本も束ねて、一本にして使うんですね?」
「いや? 基本的にはそのまま使うよ?」
「うそ!?」
マイセルにとっては会心のアイデアだったらしく、一蹴されて目を真ん丸に見開いたまま固まる。こちらの予想通りの考えだったが。
「まあ、窓枠になる所とか、一部では二本合わせて使うけれど」
「組み合わせても二本だけ!?」
さらに驚いたようだ。
「あ、あの……。失礼ですけど、たった一寸の厚みしかない柱では、大風とか、大雪とかに耐えられないと思います!」
やはりそこか。材の厚みというか、薄さが気になるようだ。まあ、その気持ちは大変よくわかる。
それにしても、こうやって真剣に考えてくれるというのは嬉しい。
友達の合コンに付き合ってみたことは何度かあるが、建築士としての収入に興味を持つ女性はいても――そして、聞いた途端に興味を無くされる事もセットで含む――、現場仕事に興味を持つ女性など、一人たりともいなかった。
いや、いるにはいたが、義理で質問しただけ、すぐに話題から消える、というパターンばかりだった。
だから、女性というのは基本的にモノづくりの現場に興味がないのだとばかり思っていた。それだけに、将来は建築関係の仕事をしたいというマイセルの存在は、驚きでもあったし、同時に素晴らしいとも思った。
「マイセルちゃんは、いつから建築の仕事に興味をもつようになったの?」
「……え?」
あ、しまった。突然過ぎたか。
「いや、女の子がここまで柱の太さのことを気にするなんて、珍しいって思ったからなんだけど」
我ながら情けない言い訳だ、そう思いつつ言葉を返す。
「……ムラタさんも……」
「え?」
さっきまで、目を白黒させながらもいきいきしていたマイセルだったが、急に元気をなくし、うつむき加減になってしまった。
「……ムラタさんも、やっぱり、女の子が建築に興味を持ったら、おかしいって、思うんですね?」
その声がひどく悲しそうで、俺は、返事につまる。
「お父さんにも、遊びじゃないって、よく怒られます。大工道具は大工の魂だって、触るだけでも。女は家のことだけをしっかりできればいいんだって」
……なるほど、昔の日本みたいだな。良妻賢母であることだけを望まれていた、昭和の遺物みたいな考え方。
ちょっと話を聞いてみるか。
広場まで戻ってきた俺たちは、屋台で食べ物を買うことにする。
屋台の買い物は、大きな銅貨を出せばだいたい事足りるのは分かったから、揚げパンみたいな菓子を二人分買うと、通りのベンチに座って食べることにした。
「あ、ありがとうございます」
「それで、マイセルちゃんは、どうして大工仕事に興味もつようになったんだ?」
俺の方から菓子をかじって見せながら、話を振る。
「ちなみに、俺は、マイセルが家のことに興味を持ってくれる女の子で、嬉しい」
「……嬉しい、ですか?」
上目づかいでこちらを見るマイセル。どうも、こちらの出方をうかがっているようだ。
「そりゃね、目の前の人が、自分が関わっている仕事に興味を持ってくれている――それだけでも嬉しいものだ。まして、それが可愛い女の子なら、なおさらだ」
「か――!?」
言いかけて、食べかけていた揚げパンにむせるマイセル。しまった、突拍子もないこと言って驚かせてしまった!
ああもう、やっぱり俺は、こういう話をするには経験が足りなさ過ぎる! 三洋や京瀬らのナンパテクニックが羨ましい。いや、口説くとかじゃなくて、女の子と自然に話せる技術が欲しい!
「か、可愛くなんかないです、私、そばかすもあるし、お化粧も下手だし……」
あ、なんか落ち込ませてる……やばい!
「そんなに、自分を否定することないだろ? 俺は君のことを、可愛らしい、素敵な女性だと思っている」
リトリィに出逢うまで、自分を彼女いない歴=年齢の万年童貞、と卑下しまくっていた俺が、自分を否定するな、なんて言っても、なんの説得力も無いが。
まあ、嘘も方便。ハッタリも使いようだ。
「――少なくとも、会話をしている相手の話題について、真剣に、一生懸命考えてくれる、素敵な女性だと思ってるよ」
笑顔は、少なくとも悪印象を回避する第一手。木村事務所時代に鍛えた営業スマイルを、必死に振りまく。
考えてみれば、彼女は、これから世話になる大工さんの娘さんだ。悪印象を持たれたら、仕事にも差し支える。何を言えば励ましになり、何を言ったら地雷を踏むのか分からないなら、とにかく笑顔! 会話のよりどころとなる柱を立てないと。
「む、ムラタさんて、その……お、女の子の扱いに慣れてらっしゃるんですねっ!」
ぐふっ、マイセルの言葉が刺々しい! また何か地雷を踏んだみたいだ! ああもう、今すぐ三洋・京瀬らのコンビを召喚したい!
「そんなことないよ、俺は――」
俺はどぎまぎしながら、言葉を続け――ようとして、できなかった。
「それならですね、お聞きください、ムラタさん」
「……そりゃ、たしかに板はいくらでも作れるって言ったさ。だが今度は、五分(約一・五センチメートル)の厚みで幅六寸(約十八センチメートル)、長さ三十尺(約九メートル)の板をさしあたって百枚だと? 気は確かか?」
えらい言われようだ。
半目で、阿呆を相手にしているかのような製材屋の親方を前に、隣ではマイセルが、居心地悪そうにもじもじしている。ごめん、マイセル。
「じゃあ、この前から準備してある半端な板の山はどうすんだ?」
「もちろん、そっちも使いますよ」
「なあ、あんた。俺らが切っておいていうのもなんだが、こんな半端な板切れや棒切れ、どうやったら家になるってんだ?」
隣でマイセルがうんうんうなずいている。マイセル、お前もか。
「床材に使うとかならまだ分かる。だが、これだけで家を建てるって、正気か?」
「正気です。ひとまず、さっき言った六十枚は急いでほしい。その六十枚がないと、壁が作れません」
こういうときは、こっちが自信たっぷりにしていればいい。こちらがブレなきゃ、顧客も安心するというものだ。まあ、客はこっちだけどな。
「……こっちは、払うもんだけ払ってくれりゃ、いくらでも切るだけだけどよ。請求はナリクァン夫人でいいんだな?」
「ええ。ただ、材料費、手間賃、なるべく細かく分かる明細を――」
「ああ、前と同じようにすればいいんだろ? 分かってる」
「いつまでに出来そうです?」
「材はあるからな。すぐにでもかかってやるよ。なんたってナリクァン夫人の依頼なんだからな。
ただ、全てを三十尺に揃えるのは厳しい。おそらく、二十尺無いもののほうが多いだろうな」
おっと、いきなり問題発生。六メートルも無い材が多いってことか。
「それは、どうして?」
「そりゃ、なんたって森から運ぶのが大変だからな」
どうも、ある材というのは木炭用の間伐材のことらしい。運びやすいように、基本は木炭用、柱にも流用できる程度の長さで切ってしまうそうだ。
だから、三十尺もないだろう、という話だった。
本当は、製材屋の方できっちり寸法合わせをやってもらう「プレカット」にしてほしかったんだが。しかし、そもそもその長さがない、と言うならもう、仕方がない。
現場で、組み合わせて長さを確保し、余分を切り落として調整するしかないな。
そうなると、やっぱり慣れたノコギリがほしい。リトリィが早く来てくれるとすごく嬉しいんだが……。
「長さが足りないぶんは、こっちで短い材を切って継ぎ足します。その分は負けてくれますよね?」
「ちゃっかりしてやがる。……いいぜ、三十尺に満たねえ材の加工賃については、多少は割り引いてやるよ」
親方はばりばりと頭を掻きながら、しかし承諾してくれた。よし! すこしでも安くできるのはいいことだ。
「助かります。ただ、六十本分にできるように見越した上で、加工で目減りすることも踏まえて、さらに余裕が欲しいですね」
「……まあ、それも仕方ねえな。半端分はこっちで面倒見てやるよ」
よし、交渉成立だ!
「あ、あの……」
製材所の門を出るか出ないかといったところで、マイセルが口を開いた。
「製材屋さんで見た材木ですけど、本当に、あれで家を建てるんですか?」
「そうだよ?」
うなずいた俺に対して、マイセルの目が、妙に不安げに揺れている。
「あ、あの……柱はどこですか?」
「あそこにあったものは、全部、柱だよ? もちろん、床材に使い回す分もあるけれど」
「あ、あんな細い材を柱にして、家を建てるんですか!?」
「そうだけど?」
俺の返事に、マイセルが目を見開いた。
「無茶ですよ! 倒れちゃいます!」
「大丈夫だよ、意外に頑丈にできるから」
「だ、だって、柱って言ったって、厚みが一寸しかないんでしょう!?」
「まあ、そうだね?」
マイセルは、戸惑いを隠せないようだ。彼女の経験上、おそらくツーバイ材のように薄い材を柱に据えるなど、なかったのだろう。
一寸、つまり約三センチメートルの厚みしかない柱は、家という構造物に相応しくないと思っているのだ。
まあ、俺も在来工法でこの柱しか与えられなかったら、ちょっと考えなければならないだろう。例えば、集成材よろしく何本も束にして、ガッチリとズレないように固定金物を駆使するとか。
しかし、俺が考えているのはツーバイ材を使った木造枠組壁構法。
柱は、家を支えるものではなく、壁という面を作り出すための部品。そして、柱という点ではなく、壁という面によって家を支えるという考え方だ。
マイセルは立ち止まると、しばらく右手の指先で口元を隠すようにしながら、考え込む姿を見せる。
少々眉値を寄せてうつむき加減に考えている様は、なんだか探偵っぽく感じられる。だが、しっかりしているようでどこか幼さを感じさせる容貌がアンバランスで、なんだか可愛らしい。
「あ……わかりました! 何本も何本も束ねて、一本にして使うんですね?」
「いや? 基本的にはそのまま使うよ?」
「うそ!?」
マイセルにとっては会心のアイデアだったらしく、一蹴されて目を真ん丸に見開いたまま固まる。こちらの予想通りの考えだったが。
「まあ、窓枠になる所とか、一部では二本合わせて使うけれど」
「組み合わせても二本だけ!?」
さらに驚いたようだ。
「あ、あの……。失礼ですけど、たった一寸の厚みしかない柱では、大風とか、大雪とかに耐えられないと思います!」
やはりそこか。材の厚みというか、薄さが気になるようだ。まあ、その気持ちは大変よくわかる。
それにしても、こうやって真剣に考えてくれるというのは嬉しい。
友達の合コンに付き合ってみたことは何度かあるが、建築士としての収入に興味を持つ女性はいても――そして、聞いた途端に興味を無くされる事もセットで含む――、現場仕事に興味を持つ女性など、一人たりともいなかった。
いや、いるにはいたが、義理で質問しただけ、すぐに話題から消える、というパターンばかりだった。
だから、女性というのは基本的にモノづくりの現場に興味がないのだとばかり思っていた。それだけに、将来は建築関係の仕事をしたいというマイセルの存在は、驚きでもあったし、同時に素晴らしいとも思った。
「マイセルちゃんは、いつから建築の仕事に興味をもつようになったの?」
「……え?」
あ、しまった。突然過ぎたか。
「いや、女の子がここまで柱の太さのことを気にするなんて、珍しいって思ったからなんだけど」
我ながら情けない言い訳だ、そう思いつつ言葉を返す。
「……ムラタさんも……」
「え?」
さっきまで、目を白黒させながらもいきいきしていたマイセルだったが、急に元気をなくし、うつむき加減になってしまった。
「……ムラタさんも、やっぱり、女の子が建築に興味を持ったら、おかしいって、思うんですね?」
その声がひどく悲しそうで、俺は、返事につまる。
「お父さんにも、遊びじゃないって、よく怒られます。大工道具は大工の魂だって、触るだけでも。女は家のことだけをしっかりできればいいんだって」
……なるほど、昔の日本みたいだな。良妻賢母であることだけを望まれていた、昭和の遺物みたいな考え方。
ちょっと話を聞いてみるか。
広場まで戻ってきた俺たちは、屋台で食べ物を買うことにする。
屋台の買い物は、大きな銅貨を出せばだいたい事足りるのは分かったから、揚げパンみたいな菓子を二人分買うと、通りのベンチに座って食べることにした。
「あ、ありがとうございます」
「それで、マイセルちゃんは、どうして大工仕事に興味もつようになったんだ?」
俺の方から菓子をかじって見せながら、話を振る。
「ちなみに、俺は、マイセルが家のことに興味を持ってくれる女の子で、嬉しい」
「……嬉しい、ですか?」
上目づかいでこちらを見るマイセル。どうも、こちらの出方をうかがっているようだ。
「そりゃね、目の前の人が、自分が関わっている仕事に興味を持ってくれている――それだけでも嬉しいものだ。まして、それが可愛い女の子なら、なおさらだ」
「か――!?」
言いかけて、食べかけていた揚げパンにむせるマイセル。しまった、突拍子もないこと言って驚かせてしまった!
ああもう、やっぱり俺は、こういう話をするには経験が足りなさ過ぎる! 三洋や京瀬らのナンパテクニックが羨ましい。いや、口説くとかじゃなくて、女の子と自然に話せる技術が欲しい!
「か、可愛くなんかないです、私、そばかすもあるし、お化粧も下手だし……」
あ、なんか落ち込ませてる……やばい!
「そんなに、自分を否定することないだろ? 俺は君のことを、可愛らしい、素敵な女性だと思っている」
リトリィに出逢うまで、自分を彼女いない歴=年齢の万年童貞、と卑下しまくっていた俺が、自分を否定するな、なんて言っても、なんの説得力も無いが。
まあ、嘘も方便。ハッタリも使いようだ。
「――少なくとも、会話をしている相手の話題について、真剣に、一生懸命考えてくれる、素敵な女性だと思ってるよ」
笑顔は、少なくとも悪印象を回避する第一手。木村事務所時代に鍛えた営業スマイルを、必死に振りまく。
考えてみれば、彼女は、これから世話になる大工さんの娘さんだ。悪印象を持たれたら、仕事にも差し支える。何を言えば励ましになり、何を言ったら地雷を踏むのか分からないなら、とにかく笑顔! 会話のよりどころとなる柱を立てないと。
「む、ムラタさんて、その……お、女の子の扱いに慣れてらっしゃるんですねっ!」
ぐふっ、マイセルの言葉が刺々しい! また何か地雷を踏んだみたいだ! ああもう、今すぐ三洋・京瀬らのコンビを召喚したい!
「そんなことないよ、俺は――」
俺はどぎまぎしながら、言葉を続け――ようとして、できなかった。
「それならですね、お聞きください、ムラタさん」
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる